異世界のタバコ商人と出会って、無職の身でも一攫千金を果たそう!23
さてお次はシャルローネの番なのだが、錫杖片手に立つ姿は、俺の知っている『お嬢さん・シャルローネ』ではない。
どことはなし、戦士感にあふれるというか、猛者の雰囲気漂うというか。
とりあえず俺の知っているシャルローネではなくなっていた。
競技開始。
シャルローネが立つと、張りぼての街はとたんにゴーストタウンのような雰囲気になってしまった。
思わず俺も固唾を飲む。
ゴソリという人の気配。
シャルローネより先に目を向けた自信がある。
気配に気づいた自信もある。
しかしすでに光球は飛んでいた。
イラストが現れた。
一般人のイラストである。
つまりシャルローネは、この光球のコースを変化球のように曲げるんだな?
と、思ったら。
ちゅど〜〜ん!
ちょ……www……おま……ww……!
いまの一般人だろ! 見境なしかよ!
しかしシャルローネの痛快進撃は止まらない。
イラストの登場と同時に、確認なぞなんのその。
これでもかとばかりに光球を放ちまくっている。
ときには一枚の的に魔法の光球を二発三発と撃ち込むサービスぶりだ。
「ふう、スッキリした♪」
そう言ってお嬢さんの微笑みを見せる彼女は、俺の知っているシャルローネだった。
まあ俺としては、「よくぞ持ち堪えた、張りぼての街よ」といったところなのだが。
「ケースケさんの前だから、ちょっぴり張り切っちゃいました」
彼女は可愛らしく舌を出すのだが、俺は直立不動の気を付けの姿勢。
「見事なお手並みでした、閣下!」
やべぇ……あまりにもやべぇ……。
異世界デートであわよくば、などとスケベ心を出さなくて良かった。
本当に良かった……。
そう、ここはシャルローネの世界なのだ。
俺なんぞはシャルローネにかかればイチコロというやつで、簡単に亡きものにされてしまうのだ。
なるほど、異世界商人が大航海時代のような冒険という意味がよくわかる。
本当に、どんな危険が転がっているか、知れたものではないわ。
ということで、俺の異世界旅行は幕引きとなる訳だが、俺には新しい宿題が待っていた。
煙草の次は酒である。
煙草ほど美味しい利益が出る訳ではないが、それでも手を広げていいモノだ。
安酒も商いして利益を出す。
会社務めの頃にはまったく見られなかった熱心さが、俺の中に沸き起こった。
さっそく折りたたみ自転車ネプチューン号にまたがり、シガーショップとリカーショップを回る。
ネット通販という手もあるだろうが、そんなものを頻繁に使って税務署や警察にマークされたくない。
なにしろシャルローネの世界は日本国と交易のない世界である。
そんな世界に酒や煙草を売る行為は、下手をすると蜜輸出行為にあたるかもしれないからだ。
シャルローネの世界の存在が科学的に証明されない限り大丈夫なのではないか? という意見もあるだろうが、油断しないに越したことはない。
前科を頂戴するなど、馬鹿馬鹿しい話だからだ。
危ない橋を好き好んで渡るような真似を、俺はしたくない。
ということで、酒は比較的簡単に手に入る。
北海道限定販売のゴールデンバットシガーに比べれば、どこのスーパーマーケットでも売っているからだ。
庶民派ウイスキーをデイパックに詰め込んで、その重さにひーこら言いながら自転車を漕ぐ。
そして翌日。
煙とともに無様な恰好で現れたシャルローネに、庶民派ウイスキーを買い取ってもらった。
一本千円もしないウイスキーを、五本で五万円の価格である。
これはちょっとしたアルバイトのような感覚であった。




