コント『異世界から転生』その15
さて翌日、深雪と一緒に登校。
途中の緑地公園で姫乃木さんと出くわす。
「あら、お二人で登校ですか?」
「普段は一緒じゃないんですけど」
「昨日のアレで今日ですから。ですけど御安心ください、出し抜いて麻実也に何か吹き込むようなことはしませんから」
そう、それはもうすでに昨日の帰り道で済ませている。
「ですけどお兄さま、優先されるべきはお兄さまの意思と将来ですから。周りがなんと言おうと決して悔いのない御選択をしてくださいませ」
大人の気遣いだろうか?
昨日の帰り道で早速出し抜いてきた深雪とは大違いだ。
だからといって、深雪が言っていたことが間違いかというと、そうでもない。
挨拶をして姫乃木さんと分かれる。
僕も少し考えていた。
僕にとっての最良の選択をすれば、他の人たちは捨てられることになる。
そのとき前世の記憶を背負った彼らの『最良の選択』というものはあるのだろうかと。
学校に着く。
すでにお馴染みの柔道部員、槇原くんがいた。
「おはよう、槇原くん」
「おう、兄者。今朝は同伴出勤かい」
槇原くん、同伴出勤というのは、かなりいかがわしい使い方をされるべき単語じゃあないのかな?
まあ、彼にとっての兄者というのは、かなりいかがわしい人物なんだけどね。
「槇原くんは今日も部活かい?」
「おう、地区大会も近いんでな。猛然と励まにゃあならんわい」
「じゃあ帰りは一緒にしないかい? 図書室で待ってるよ」
「おぉ、そうかい! そりゃあ嬉しいのぉ!」
ということで、帰りは槇原くんとゆっくり語り合いながらとなる。
そして放課後、図書室で時間をつぶしながら槇原くんを待つ。
夕焼けに染められた図書室で小説などを読みふけっていると、大柄な若者が扉を開いた。
当然のように、槇原くんである。
黒帯で巻いた柔道着を学生カバンと一緒にぶら提げていた。
「待たせたかいのぅ?」
デカブツだが妙に愛嬌のある笑顔だった。
「いや、気にしないで。暇つぶしには事欠かなかったから」
「ほうかい、ほいじゃあ帰ろうかいのぉ」
巨漢と並んで歩くと、ものすごくチビになった気分になる。
それもただの大男じゃない。
鍛え抜いた大男なんだ。その画面一杯感というか、腹一杯感はハンパじゃない。
「兄者、俺と一緒に帰るってこたぁ、将来の話じゃろ?」
「う、うん。まあね……」
言い出しにくいことをズバリと切り出してくる。
なにしろかれの将来の希望というのは、レジスタンスやならず者だったからだ。




