十四話 特製あんみつもどき
生クリームや卵、それにフルーツが潤沢に使えるということは、王道のあんみつとはかけ離れてしまうかもしれないけれど、それと似たようなものなら作れそうな気がする。
「ばあやさん、お砂糖の種類って、グラニュー糖ですか?」
あ。しまった。つい口が滑ってばあやさんと呼んでしまったけれど、まぁ似たようなものだから、と、ばあやさん呼びをゆるしてくれた。
「お菓子作りの基本はグラニュー糖ですね。ほかのお砂糖もご用意しておりますが、ほかにはなにが必要ですか?」
「それはともかく、だ」
さっきとくらべるとやたらに憔悴しきったディール様があたしの肩に手を置いた。
「巨大スライムが気持ち悪すぎたのだが、本当にこの消し炭のようなものを食べなくてはならないのか?」
「う~ん。どうでしょうか?」
まずは素材の味をみるために、黒いサラサラのお粉を指でひと掬いして口に放った。
食感は片栗粉。味は!?
「やだ、これこのままですっごくあまいですよっ!!」
信じられない。スライムがこんな風に変化するなんて、まだ信じられない。
「だが、元はあの病がかかわっているのに、食べても平気なのだろうか?」
ディール様は、手に取ろうとはしない。
一方でゾーイはあたしの真似をしてひと掬い口に放った。
「本当だ。こりゃあまい。このまま果物と混ぜたいくらいだ」
ゾーイはそう言ったけれど、あたしもだいたいそんな感じで頭の中に構想が出来上がりつつある。
「これが本当にわるいものなら、オレとノゾミはとっくにたおれているはずですぜ、ディール様」
たしかに。考えなしで口に入れちゃったけど、そうね、たしかに今頃えらいことになっていたかもしれない。
なんて思いつつも、あたしはゾーイから黒いお粉の入った袋を取りあげるようにして、なにと混ぜようか迷った。
黒は、食欲を減退させる色でもある。
少しでも、真っ黒がマシになるとすれば、それはきっと。
「あの、ばあやさん、牛乳もありますか? それと、あるだけの生クリームと果物をわけてください」
「はいはい。たんとありますよ。ゾーイ様も運ぶのを手伝っておくれましね。なにしろわたくしは老齢ですからね」
よしっ。段々イメージが膨らんできた。
と、いうわけで。
牛乳に黒い粉を混ぜ入れて、しばらく鍋で温める。
沸騰させないように、弱火でことこと。
ことことことこと。
粉が汁気を吸い取った時点で火からおろし、熱々のところを手で丸めてゆく。その作業が膨大すぎるので、みんなで丸める。
涼しげなガラスの器にやや灰色になった丸めたボールを適量入れて、グラニュー糖でほんのりあまい汁を混ぜ入れつつも、果物と生クリームでトッピング。
できた。
自己流急場しのぎのあんみつもどき。
「どうですか? 食べられそうですか?」
艶っとした色彩に目を奪われた一同へと、おなじものを盛り付けた器とスプーンを並べてみた。
先陣を切るのはやはりゾーイ。
「いただきます!! んぐんぐ。……うんっ? こりゃうまいっ」
なんて感じでリアクションしてくれるものだから、みんなで試食する。
うん!! 自分で言うのもなんだけど、これはこれでおいしくできたと思う。
みなさんも、なんとなく不思議そうに食べてくれている。
「ボクさ、本当はスライム苦手なんだよ。しかもあれだけ巨大だったから、疲れで糖分が欲しかったところだから、ちょうどよかったよ。これ、たくさん作ったら、みんなに食べさせたいけどいいかな?」
「もちろんですっ!!」
出足は好調!! でも、スライムがあまいなんてゆるされるのかな?
つづく




