終幕・令嬢編
わたくしはお嬢さま、侯爵家の令嬢。
そしてこの国の第一王子の婚約者でもございますの。
その地位や身分というものは大層重いものでございまして、平時の立ち居振る舞いに言葉遣い。
果ては思想思考にいたるまで、国母たることを求められていますのよ?
決して身分ある者だけで集い、下賤の者に蔑みの眼差しを与えていればよろしいものではございませんわ。
なにしろこれから先、わたくしがみっともない振る舞いに及べば、国そのものが軽んじられてしまうのですから。
侯爵家に生まれた娘というのは、生まれながらにしてそのような教育を受け、躾けられておりますの。
さて、わたくしがその純潔と生涯を捧げようとしている王子の周りに、最近ウロチョロとしている子狸がいるようですわね。
どうやらそのことに伯爵家の御長男も気づいてらっしゃる様子。
王子さまに気づかれぬよう、そっと目配せして、伯爵家御長男を差し向けましたわ。
伯爵家は我が侯爵家とは深いつながり。
王家に刃を向ける意思ある者を侯爵家が洗い出し、伯爵家が掃除をする。
これは古来より伝わるしきたりですのよ。
さて、調べによりますと子狸は男爵家の御令嬢だとか。
すなわち身分違いで、王子さまと結ばれることがあってはならない存在。
貴族社会における、いわば足軽のようなものですわね。
その子狸が、どうやら王子さまに恋心を抱いている様子。
まあ、それ事態は問題にはなりませんわ。
恋は娘ならば、誰でも落ちるものですので。
ですが王子さまの胸に飛び込むのは、やりすぎかしら?
それでも顔を真っ赤にして照れている姿を見れば、いまだ人畜無害と判断できましたわ。
ですが、事態は思わぬ方角へと舵を切りましたの。
王子さまと子狸さん。
二人切りで体育用具倉庫に閉じ込められて。
あろうことか王子さまの方が子狸さんの唇を求めておりましたわ。
こうなるともはや黙ってはおれません。
子狸さんには申し訳ございませんが、高く空を舞っていただくしかございませんわね。
伯爵家御長男も、そっとうなずいてくださいましたわ。
そして王子さまの取り巻きとされる方々も、王室のため、国のため、わたくしに賛同してくださいましたの。
さて王子さま、貴方はこれから先、わたくしと結ばれた上で取り巻きにお仕事を任せる身分になりますのよ?
オホホホホ……。
素敵な王国になりそうですわね。
オホホホホ オホホホホ オホホホホ




