コント『異世界から転生』その6
そして日曜日。
姫乃木さんは「集合場所を間違えるといけないから」という理由で僕がエスコート。
残りの田中くん、槇原くんは深雪が案内するという手筈。
僕はいつも通学路として利用する森林公園で、姫乃木さんと待ち合わせ。
するといつもの仕事用なスーツではなく、とてもカジュアルな姫乃木さんがやってきた。
白いブラウスにデニムのパンツ。軽くジャケットなど羽織って、スニーカーを履いて。
そんなラフなスタイルなのに素地が良いのだろう。
とても格好良く見えてしまう。
「お待たせしまして、お兄さま?」
「い、いえ。全然です。……はい」
「どうされましたの、お兄さま? 少し固くなってらっしゃるようですけど」
普段着の姫乃木さんが、とても素敵だから……などとは言えない。
「い、いや。姫乃木さんの私服姿なんて、はじめてだから」
汗がダラダラ流れて、なんだかしどろもどろ。
そんな僕に悪戯っ子のような視線を向けて、美人があどけなく微笑む。
「おかしなお兄さま。女性をその気にさせるときは、いつも堂々としてらっしゃったクセに」
いえ、いまは現世の麻実也ですから。
前世のお兄さまではありませんので。
ただのつまらないヘタレです。
そうであらせて下さい、純情高校生なんですから。
えいっと言って、姫乃木さんは僕の腕にしがみつく。
本当に子供のようだ。
それでいて、放つコロンの香りは大人っぽい。
そしてなによりも、腕に密着する柔らかな感触。
いけない! 目を覚ますな、僕のコブラよ!
純情高校生であれ、大人の階段にゃまだ早すぎる!
少年が男になりたいという悲願を、熱い涙で断ち切って、どうにかコブラを落ち着ける。
「ひ、姫乃木さん。あまり密着しすぎると歩きにくいですよ?」
「ローラとお呼びくださいませ、お兄さま」
「いや、ここは現世。令和日本ですから」
「わたくしめをローラとお呼びいただければ、お兄さまのこともお望みの通りに呼びますわ」
「?」
「身分ばかり高くとも子作り本能に支配された賎しいブタめ、と」
「望んでませんから! そんなの僕、望んでません!」
「お気に召しませんでしたかしら? それでは腰を使うしか能のない盛りのついた犬ッコロめ! ではいかがでしょう?」
「どんなんだったのさ、前世の僕?」
「くわしく御説明いたしましょうか?」
「いや、結構です。僕が傷つきそうな予感しかしませんから」
おそらく前世の僕というヤツは、姫乃木さんが呼ぼうとしたそのままの僕なのだろう。
それがあまりにもありありと想像できてしまって、みんなと会う前から気持ちがシナビてしまった。
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