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十五話 どうよこれ、元がスライムなんだぜ?

 今日はじめて魔王城に来たばかりなのに、いきなり衛兵さんたちにあんみつもどきを振る舞うことになってしまって、うれしい反面、忙しいのなんのって。


 手順はばあやさんとゾーイがおぼえていてくれたから、あたしは味付けと盛り付けに専念できた。


 ほかにも、調理がかりのおじさんや、実験室のお姉さんたちまで手伝ってもらって不思議なお団子をこねこねしている。


 みなさん、最初こそスライムだと聞くと、さわるのも食べるのも抵抗したけれど、その都度ゾーイが適切な言動で彼らを安心させてくれたから、素っ気ない調理室か一気に華やかに変化した。


 まったく、ゾーイってば魔王城に昔から居たような風格なんだもん。笑ってしまう。


 それに、お団子をこねこねしてくれているお姉さんたちがこれまたとてもお美しいときているため、衛兵さんたちは鼻の下を伸ばしまくりだよ。


 やっぱり美しい人の料理って特別に感じるものなのかねぇ?


 さて、ディール様はと言うと。侍女長さんと一緒に始末書を書きに足早に去ってしまっていた。


 部下の一人が失敗しても、きちんと責任を取らなくちゃいけないなんて、あたしからすると不思議な気分だな。


 食べ終わると、衛兵さんたちは率先して器を洗ってくれた。


 おいしいものを食べさせてくれたお礼だと言ってくれた。


 最後の後片付けが終わる頃になったら、ばあやさんがこそこそとあたしの横に並んできた。


「あれ? どうかしましたか?」

「いえね。先ほどはどうもあいすみませんでしたね」

「はいっ?」


 なぜあやまられたのか、理由もわからないままに首をかしげたけど、思いあたることが見あたらない。


「いえね、ニホン文化に親しくないとか言いましたけども、わたくしの今の地位を横取りされるんじゃないかと勝手に気をもんで意地悪を言ったんです。本当はあずきだって寒天だってあるのですよ」


 おや。今それを告白されても、本当に困るな。


 けど、それなら誤解を解いたほうがいいに決まってる。


「あたし、ばあやさんの地位を横取りしようなんて思ったことはありません。これから先も、絶対です。だから、気にしないでください」

「本当かい? だってノゾミ様でござんしょう? 奥様にお菓子を作りつづけてくださっていたのは」

「はい。……あの。あたしの過去とか、知っていますよね?」


 それはもちろん、ゾーイのお爺さんのことだ。


「ええ。存じております。ですからよけいに心配したのです。奥様は地下水が病のもとと知ったうえで飲みつづけた。ですからあんなことになったのでございます。もちろん、ゾーイ様のお爺様の件も知ったうえでの意地悪でしたの」


 それでも、ゆるしてくだしいます? と、あたしを見上げるばあやさんは、本当に純粋な瞳できらきらしている。


「本当は、水が原因じゃないかって、あたしも思ってたんです。でも、あたしが変な魔法でもかけたんじゃないかって疑われて。そっか。やっぱり、水のせいだったんですね。もし時間を戻せたなら、井戸水を使わなかったのに。悔しいな」


 そうと今知ったところで、お爺さんは戻ってこない。命はたった一つしかないのだから。


 そして、あたしは思う。


 早く、ふつうに井戸水が使えるようになったらいいのになって。


 そうしたら誰も、苦しまなくてすむかもしれないのに。


 奥様もきっと、苦しまれたんだろうな。


 つづく



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