〔幕間〕魔王様の弟君は、今日も健気に始末書を書いています。
※こちらはディール視点となっております。ゆるい感じでお楽しみください。
▲▽▲これより本編▲▽▲
泣きたい。
なぜギュル兄様はいつもいつも魔法が暴発してしまうのだろう?
そしてなぜ、それをいつも下っ端の下っ端が真似をするように大騒ぎにしてしまうのだろう?
悲しい。
なにゆえにギュル兄様はいつもいつも自分の不始末を自分で尻ぬぐいしようとするのだろう?
ゆえに歯がゆさから、下っ端が名乗り出て、失敗の尻ぬぐいをすることになる。
それはいい。
地下水の異変はまだ変わらない。ゆえに、ギュル兄様が頑張って実験をしてくれるのはうれしい以外になにもない。
だが、だ。
始末書を書くのは毎回ボクの仕事となっている。
「なぁ、カリン。なぜいつも、ボクが始末書を書かなければならないのだろうか?」
侍女長のカリンには、以前告白して自爆した過去がある。だが、お互いそのことを話にすることはない。
代わりになぜかいつも、カリンに見守られて始末書を書く羽目になっているのだ。
つらい。
「仕方がないではありませんか。すべての事情を知っていらっしゃる上に、弁が立つのはディール様だけなのですから」
「だが解せんのだ。わかってくれないのか?」
「わたくしどもの間で誰かが失敗しましたら、やはり侍女長のわたくしが始末書を書きますでしょう? 仕方がないではありませんか」
……解せない。
なぜなんだ?
魔王の弟であるのならば、もっとこう、若くて美しい侍女たちをはべらせたり、そういうわちゃわちゃした特権があってもよさそうなものなのだが。
「誰であろうと、生きてゆくのは楽ではありませんよ。元夫のキースも、なかなか離婚届を書いてくれませんし。まったく……」
しかもカリンはバツイチ候補なのだ。風の噂ではバツ三らしいが、いやはや。真実は藪の中。
つまるところ、藪を突かぬように気をつけてはいるのだ。
「本当に解せない世の中ですわ。わたくし、どうしてキースなんかと結婚したのかしら?」
……ボクに対してボヤかないで欲しい。
「あんな男。単なる脳筋だし、家庭のことをなにひとつ手伝ってくれないし。この前だって――」
「待ってくれ、カリン。ボクはきみの友だちではないだろう?」
あら? と声をひそめたカリンは、わすれてた、とばかりに笑い転げる。
「前に一度告白されていましたね。わたくし、すっかりわすれてしまっておりましたわ」
そこはおぼえておいて欲しいところなのだが。
「それにしても、今回のスライムは巨大でしたわね。わたくしもう、気味がわるぅございましたわ」
うむ。巨大スライムの話はしないで欲しかったな。
と、いうよりも。カリンはボクの憧れの女性ではあるものの、ボクにとっては単なる地雷元に過ぎない、ということか。つらい。
そんなわけで今日も、ない知恵を振り絞って始末書を書いているのである。
つづくのだろうか?




