異世界のタバコ商人と出会って、無職の身でも一攫千金を果たそう!17
お待たせしました。更新再開です。
それでは改めまして。
そう言ってシャルローネは俺の目の前にアクセサリーをかざす。
それからなにやら呪文のようなものを唱えると、アクセサリーの中の宝石がボンヤリと輝き始めた。
そのアクセサリーは電子音のような、それでいて言語のような音を発する。
そのボンヤリとした輝きがおさまると、シャルローネはまぶたを開いた。
「メディカルチェック終了です、ケースケさん。どこにも異常は見当たりませんでした」
ホッとしたような、穏やかな微笑み。
そして思い出してしまう、まぶたを閉じたシャルローネの無防備な表情。
それが美術品のように美しすぎたこと。
「あの、ケースケさん?」
「あ、いやなんでもないんだ、シャルローネ!」
俺の目を覗き込むようにして、シャルローネの顔がアップで迫る。
艷やかな唇が迫ってくるようで、思わずたじろいでしまった。
いや、本当のことを言えば、邪な考えを見透かされたかと思ってなんだけど。
「お身体の具合が悪くなければ、少し外を歩いてみませんか? 私の住む世界を御案内します」
「あ、そそそうだね。魔法王国っていうのは俺も初めてだから」
いかん、まだ動揺している。
それくらい、シャルローネは警戒心無く急接近してきたのだ。
まったく、これじゃ中学生男子じゃないか。
風俗とはいえ、俺には経験があるんだぞ?
皮の剥けてないボウヤじゃないってのに。
年齢不相応な動揺に気恥ずかしさを感じていると、シャルローネは木造りのドアを押し開けた。
外から涼しい夜気が流れ込んできた。
いま気づいたのだけれど、俺たちがいた倉庫は煙草葉の倉庫だったようだ。
外からの夜気に、独特の香りは無い。
外は裏庭のようになっていて、塀の向こうには吊られたランプが街灯の役割を果たしている。
そしてシャルローネが歩いてゆくのは、母屋だろうか?
立派な建物というか向こう側に看板らしきものが見えるので、店舗ではないかと察せられた。
裏口の扉を開くシャルローネ。
どうぞと招かれた先はやはり店舗のバックヤード。
紙ケースがあちこちに積み上げられた、煙草ショップそのものであった。
店の中には喫煙場所がもうけられていて、上等そうなローブを羽織った偉そうな男が二人、葉巻を楽しんでいた。
「おや、看板娘のお帰りかい?」
「そちらはどなたかな? 見かけない服装のようだが」
「こんばんは、フォウおじさま、レイおじさま。こちらは私に異世界煙草を商いしてくださっている、現地商人のケースケさんです」
おお、現地商人ときたぞ。
これは少し背筋を伸ばして歩かないと、シャルローネに恥をかかせてしまうな。
すると二人の男たちは顔を見合わせた。
また冴えないとか見すぼらしいとか言われるんだろうか?
「ふむ、背筋を伸ばしたね、彼……」
「決して高いみぶんではないようだが、しかし……」
「うむ、シャルローネお嬢さん、君に恥ずかしくないようにとの気遣いのようだな」
「あぁ、顔つきもグッと引き締まった」
いや、確かに俺はシャルローネのためにそうしたけど、それに対する評価は過分と言えた。
「いい相棒を持ったね、シャルローネお嬢さん」
「あぁ、良い若者だ」
「なにがいい若者なモンかね」
背後から聞き覚えのある、厳しい声。
「この男、シャルローネの着地が下手なのをいいことに、娘の尻の下に顔を埋めておったんだぞ」
「お父さん!」
シャルローネは声を荒げた。
そう、背後の声は親父さんだった。
っていうか、俺、シャルローネのお尻に顔を埋めたの?
マジ?
しまった! 感触を覚えてないぞ!
いや待て待て、俺にはまだ帰路がある。
シャルローネは着地が下手だから、チャンスはまだある!
今度はあ〜んなことになったり、こ〜んなことになったり。
夢はふくらんでしまうじゃないか。
「シャルローネお嬢さん、前言撤回だ」
「あぁ、急にスケベくさい顔になったわい」
俺の評価は急降下したようだ。




