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寿さんの雑記帳  作者: 寿
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コント『異世界から転生』その4

深雪と二人で並んで帰ってくると、家の前に人影が。



「あれ、田中くんじゃない?」


先に気づいたのは深雪。

夕映えの中の人物を、目を凝らして見れば確かに田中くんだ。

中学のときに同じクラスで仲がよかったけど、卒業してからはそれっきり。



「やあ、田中くん。久しぶりだね」



僕は油断していた。

油断しきっていた。


そうだ、もうこれ以上は無いだろうと、勝手に思い込んでいたのだ。

だけど田中くんは言った。


「領主さま! お懐かしゅうございます!」


来た……。

また来たよ。

しかし田中くんは僕の憂鬱などおかまいなし。

僕にすがりついてくる。



「永らくの不沙汰、真に申し訳ございませんでした! このセバスチャン、ようやく今生にて記憶を取り戻してございます!」


やかましいよ、田中。

うるせぇよ、田中。

お前は田中であってセバスチャンじゃねーだろ。

で、今度はどんな設定なのよ?

するとセバスチャン・田中は住宅街の道端にも関わらず、号泣し始めた。




「無念でございましたでしょう! 口惜しいことでございましたでしょう! 領主さまからの限りないご寵愛を受けておきながら、あの百姓ども!」



コラコラ、職業差別するような言葉はイカンだろ。

で、その農民たちに、僕はどんな目に逢わされたの?



「御屋敷は焼かれ財産はすべて持ち出され、御家族もすべて鋤や鍬で打ちのめされ……」



うん、やっぱり悲惨な最期だったみたいだね、前世の僕。



「四公六民の年貢を、少々値上げしただけというのに。領主さまからの御恩も忘れて一揆などとは……不忠不義にもほどがあります!」

「で、どのくらいに値上げしたの?」

「九公一民」

「一揆が起きるに決まってんだろ!」



バカじゃないだろうか、何やってんのさ、領主さま。



「しかし百姓と菜種油は絞れば絞るほど出てくると申されたのは、他ならぬ領主さまで」

「なるほどね、で? 君は一枚噛んでないの?」

「入れ知恵したのはこのセバスチャンにございます」

打首じゃーーっ! たれやある! この者を打首にいたせーーっ!



「もちろん中央への上納金は『不作』を理由にチョッパねて、領主さまは私腹を肥やしウッハウハの贅沢三昧。お妾さまも一人二人に飽き足らず、西に美少女あらば強引な借金を背負わせてその肩代わりにかどわかし、東に美幼女あらば家に難癖をつけてさらってくる始末」



ちょっと待て。

少女とか幼女とか、気になる単語が出現してるんだけど。



「領主さまは現世で言うところのロリコンでございましたゆえ」



最悪な展開ですなぁ。



「年頃の娘では不能でしたゆえ」



あ、すんません。もう許してください。


「そのせいか娘を奪われた遺族の怒りがもっとも凄まじく、犬ッコロのようにぶたれる領主さまがいかに懇願しようとも、鼻は潰され馬糞を口にねじこまれ、豚のモノをぶち込まれと散々な慰み物とされ、ついには生きたまま火あぶりに処せられる始末」


そこまでいったら、もう人間として生きてゆく気力が失せるだろうよ。

ゲンナリしている僕を押しのけるようにして、ここで深雪が前に出た。



「で? セバスチャン・田中くんは、この令和ニッポンに記憶がよみがえって、麻実也領主とどうしたいの?」

「もちろんいま一度領主さまにお仕えして……」

「言ったでしょ? 令和ニッポンって。もう封建社会なんて世界中どこを探したって……あるにはあるけどさ」



とはいえ、知事選やら市議選に立候補したところで、セバスチャンの望む支配ができないのは確かだ。



「まあ、前世の記憶がよみがえったのは、田中くんだけじゃないんだ。一度みんなで話し合いをしようかって思ってるんだけど。どうだい?」



田中くんは抱きついて喜んでくれたけれど、僕からすれば厄介が増えただけ。

憂鬱が消え去ることは無かったのだ。


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