コント『異世界から転生』その7
腕を組んで離してくれない姫乃木さんと、もつれるようにして駅前へ。
集合時間には間に合った。
深雪に槇原くん、田中くんたちが揃っている。
「やあ、お待たせ」
僕が手を挙げると、みんなの視線が姫乃木さんに集中した。
「おや、領主さま。ロリから年増へ趣旨替えですかな?」
いらんこと言うなや、田中。
「おう、兄貴。令和日本でも女コマして売り飛ばすルートを開拓しとるとは、手が早いのぉ」
だまれ、デカブツ。
二人して前世の記憶そのままなコメント垂れ流しやがって。
いまが令和日本だということを忘れているようだな。
「……………………」
っつーか、深雪がノーコメントだ。
それも、喉笛食いちぎりそうな目で僕を見ている。
「と、とりあえずみんな。落ち着かないから店に入ろうか」
慌ててみんなを導くが、考えてもみれば深雪も白いブラウスにデニムのパンツ。
スタジャンを羽織っているところは違うが、姫乃木さんとよく似たスタイルだ。
そして深雪の場合、男の子のようである。
つまり姫乃木さんと似ていながら、明白な差が出ていたのだ。
口を尖らせて不機嫌も露わな深雪が最後尾。
僕たちは注文したドリンクを片手に二階へ上がる。
レジでの注文も少し待たされたが、二階席も混み合っていた。
それでも僕たちはなんとか五人分の席を確保する。
のんきにドリンクを口にしようとしたら、となりに座った深雪にヒジで突っつかれる。
「ほら、主役。挨拶なさいよ」
「え? あ、挨拶? あ……本日はみなさん。お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます」
ほんとうなら立ち上がっての挨拶だろうけど、深雪の反対側では姫乃木さんが相変わらず腕にからみついていて、それができなかった。
「今日は僕と前世で関わりのあったみなさんの集まりです。どうぞ親睦を深め合ってください」
「それでしたらお兄さま、みなさんそれぞれお兄さまと前世でどのような関係だったか、自己紹介していただくのがよろしいかと」
姫乃木さんのナイスなアイディアだ。
じゃあ田中くん、君からどうぞ。
「中学で麻実也と同じクラスだった田中健介です」
前世の割に、田中くんはまともな出だしだった。
「前世では麻実也は貴族というか領主。僕はそれに仕える執事でした。前世の名前はセバスチャンと申します」
語尾の辺りがセバスチャンになってきた。
「とかくお館さまときたら女好きで、しかもロリ専門の鬼畜外道を極めた方。領内に初潮前の美少女有りと耳にすれば、仕事をほったらかしに馬を走らせかどわかして来るという絶倫ぶり」
ちょ、ちょちょちょ、ちょっとまてセバスチャン。
セバスチャン田中。
いきなりお前トバしすぎだろ?
「おかげで領民の不評を買い、年貢倍増のお触れ書きを期に一揆が勃発。屋敷ともども焼き討ちに逢うという顛末にございました」
「お兄さまの女性好きって、変わらないのね」
「姫乃木さん、その言葉はいまの僕にはツラすぎます」




