異世界のタバコ商人と出会って、無職の身でも一攫千金を果たそう!18
煙草店の常連とおぼしき二人にシャルローネは挨拶を済ませると、俺の背中を押すようにして表に出た。
ランプの灯りの店内から、ランプの灯りの表へ。
人出は多い表通り。
自動車というものが存在しないのか、道一杯に人があるいていた。
俺も歩行者天国というものは知っていたが、そんな華やかな場所にはここ数年縁が無い。
そして祭りの人出にも似ていると思ったが、それほどの華やかさも無い。
みなシックで落ち着いた色合いの服を着ているからだ、とすぐに分かった。
シックで落ち着いた色合いの服といえばシャルローネもそうなのだが、それはニッポン基準の話。
この魔法王国世界では充分に華やいだ服装と思えた。
もちろんそう感じるのには、シャルローネの若さと美貌が大きく関与しているのは間違いない。
「いかがですか、ケースケさん? アルフォーヌ魔法王国は」
ランプの灯りの下、朧に輝くシャルローネの顔に見とれていた。
俺は我に返ったように辺りを見回す。
目の前の建物はかなり巨大なもので、見上げるとどこまでもどこまでもランプの輝く窓の灯りが続いていた。
月明かりが夜空の雲を浮き上がらせている。
しかしそれはほんのわずかなスペース。
つまり俺たちのいる場所は、高層建築物に見下された谷底のような世界。
「すごいなぁ、灯りはランプなのに高層建築物がそびえ建っている」
それは見たことすら無いのだが、夜のサグラダ・ファミリアを連想させてくれた。
ポカンと口を開いた俺を、シャルローネはクスッと笑う。
「これは私たちが祀る神さまのための大聖堂。だから余計に立派な建物なんです」
「そうか、神さまに守られているみたいなものか」
「神さまは偉いですから、存分に私たちを見下ろしているんです」
「もしかすると君たちが祀る神さまがいないと、この国この世界は成り立たないのかな?」
「そうですね、神さまのいない世界など、私たちには考えられません」
「するとシャルローネにとってニッポンっていう国は、ものすごく違和感があったんじゃないの?」
「いえ、そんなことはありませんでしたよ。ニッポンでは数多くの神さまの気配を感じましたし、とても大きな神さまも存在してましたから」
そんなに大きな神さまがいるのだろうか?
俺はその存在を感じたことが無い。
まあ、ありきたりな解釈をするならば、太陽の存在が天照大御神ということになるだろうか?
だけどあれは単なる天体的存在に過ぎないし……。
「それよりケースケさん、こちらの世界のお酒や食べ物を試してみたくはありませんか?」
グルメ旅行か。
悪くない。
ソフトクリームは食べさせてあげられたけど、クレープはまだシャルローネに御馳走してやれていない。
しかもどちらも金百円もしくはそれに毛の生えた程度。
それなのにシャルローネは、この世界の高級料理を振る舞ってくれるつもりらしい。
少し申し訳なく思いながらも、彼女の好意を無にするのも悪い。
「是非ともお願いしたいね」
そう答えると、シャルローネは花がほころぶように笑顔を見せた。
「ケースケさん、お酒はどうでしょう?」
「実は目が無い方だ」
そう、シャルローネと煙草の取引をするようになってからこっち、心ひそかに思っていたことだ。
アルフォーヌ魔法王国で、ニッポンの酒は通じるのだろうか?
もちろん日本酒だけに限らない。
ビール、焼酎、ウイスキー。
ジンにラムにウォッカといった酒の数々。
これらがシャルローネの商いの手助けになれば、俺の収入も倍増することだし。
如何?
というところであった。
特に安酒辺りが好評だったりすると、俺もシャルローネも大儲けというところだ。
そして何より、俺にとって酒というやつは煙草と並んで人生の友という存在だったので、これが評価されると素直に嬉しい。
我らが酒は異世界にも通ず!
その冠は酒好きとしては、金銭にも替え難い誉れであると言えた。
シャルローネの招きに応じて、木造平屋建ての家屋に入る。
入り口にはランプが灯され、異世界の文字の立て看板があったので、レストランだと勝手に思い込んだ。




