コント『異世界から転生』その2
散々な出来事から、ようやく学校。
自分の教室に入りいつもの朝を迎え、自分の席に着く。
「オーーッス」
「おはよう」
「今日はずいぶんゆっくりだったな」
「いつもの通学路でアクシデントがあってね」
とりとめのない会話で、いつもの朝が始まる。
そんな中……。
「おっはよ♪」
となりのクラスから、幼馴染の深雪が目の前に現れた。
「あぁ、おはよ」
こいつは家も近所で同じ町内会。
それでいて小学校低学年からの腐れ縁で、なにかとからんでくる奴だ。
「……………………」
その深雪が、僕の顔をジッと見詰めてくる。
「なんだよ、僕の顔になにか付いてるのかよ?」
「ん〜〜目と鼻と口?」
「なぜに疑問形?」
「ねねね、そんなことよりもさ。信じる? 前世の記憶がよみがえるとかいう話?」
「えらい唐突だなぁ」
ふつうに受け答えしてみせたけど、内心心臓はドッキリ。
なにしろ今朝の体験が体験だったからだ。
「だいたいにしてさ、前世とかいう時代は大半の人が農民だったんだ。第一次産業が主流だったんだから、みんな前世は農民だったはずだろ?」
「庶民が転生できるだけの業を持ってると思う?」
なんだ? その『現世で生きている人はすべて選ばれた民』的な選民思想は?
「逆に訊くけど、現世で生きている人はすべてその業とやらを背負ってるって言うの?」
「……………………」
いつもは突っかかってくる深雪が、ちょっと視線を落としていた。
「どうしたのさ、深雪? お前そんなキャラじゃなかったよな?」
「も、いい」
深雪は背中を向けた。
「背負ってる業があったって、いいじゃん……」
なんだか消え入りそうな声。
なにかあったのか? 本当に……。
そのまま深雪は自分の教室に帰っていった。
だけど柔道部の巨漢、槇原くんが入れ違いに入ってきた。
「おう、佐藤くん! 佐藤麻実也くんは来とったか!」
そちこちで朝の会話を楽しんでいる連中を押しのけて、槇原くんが近づいてきた。
「おう、佐藤くん! 魂の兄弟よ!」
デカイ体で僕に抱きついてくる。
「な、なんだよ急に!」
僕は普段槇原くんとはあまり接触が無い。
「思い出したんだよ! 今朝、唐突に! 俺と佐藤くんは前世で義兄弟の盃を交わした、魂の兄弟だったんだな!」
また前世の話かよ?
「覚えとらんか? 王都の武芸会。決勝戦は俺と君とで覇を競い合ったろう!」
柔道マンと闘った記憶は無いんですけど?
「懐かしいな、俺は取っ組み合い主体のグラップラー。君は槍の名手」
それで闘うって、僕、ものすごく卑怯者じゃない?
「俺が突っかかろうとしては槍にはばまれ、なかなか決着がつかなんだったなぁ!」
いえ、まったく身に覚えの無い話なんですけど。
「リーチで優位にありながら、君は地面に釘を撒くわ塩を投げつけて目潰ししてくるわで、キビシイ闘いだったぞ!」
酷いにも程があるな、前世の自分。
「だけどおれはあの一戦でシビれてな。世の中にはこんなにガチで闘ってくるやつがいるのかと、俺から盃をたのんだのよな!」
卑怯なだけじゃん。
あんた何にシビれてるのさ?
どうかしてるよ、そのセンス。
「それからは二人で組んで、冒険者として暮らしたなぁ」
ロクでなしとネジの緩んだ男の暮らしか……興味が湧かないね。
「痛快だったのはゴブリンの村大虐殺じゃい!」
ちょっ……待て……。
大虐殺ってなにさそれ!
「老いも若きも男も女も、ゴブリンと見りゃ赤ん坊にいたるまで、成敗成敗また成敗!」
赤ん坊まで手にかけた記憶で、なぜに君はニヤリと笑うんだい?
「ゴブリンの村を血に染めて、火をかけたとき君はニヤリと笑ったな。『これでしばらく遊んで暮らせるぜ』と」
金かっ⁉ 金のためにやったのか僕⁉ サイテーだな、おい!
「また今生でも盃を交わして、ひと暴れしてやろうかのぅ、佐藤くん!」
「ちょっと待って! 僕と槇原くんはそれほど仲良くないのに、盃だの義兄弟だの……困るよ!」
「なんじゃい? もっと凶悪な兄弟でも見つけたんかい?」
「だから! 僕は前世の記憶なんて無いし、そんな極悪非道なマネをした覚えもないんだから! だいたいどうしたのさ? 急前世の記憶だなんて……」
「いや、今生でこそ兄弟を助けてやりたいと思ってな……」
助ける? 僕を? 頭の悪い大男でしかないと思ってたけど、なかなかいいとこあるんじゃないの、彼。
「前世では悪の限りを尽してハリツケ火あぶりの極刑に処せられた兄弟を助け出すことができなんだったからのぅ。今生でこそ借りを返さないとな……」
どんな最期だったんだよ、前世の僕?
「そりゃもう燃え盛る炎の中で役人どもを睨みつけ、『貴様らの子々孫々七代に渡ってまで呪い続けてやる』とな」
あ、すみません。聞きたくなかったです。
「『生まれ代わりし暁には、なおも非道悪道に邁進せむ』とものたまっとったわい」
だから聞きたくなかったっての。
不定期更新らしく明日はお休み。明後日をお楽しみに。




