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寿さんの雑記帳  作者: 寿
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異世界のタバコ商人と出会って、無職の身でも一攫千金を果たそう!12

翌朝、首にかけて眠っていたネックレスが、警報のような音を立てて発光した。

なにごとかと思って、ボロ布団を蹴飛ばしながら跳ね起きる。


「おはようございます、ケースケさん♪ 今日はお塩の代金を支払いにうかがいたいのですが、これからよろしいでしょうか?」


シャルローネの声がした。

ネックレスからだ。

すぐに答える。


「五分! 五分だけ待ってくれ!」


「は〜い、そちらの時間で五分ですね? それからうかがいま〜す♪」


明るいシャルローネの声を、もっと集中して聞いていたかったが、それどころじゃない。

慌てて共同の洗面所に向かい、ざぶざぶと洗顔。

タオルなんてシャレたものなど無いので、着ていたシャツで顔を拭う。


それから歯磨き、そして下着を着替えて、脱いだシャツを濡らして絞って身体を拭う。

よし、あとは服を着るだけだ!

ボロの安物デニムに足を通していると、背後でボワンという煙。


ギリギリセーフ。

どうにかパンツ姿を見られなくて済んだ。

シャルローネはまたも着地に失敗したらしく、頭にタンコブをこしらえていたのだ。


「あいたたた……朝早くからスミマセン、ケースケさん」


「いやいや、君のような美少女の来訪なら、いつでも歓迎だよ」


埠頭で夜霧にむせぶハードボイルドのように、窓のさんに足をかけて、おれは格好をつけた。


「……………………」


おや? シャルローネのレスポンスが薄いね。

もしかすると俺のダンディズムに心打たれて、湖のような瞳をうるませているんじゃないだろうね? ……ってンなこた無ぇか。


「ウルウルウルウル……」


ホントにうるませてるよ!?

どんな美的感覚なのさ、シャルローネ!

と思ってたら。


「クチン! すみませんケースケさん、さっきの煙で鼻がムズムズしてしまって……」


ですよねー!

クっソ、これでは俺が間抜けなピエロじゃないか。

自分の思い上がりに恥ずかしくなってしまい、俺はシャルローネに背を向ける。


「そうそう、そうでしたケースケさん! 今日はお塩の代金を払いに来たんですよ♪」


「あぁ、そうだったね。塩十キロ、いくらで売れたの?」


シャルローネはニコニコと俺を見つめたまま、手元も見ずにがま口かばんをまさぐる。

そしてドンと置く札束一本!


「ケースケさん、金百万円なり! どうぞお受け取りください!」


なぬっ? ひゃ、百万円!?

貴重品とはいえ、たかだか食塩十キロ。

千円かそこいらの仕入れ値だぞ?


するとシャルローネはムフンと鼻息ひとつ。


「正直申し上げて、私も異世界商人を始めて一番の大商いでした! この成果をどうぞ共に喜んでください!」


成果を共に喜ぶ。

嗚呼……なんと素晴らしい響きか。

この世の中は「従業員は使えるだけ使って、経営者の利益をもっともっと上げよう!」という誤ったマルクス主義がはびこっているというのに。


これはまさしく女神の福音にも等しい言葉ではないか。

嗚呼、女神さまシャルローネさま。

君の前では、俺は哀れな巡礼。


「あの、ケースケさん……一緒に喜んではいただけないのですか?」


「そんなことないよ、シャルローネ! これはありがたく受け取らせてもらうよ!」


伸ばした手が、シャルローネの手に重なる。

彼女は顔を真っ赤にして手をひっこめた。


「あ、ごめん……」


「いいえ、私こそ……ビックリしてすみませんでした……」


「ところでシャルローネ、あの塩はいくらで売れたの?」


「はい、塩商人さんが、グラム三〇〇円で引き取ってくださいました♪」


グラム三〇〇円?

貴重品なのはわかるけど、カケル千グラムで、一袋三十万円?

それが十袋で、三〇〇万円になったのか?


たった千円が……。

おそるべし、異世界商人。

あなどり難し、大航海時代。


「すごい商いじゃないか、シャルローネ。だけど本業の煙草はどんな感じなんだい?」


「はい、試供品が功を奏したのかこちらも好評で、顧客が五人もいるんです♪

そこで販路を拡大しようと、またゴールデンバットシガーを十パック買い付けたいのですが……」


「そんなに簡単に販路って広がるの?」


元サラリーマンとしては気になるところだ。


「はい、父が貴族さま出入りの煙草商をしていますのでそこから貴族さまを顧客として確保。すると貴族さまとお近づきになりたい商人も、同じ煙草を買い求める、という仕組みです♪」


いいのかよ、そんな簡単に商いのコツを喋って。

と思ったけれど、俺には貴族さまなど関係が無い。


「だけどシャルローネ、そうなると貴族さまは他人と同じ煙草なんて気に入らなくなるんじゃないのかい?」


「まさしくそのとおり! ケースケさん、商人の才能がありますね♪」


いや、そんなことは絶対に無い。

才能があったら会社を辞めることなんて無かったはずだ。

いやいやそれより、シャルローネからの注文オーダーだ。


急いで煙草を買いにいかなくては。

そして貴族さまがゴールデンバットに飽きたときの対策も考えておかなくては。


シャルローネさんのエピソードは隔日更新にさせていただきます。ネタが無いからではなく、ネタがあるのでできるだけ丁寧に書きたい所存、御理解のほどを。

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