コント『異世界から転生』その10
「最後はアタシだね」
ということで、深雪の番が回ってきた。
「まずはじめにアタシと麻実也は小学校の頃からご近所さんの幼馴染。クラスが違うことも多かったけど町内会も一緒だったし、まさか高校まで同じとは……ってくらいに付き合いは長いの」
まさに腐れ縁というやつだ。
「それどころか前世でも関係があったなんて、アタシとしてもちょっとビックリな感じよね」
僕としてもまったく同感だ。
「アタシはシュメリング王国ってところでアカデミーの教授もつとめる、いわゆる大魔法使いだったのよ。その助手兼弟子が麻実也だったって訳」
「おぉ、魔法使いかいな」
「いよいよ異世界っぽくなってきましたね」
「深雪さんはその世界でも女性でしたの?」
姫乃木さんの質問に深雪はうなずく。
「といっても前世の麻実也はローティーンの少年。アタシの方はいよいよ大台の二十九歳。ちょっとビミョーなお年頃だったわ」
姫乃木さんの眼差しが、鋭く光った。
「わざわざ年齢まで告白したということは、その年になにかあったのですね?」
うなずく深雪の頬が赤い。
「魔法植物の採取のため、森の奥深くへ冒険したとき、まだ幼さの残る麻実也……当時の名前はルカね……を、ゴッツァンでした! しちゃったの……」
「珍しい展開ですね、お館さまがロクでなしじゃないとは」
「これは希少なケースぞい」
槇原くん、前世に引きずられるのは仕方ないけど、言葉が完全に番長弁だぞ。
つーか田中くん、君は本当に僕のことを変質者かなにかと信じてるだろ。
みんな前世の記憶に引きずられ過ぎだ。
現世の僕を見てくれよ。
品行方正、人畜無害。
平々凡々なこの僕を。
「でもね、研究バカだったアタシに代わって、麻実也は陰謀や悪だくみを使ってライバルたちの足を引っ張ってくれたんだよ?」
「やはり兄者、そうこなくっちゃ!」
「ある教授には女をあてがい、ある教授は酒に溺れさせ、ある博士なんかは博打を教えて借金まみれにしてくれたわ」
「そして教授の名前にはひとつも傷がつかない、と。陰謀の基本ですわね」
「そうなの、でも最後には悪事が露見して、アタシともども王国を追放」
その話は聞いてなかったな。
「でもアタシったら大魔法使いだから、王国に呪いをかけて出て来ちゃった、テヘ♪」
「意外と酷いやつだな、深雪も」
「なによー、麻実也だってアタシの魔法陣つかってモンスターを召喚して、街をメチャクチャにしたじゃない!」
「やっぱりロクでなしだったのぅ」
「安定の結末でしたわね」
「やはりそうでなくては、お館さまらしくありません」
いやいや、コラコラ。そこで腑に落ちたという顔をしない。
っつーか本当に前世の僕、ロクでもないことばかりしてるなぁ。
「つかぬことをおうかがいいたしますが、深雪さん」
「はい、なんでしょうか? 姫乃木さん」
「お兄さま……と申しますか深雪さんのダーリンであるルカ少年。閨の技術は如何ばかりでしたでしょう?」
吹きかけた。
危うくドリンクを吹き出しそうになった。
そりゃあ確かに、姫乃木さんの代の僕は床上手だったかもしれないけど、訊きたいとこそこかよ!
「……姫乃木さん?」
「なんでしょうか、深雪さん」
「如何なるジゴロ、女殺し、東洋のロメオといえども、初めてはあるものです。お察しください」
「なるほど、得心いたしました」
コラそこの女ふたり。
哀れむ眼差しで僕を見るな!
っつーか男ふたり!
君たちだってまだ女の子とそういう体験してないだろ!
「兄者、オレ、前世じゃ女はとっかえひっかえ」
「ジイめも伊達に年は食っておりませぬ」
実体験どころか前世の記憶すら無い僕が、前世の記憶だけで経験済みなだけの連中に蔑みの目を向けられるなんて納得いかないぞ!
責任者はどこだ、訴えてやる!




