異世界のタバコ商人と出会って、無職の身でも一攫千金を果たそう!21
シャルローネが案内してくれたのは、敷地面積は広いくせに平屋建てに見える、ニッポンで言うところの総合体育館といった施設であった。
どうやらスポーツ魔法というのは、屋内競技らしい。
意外と言えば意外である。
入場料を払って施設に入る。
照明がすべてランプという以外は、本当にニッポンの市営体育館のようだ。
コートでラクロスに似た競技をしている者たちがいれば、バーベルやダンベルを持ち上げて筋トレに励む者もいた。
そして奥の方の一室は、入り口のところに受付と商品が展示されていた。
シャルローネが身につけているアクセサリーのようなものだ。
「この世界ではこういった神さまの力が込められた装飾具で、魔法を使うんです。すみませ〜ん……」
シャルローネが声をかけると、受付嬢は明確にゲッという顔をした。
「ち、血みどろ尻バット……」
ん? なにか今、不名誉に近い言葉が聞こえたような……。
それにシャルローネも唇の前に指を立てて、「シーッ、シーッ!」とかやっている。
まあ、俺もいい大人なんだし、この世界ではジェントルメンなのだ。
ここはなにも詮索などせず、聞こえなかったふりをしよう。
しかし二人は額を寄せ合って、「今日の生贄はこちらの男性なんですか?」「違います!
こちらは私の大切なパートナーなんですから!」などと、本人たちは小声のつもりでありながら、実は丸聞こえな会話をしていた。
っていうか、生贄ってなによ?
「いいですか! ケースケさんはなにも知らないんですから、静的射撃と動的射撃だけを体験させてください!」
「あぁ、対戦は無しですね? わかりました」
うん、今でこそ無職の浪人であるこの俺だけど、社会の波には揉まれてきたんだ。
おおよその察しはつくぞ。
シャルローネは魔法競技の猛者だったりして、それも割と情け容赦ない勝ち方をする、ニッポンでいうところの『土俵の鬼』とか、すげぇ二つ名があったりする選手なんだろ?
そうなんだろ? つーかそうとしか思えない。
シャルローネは装飾具を二人分購入、そしてレンタルの錫杖を借り受けた。
「魔法にはすこしだけコツが要りますから、私が手ほどきしますね」
ニコニコと微笑むその笑顔に、血みどろ尻バットの二つ名はまったく似合わない。
しかしなんとなく。
なんとなくではあるがその錫杖の握り方は、いかにもプロっぽかった。
少し探りを入れてみるか。
「手ほどきっていうけど、シャルローネは指導のライセンスとか持ってるの?」
「えっへっへ〜♪ 実は私、競技魔法の史上最速、六段合格者なんですよ〜〜♪」
おお、それはすごい!
どれくらいすごいかというと、俺のまわりには〇〇六段なんて人間はお目にかかったことが無いんだから。
それを史上最年少で合格なんだから。
素直に褒め称えてもいいよな!
「七段昇段は相手をボッコボコにしたせいで不合格でしたけど……」
ん? なにか聞こえたような気がしたけど、ジェントルメン俺の耳は、不穏な単語は拾えない。
まあ、なんでもよろしいでしょ? という受付嬢に装飾具をつけられて、シャルローネに背中を押されるようにしてコートに入る。
右手には、先端が卵型になった錫杖。
左手にはシャルローネ。
あたりの静けさから、最初は静的射撃なのだろうと、勝手に思った。




