コント『異世界から転生』その8
そして次の自己紹介は柔道マン槇原くん。
さきほどの田中くんの例があるので、僕はすでに精神的に身構えている。
「佐藤くんと俺は前世で義兄弟の契りを交わしておってな。身分としては渡世人のようなもの、まあ領主さまと執事どんという訳にはいかんな」
身分としては褒められたものではないけれど、導入部としては悪くない。
「俺は無手のグラップラー。取っ組み合いの専門家、兄者は槍の名手として聞こえておった」
「へぇ、水滸伝や三国志みたいな話だねぇ」
現世の麻実也からは想像すらつかないけど、と深雪は言う。
そういう感想は僕の前世がロリコンだの女ったらしだのという時点で述べてもらいたかったものだ。
「水滸伝や三国志といえば聞こえはいいんだが、武侠なんてものは腕っぷしだけのヤクザ者よ。兄者と出会った武術大会なんてのも、その実態は腕力が取り柄の悪党同士で傷つけ合い殺し合ってくれって代物なのさ」
「うわ、ヒッドいなぁその主催者」
「無理も無いさ、大会参加者のほとんどが、官憲も手に負えない悪党ばかり。そんな連中で勝ち抜き戦をしてな、決勝に残ったのが俺と兄者ってことよ」
「やるじゃない、麻実也」
「……ふぅ、お兄さまにそのような野蛮は似合わないのに」
深雪と姫乃木さんの意見は、まったく正反対だった。
「しかしのぉ、ヤル話はこの先じゃぞい。決勝戦の兄者は目潰しに塩を放ってきたり俺の足を止めるために釘を撒いたりと、全力投球してくれたんじゃい」
「うわ、麻実也サイテー……」
「というか槇原さん。何故そのように瞳を輝かせるのですか? 反則技のオンパレードじゃないですか」
いやいや、と槇原くんは首を振る。
「真剣勝負っちゅうのは、こういうモンですわ。っつーか、俺と同じ方向を見ることのできる男。俺の先を行く男というのを初めて見つけた気分になれてな。それから兄者にホレ込んだのよ」
「悪童兄弟の結成ね」
「チーム名は異世界バッドボーイズかしら?」
「アブノーマル・クレージーなどはいかがでしょう?」
田中くんはどうしても僕を変態にしたいようだ。
「それから二人で名ばかりの冒険者としてコンビを組んで、悪事の限りをつくしたのよ。俺が金持ちの子供を拐って、兄者が救出の依頼を受けたりな」
「訂正するわ。麻実也だけじゃなくて槇原くんもサイテー」
「その意見に一票入れますわ」
「ゴブリンの亡骸をギルドに持って行けば金になると聞いたら、ゴブリンの村を焼き討ちにして根絶やしにしたり」
「焼き討ちにしたら亡骸を持って帰れないじゃない」
「他の冒険者に稼がせないためさ」
「非道にも程があるわね」
「まあ、やり過ぎたおかげで兄者は捕まり、火あぶりに処せられたんじゃがな」
「お兄さま、火あぶりがお好きでしたのね?」
いえ、姫乃木さん。それは誤解です。
「それを救出できんかったのが俺の心残りってやつよ」
「義に厚いイイ話、とは言い切れないわね……」
「だがそのときに残した兄者の言葉でな、俺は来世もこの男を兄貴と慕うと決めたんじゃ」
「まあ、どのような言葉ですの?」
「火をくべる官吏どもを睨みつけてな、『我が身はここに朽ちるとも、貴様らの子々孫々七代に渡ってまで呪い続けてやる!』とな」
「そこにシビれるって、槇原くんどうかしてるよ」
僕も深雪と同じ意見だ。




