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寿さんの雑記帳  作者: 寿
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異世界のタバコ商人と出会って、無職の身でも一攫千金を果たそう!22

さて、ランプの燈火に照らされた標的紙が貼ってある。

距離はそれほどでもないが、杖にローブにとんがり帽子の魔法使いが描かれていた。

どうやらあのイラストに魔法を撃ち込むようだが、どのようにして魔法を撃つのか?

シャルローネ先生、お願いします。


「魔法の杖は持ってますね? それでは、充填チャージと唱えてください」


シャルローネの錫杖はポワッと青白く輝いた。

なるほど、それでは俺も。


充填チャージ!」


すると俺の杖もポワッと輝く。

そのとき背筋に、何かが走ったような感覚はあったが、それ以外は特に何もない。

本当に簡単で単純な、つまり錫杖に何らかの仕掛けがあるようで、俺が何かしたとかそういう訳ではないようだ。


「あとはこの杖を振れば、光球が飛んでいきますから、慣れのようなものですね」


シャルローネはそれこそラクロスの選手のように、両手持ちで錫杖を振った。

青白い光球は杖を離れ、標的に飛んでいって命中するとボン! と軽く爆発した。

あとは慣れ、というのはいわゆる『デキる人理論』というものだが、しかし今回は本当にそれが正しいようだ。


俺も両手持ちで錫杖を振ってみる。

魔法の光球は天井に逸れて小さな爆発を起こした。


「もう少し思い切って振ってもいいですよ?」


というシャルローネのアドバイスに、俺は再び充填チャージ

釣り竿でも振るように杖を振った。

今度は正面に光球が飛ぶ。


しかし惜しくも標的紙の右にハズレた。

それに対しシャルローネ先生のアドバイスは?


「振った杖の先で標的を指差すようにしてください。命中率が上がりますよ?」


俺は三度目の充填チャージ

そして思い切って振った錫杖で標的を指差すように止める。

これがなかなかに難しいのだが、標的紙が大きいので、なんとか命中してくれた。


心地よい小爆発の音。

すると魔法使いのイラストは紙に描かれていたようで、その下から板に直接描かれたボロボロの魔法使いのイラストが現れた。

そして杖を振るという動作のスポーツ感。

なるほど、これは競技たり得る。


隣を見るとシャルローネは、様々な構えから縦撃ち横撃ちすくい上げるような下撃ちで光球を撃ち込んでいた。

様々なフォームから繰り出される光球は、狙い違わず標的紙に命中。

これは本当にスポーツなんだなと感心させられた。


「ニッポンでケンドーという武術が盛んなように、私たちの国では錫杖術の武術が人気なんですけど、魔法競技のスローインの基本は、錫杖術の撃ち込みを元にしているんです」


躍動の欲求を肉体に満たしたシャルローネは、スッキリした顔で言う。

とても可愛らしい表情なのだが、同時に受付嬢の言葉を思い出す。


血まみれケツバット。


うん、読めたぞ。

魔法競技の猛者が何故血まみれで、何故尻ケツバットなのか。

シャルローネは錫杖術の猛者でもあるんだな?


そしてシャルローネ、君はその錫杖術でビッシビシと行ってるんだろ。

キビシくキビシく、ビッシビシと。

もしかしたら魔法競技にも、魔法オンリーな試合形式と肉弾戦込みの試合形式があったりして。


そこで自分にGOサインを出したんだろ。

そうでなければ、七段審査でボコボコにしたとかいう言葉は出て来ないはずだぞ、シャルローネくん。

どうかね、この俺の読みの深さ。

返す言葉も無かろうが。


というか、待て。

激しく待て、自分!

目の前で錫杖に頬ずりするような可愛らしい仕草をする娘は、同じ六段をボコボコにするような猛者なんだぞ!


深入りするな。

地雷を踏むな。

今すぐこのCAクライシス・エリアから離れるんだ。


食われるぞ、殺られるぞ!

逃げるんだ!

しかし男子にくらべるとはるかに華奢で滑らかな肌の手で、錫杖を握るコツなどアドバイスされては、そんなことどうでもよくなってしまう。


ミルクのようなシャルローネの香り。

そしてほんのりと触れてくる二つのふくらみ。

俺、もう死んでもいいかもしれない。


「大分命中率があがりましたね、ケースケさん♪ それじゃあ今度は動く標的に撃ち込んでみましょうか?」


動く標的……。

なんだろう、この胸を熱くする響きは……。

しかし俺の胸のときめき、このときめきをよそに、シャルローネはルール説明をしてくれた。


みんなはFBIの射撃訓練を御存知だろうか?

コートを跳ね上げてから拳銃を抜く、というあれではない。

訓練用ルートを辿り、物陰から現れるイラストが銃を構えていたら撃つ。


一般人のイラストなら撃たない、というアレである。

それとルールは同じだそうだ。

そんな訳で別室に移る。


市街地を模した張りぼての街だ。

そこかしこにゴソゴソという人の気配がした。


「さあ、ケースケさん! ここから向こうの旗まで歩いて行ってください! すると敵や一般人が現れますから、敵にだけ魔法を撃ち込んでくださいね♪

それじゃあ、スタート!」


どれ、少しシャルローネにいいところを見せてやろうか。

確かに俺はFBIの捜査員などではない。

しかしネットゲームにはもっとえげつないルールのゾンビ狩りゲームが存在するのだ。


しかもこれは、視覚聴覚からの情報が制限されたモニター上のゲームではない。

フルに五感を働かせることのできる現実リアルなのだ。

状況は圧倒的に俺の有利としか言えない。


錫杖に充填チャージを済ませ、剣道の八相のようにかまえて慎重に足を運ぶ。

コツは怪しい場所の目星をつけて、先に目を配っておくことだ。

あとはタイミングだ。


ゴソッ……そら来た!

グッと錫杖を振りかぶるが、そのイラストは一般人だった。

買い物かごを提げた女性である。


俺は錫杖をおろした。

すると女性のイラストはクルリと反転、盗賊のイラストに変わった。

アリかよ、こんなの!


と思ったが、どうにか錫杖を振る。

反則ギリギリアウトなゲームだったが、どうにかノーミスでクリアすることができた。

賞品として、小さなメダルが与えられる。


シャルローネがそれを首にかけてくれるのだが、やっぱり正面からである。

俺もの中の「どうにも辛抱タマラン男」を無理に抑え込み、ジェントルメンであることに徹することができた。


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