リベンジ・パーティー追放もの
ここは酒場。
旅人や冒険者たちが羽を休め、ひととき憩う癒やしの場所。
そしてまた人が集い、人が別れる場所でもある。
アタシ、名前はメカクレ地味子。
Sランクパーティー『暁に飲むコーヒー』の荷物担ぎ兼読心術師だ。
今日もまたひとつの探索を終えて、この酒場でメンバーたちと羽を休めている。
だけど今日の帰り道から、メンバーたちの態度がよそよそしかった。
普段はやらないことだけど、アタシはメンバーたちの心を読んでみることにした。
読心術といってもアタシの場合、霊能力に近いものがある。
たとえばリーダーに目を向けてみようか。するとリーダーの頭からリーダーの霊魂が生えているのが見えるし、その声が聞こえるのだ。
いま現在、リーダーの霊魂はこう言っている。
『メカクレ地味子はもう足手まといだ! わがパーティーから追放すべきである! 断固として!』
そして戦士さんにも目を向けてみよう。
『読心術師って、気味悪いよな。特にコイツはなに考えてっかわからねぇし』
ボインの魔法使いちゃんはどう思ってるかな?
『地味子ちゃんとお別れかぁ……お別れ前に、いただきますしちゃおうかしら?』
……人の心を読むと、こうした事故もある。見なかったことにしよう。
ではでは癒やしの乙女巫女ちゃんはどう思ってるのだろう?
『地味子ちゃんを追放したら、私たちが荷物を担いで探索しなきゃいけないじゃない! そんなのイヤよ!』
大変に物分りのいい娘さんだ。
巫女ちゃんの考える通り。いくら歩みが遅くとも体力が無くっても、アタシをパーティーから追放すると、その分の負担がメンバーにかかるのだ。
だったらもっと体力のある力持ちをメンバーに迎えるって?
わかってないね、キミ。
アタシは読心術師。物陰の待ち伏せくらいなら、アタシにはお見通しなのだ。
さらには暗がりでの夜襲。
とにかく視界の効かない場所では私と魔法使いちゃんが組めば、ほぼほぼ無敵状態だったのだ。
そんじょそこいらの力持ちごときと一緒にされては困るのだ。
しかしリーダーは、酔眼をアタシにむけて立ち上がった。
「メカクレ地味子! 最近のお前は荷物担ぎすらまともにできてないじゃないか! これ以上お前にいられると、パーティー全体が足を引っ張られるんだ!
よってお前を『暁に飲むコーヒー』から追放する! これはメンバー全員の一致した意見だ!」
そう宣言したときには、アタシの仕込みは済んでいる。
すでにアタシは自分の霊魂の一部をニュルリと巫女ちゃんの霊魂へと伸ばして、そっと耳打ちしていたのだ。
『明日から、どう戦うんですか?』って。
「さあメカクレ地味子! いや、この足手まといが! さっさと荷物をまとめて、どこへなりと行くがいい!」
リーダーの言葉に早速荷物を解かせてもらう。
まず最初に巫女ちゃんの分。着換えの下着類に魔法の装備品。物理攻撃から身を守る防具などなど。次から次へと手渡しにして、持ちきれないくらいにする。
「ちょ、ちょっと待って地味子ちゃん!」
アタシを追放しようという派閥から、一名脱落しそうだ。
「ちょっとリーダー! 私こんな荷物担いで、今まで通り戦うなんてできないよぉ!」
「だったら別な荷物運びをメンバーに迎える!」
「私、ちょっと異議ありかな」
ボインの魔法使いちゃんが手を挙げる。
「確かに力持ちを雇えば、進軍は早くなるよ?
でも地味子ちゃんは暗いダンジョンで待ち伏せの敵を教えてくれたりしてたじゃない。私の魔法が活きたのは、地味子ちゃんのおかげよ?」
「ならば優秀な案内人を雇えばいい!」
いるのかね? そんな優秀なのが? と思ったが、事態は思いがけない方向に舵を切る。
「私は地味子ちゃんと別れるの、イヤだなぁ……」
巫女ちゃんは瞳うるうる。あざとすぎる乙女の涙作戦なのだけれど、気をつけてください。
彼女は美しい男性同士を愛し合わせる妄想が大好きで、アタシと夜な夜なそういう話題で盛り上がっていた同好の士であるのだ。
「同感、地味子ちゃんを追い出すなら、私は『暁に飲むコーヒー』を辞めさせてもらうわ」
おっと、魔法使いちゃん。思い切った発言ですな。
でも彼女の霊魂は『そうなれば地味子ちゃんと二人パーティーで、傷心の地味子ちゃんを慰みもの……じゃなくって慰めて……デヘヘへ』
メカクレ地味子、今は追放の危機よりも貞操の危機を感じております。
「魔法使いちゃんが辞めるなら、私も辞めよっかなー」
「まてコラ! 魔法使いと治癒者に辞められたら、『暁に飲むコーヒー』はどうなるんだ!」
「またSランクメンバー雇えば?」
巫女ちゃん、強気ですなぁ。
「悪いけれど二人とも、Sクラスパーティーにいた戦士、メンバーに加える気、ないかい?」
「こら戦士! お前まで出ていく気かっ⁉」
「だって野郎二人でコンビ組んでたって、魔法使いも治癒者もいねぇんじゃ、探索はできねぇだろ?」
戦士くんに関しては、なんともこう、清々しいまでの手の平返しでございます。
「ねねね、地味子ちゃん。新しいパーティーの名前、どうする?」
「戦士くんが加盟するなら、『花とゴリラ』ってどう?」
「いやいや、ゴリラをもっと押し出して『ゴリゴリ・レッツゴー!』でどうだ?」
「イヤよそんなの、興奮したら糞を投げて来そうじゃない?」
アタシたち、勝手に盛り上がる。
そう、かつてのリーダーを取り残して。
そして翌朝。
「それじゃあメカクレ山賊団、出発ですよ!」
「「「お〜〜っ!」」」
「お〜〜……」
「おやおや、メンバーで一人、元気の無い方がいらっしゃいますねぇ」
「おう、荷物運び! 遅れんじゃねぇぞ!」
「Sランクパーティーに相応しい荷物運びをしてもらいますからね!」
「荷物運び〜〜喉乾いた〜〜水筒出して〜〜!」
かつてのリーダーは荷物をおろして荷物を解いて、ようやくの思いで水筒を探り当て、またアタシたちの後をついてくる。
「わかってるだろうけど、荷物運びくん。ダンジョンではキミが先頭だからね。罠も待ち伏せも、全部引き受けてね?」
「え? お、俺が?」
「そーよー、以前は地味子ちゃんがそれ務めてたんだから。当然じゃない?」
「心配いらねーよ、荷物運び。お前さんもかつてはSランクパーティーの勇者だったんだ。やれるやれる!」
「できるできる!」
「いけるいける!」
「いざとなったらリーダーの地味子ちゃんを守る盾にもなってね?」
「うそ〜〜ン!」
パーティー解体で再結成だからBランクに落ちたけれど、このメンバーならばきっとすぐにSランク復帰だろう。
そう、アタシたちの戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
メカクレ地味子、作者お気に入りのキャラクターです。




