異世界のタバコ商人と出会って、無職の身でも一攫千金を果たそう!15
それから俺は自転車漕ぎ漕ぎ、毎日店を変えては煙草をワンカートンずつ購入していった。
毎日同じ店で煙草をワンカートンも買っていたら、さすがに怪しまれるからだ。
社会的に俺は無職。
労働にまったく従事していない無収入者なのである。
それが毎日毎日、煙草を十パックも購入していたら、税務署なり警察なりに目をつけられてしまう。
だから俺は煙草を買いに出るときは、可能な限り道を変えて、同じようなところを通わないようにした。
そしてもうひとつ、嬉しい問題があった。
シャルローネから受け取った現金を、下手に銀行へ預けられないということだ。
毎回毎回ドンガドンガと、二十万三十万の現金を預け入れはできない。
何日かに一度、光熱費とネット料金の支払いのためという振りで、何万円かの現金を預け入れするだけだ。
ということは、変に現金が貯まってしまう。
というか裸銭が横たわっているということになる。
これは少し問題がある。
ということで申し訳程度にホームセンターで手提げ金庫を購入。
その金庫は禁断の間、押入れの洗濯物の山の中にしまい込んだ。
そうだ、俺はもう無職。
時間はたんまりとある。
スポーツバッグに洗濯物を可能な限り詰め込み、自転車にまたがってコインランドリーへ出撃する。
もちろん途中でスーパーマーケットに立ち寄り、洗剤を買うのも忘れない。
洗い上がったフカフカな洗濯物(もちろん乾燥機も使った)に囲まれ、部屋でくつろいでいると、シャルローネから通信が入る。
「あの、今からよろしいでしょうか?」
「あぁ、かまわないよ」
とは言ったけど、どうしたんだろうと訝しんでしまう。
煙草の取り引きの日付はまだ先だというのに。
というかシャルローネ、ここのところ何かと口実を見つけてはウチに来ているような……。
まさか、俺に逢いに来ているとか?
まさかな、それは無い無い。
そう思っていたら、今日もシャルローネが来た。
「ケースケさん、一度アルフォーネ魔法王国へ来てみませんか?」
出しぬけ彼女は言った。
アルフォーネ魔法王国……それはシャルローネたちの住む異世界。
まあ、魔法王国というくらいだから魔法使いがワラワラといる世界なのだろう。
「うん、行ってみたいね。でも大丈夫かな?」
「何がですか?」
「モンスターに食われたりしないだろうか?」
俺の心配に、シャルローネはウフフと上品に笑った。
「アルフォーネ魔法王国は大都市ですから、城壁は兵隊さんたちがまもってくださってますよ」
なるほど大都市だから……ってそれは田舎なら食われるってこと?
っつーかいるんだ、モンスター!
俺がビミョーなポイントに驚いていると、シャルローネはキョトンとして言った。
「人間がいるならモンスターもいますよ? そうですねぇ、ケースケさんの感覚では野生動物のようなものでしょうか?」
なるほど、東京でも野生動物に農作物を荒らされる農家はあるかもしれない。
まさしく、人間がいるなら野生動物もいますよというところだ。
まあ、俺の売った煙草がどのように吸われているかという興味はある。
というかそれはあくまで建前であって、シャルローネの誘いには乗ってみたいところである。
というか、異世界でデート気分ではないか。
どんな世界だろうか、アルフォーネ魔法王国。
もしかして、俺も魔法なんか使えちゃったりして……。
……ふと思う。
使えてどうする? 魔法……。
そもそも魔法王国なのだから、そんなものは使えて当たり前。
仮に俺の中に強力な魔法が眠っていたとして、向こうの世界でそれをふるうというのか?
それはシャルローネに迷惑だろう。
そしてもし、魔法を使えるようになったとして、ニッポンでそれをふるうというのか?
なんのために?
このニッポンで?
あまりに無用すぎるぞ、魔法。
武道でさえ現代社会ではその居場所を失いつつあるというのに、それを超えたミステリアスパワーがあって、どうするというのだ?
わが国は、アルフォーネ魔法王国とは違うんだ。
まあせいぜい、海外旅行で話の種にマグナムを撃ってくるような感覚で体験してもいいだろうけど、そんな話を他人にする訳にもいかない。
……本当に、居場所が無いな魔法。
だが魔法、俺はお前のこと、役立たずだなんて言わないぜ。
お前にだってきっとイイところがあるさ。
なぁ、魔法……。
いつ終わるとも知れぬ十二時間勤務期間に突入。果たして作者寿、生きて帰れるのか?




