コント『異世界から転生』その14
一人ひとりと会って僕の将来を決めてゆくとなれば、一番最初に会うのはコイツだろう。
「はぁ〜〜……」
「どうしたのよ麻実也。人生で初めてモテ期に入って、くたびれちゃった?」
そう、ご近所さんともなれば帰り道も同じ。
深雪である。
帰りの同伴はみんなが我も我もと立候補してくれたが、結局はご近所さんということで深雪の同伴となったのだ。
まあ、一番面白くも可笑しくもない将来の展望を語ってくれたのだから、みんなも納得しなければならなかった。
「うん、まあね。前世の記憶がよみがえったのはわかるけど、みんな熱心すぎるからね」
「それにしても麻実也、ずいぶんと転生してきたんだね?」
「だから僕だけ前世の記憶が無いとか?」
「そうでなければ、ロクでもない過去を思い出さないようにしてるとか?」
「ホント、僕の前世ってロクなことしてないよなぁ」
「それだけ必死だったんだよ。生きることに」
深雪には前世の記憶がある。
その記憶に従って語るところによれば、当時は現在のような保証というものが無かったそうだ。
未成熟な人類。
未成熟な国家。
未成熟な社会制度。
飢饉や災害はすぐそこにあり、それに見舞われたからといって、明日の生活を国家が保証してくれる訳ではない。
だから人は醜い生き方であっても、卑劣な生き方であっても、生き延びなければならなかったそうだ。
外道王子であろうとも、鬼畜領主であろうとも、山賊の親分であろうともずる賢い弟子であろうとも仕方のない生き方だったのだと深雪は言う。
「だからね、アタシは」
ちょこんと僕の前に出て、見上げてくる。
「現世では麻実也に平凡に暮らして欲しいんだけどな」
もう、飢えることは無いのだから。
深雪はそう言ってくれた。
「もちろん幸せになる努力はしなきゃダメだよ? でもようやく『普通にしていれば普通に幸せになれる世の中』に生まれてきたんじゃない。平凡な幸せで行こうよ」
「まあ、僕もそれが一番性に合ってるとは思うんだけどね」
「だけど?」
「他の三人があんまりにも押しが強いから」
「あ〜〜……麻実也、寄り切られそうだねぇ」
どうも僕は「えいっ!」と立ち上がることがない。
自分の将来なんだから、「なんとしてでもこれをやってみせる!」という強い意思がなくちゃいけないんだけれど、僕はどうしてもボンヤリしたところが抜けないでいる。
目指す場所が『平凡』ならば、なおさら闘志が湧かない。
そしてあの押しの強い連中だ。
簡単に自分の考えを変えられてしまう予感がする。
「じゃあさ、麻実也。……アタシとつき合わない? 彼氏彼女の関係になったら、もう誰も邪魔はできないよ?」
「ん〜〜……深雪とつき合うのか……」
「不満?」
「いや、そんなことは全然無い」
むしろ深雪は可愛い部類に入る。
気心知れた仲だし、変に身構えなくてもいい。
「だけど自分の将来を決められないから深雪とつき合いましたっていうのも、深雪に失礼かな、と。なにより僕が情けない」
「意外と面倒くさいのね、麻実也ってば」
「深雪とつき合うなら、僕の方から告白するよ」
「それ待ってたら、来世になるんじゃない?」
深雪はケラケラと笑った。




