コント『異世界から転生』その9
男性陣二人の自己紹介が終わった。
姫乃木さんと深雪はどちらが先に自己紹介をするか目と目で探り合っている。
「そちらからどうぞ」
と、深雪が姫乃木さんに譲った。
「それでは失礼しまして。わたくしはオデオン王国の王女ローラというのが前世でした」
王女、すなわちお姫さまというところで、一同「おぉ……」とため息をつく。
「そして麻実也さんは第一王子という身分。女性と見ればすぐに口説きにかかるイケメンの王子さまでした」
「なんだか苦労しそうなお話ね」
「おわかりいただけますか? お兄さまときたら妹のわたくしを口説いておきながら、他の女性に目移りばかり。もちろんそれだけモテる要素はあったのですが」
「ちょっと待った」
深雪が手を挙げる。
「いまの流れでちょっと引っかかった点がひとつ。……姫乃木さん、前世で麻実也と兄妹だったのよね?」
「はい」
「それで麻実也は姫乃木さんを口説いていたの?」
「なにしろお兄さまはイケメンな上に絶倫の床上手。すれ違っただけで野良猫さえ孕ませると謳われた方ですから。血のつながりなどなんのその、夜の帷が降りるたびにわたくしを口説きに訪れたものです」
「麻実也、あんた前世でなにやってんのよ?」
誤解だ深雪。前世でなにかやらかしてるのは、今に始まったことでは無かろうて。
「しかしそうなると、お館さまの最期というものをうかがいたくなりますな」
田中くんが言うが、そういえばこの王子さまの最期は聞いていなかったことを思い出す。
「聞きたいですか? 知りたいですか? よくぞ訊いてくださいました」
あ、なんだか嫌な予感がする。
義兄弟の悪党、槇原くんなどはすでに身構えていたりする。
「お兄さまの最期はですねぇ……」
底冷えのする雰囲気が、にわかに立ち込めた。
姫乃木さんがポーチの中をまさぐっている。
布巾に巻かれた出刃包丁が転がり出た。
「お兄さまの最期は、人妻の元へ口説きに赴き、亭主に亡き者にされたのです」
「なぁんだぁ、てっきりローラ姫に刺されたと思ったよ」
深雪が盛大にため息をついた。
深雪だけではない、その場にいた者すべてが緊張感から解き放たれたのだ。
しかし姫乃木さんは続ける。
「その人妻というのは、わたくしの妹なのですが」
「やっぱり麻実也サイテー」
「倫理道徳を乗り越えた色魔っぷり、もはや脱帽の領域ですな」
「まったくじゃい兄者。兄者には濡れ場より荒っぽいことが向いとんじゃ。女もほどほどにな」
「槇原さま、槇原さまのときにはお兄さま、女性にはモテていたのですか?」
「おう、群がる女どもをちぎっては投げちぎっては投げ。床の中でもお床……いや、男の中の男だったぞい」
「結局麻実也の過去って、ロクでもないものばっかりだったのね?」
「そういう深雪さまの前世、お館さまとどのようなものだったのでしょう?」
次回、深雪編!




