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寿さんの雑記帳  作者: 寿
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コント『異世界から転生』

ということで、雑記帳らしくあれこれと書いていきます。

ちょっと不定期更新になるかもしれませんがよしなに。

朝だ。

行ってきますと言って家を出る。

いつもの通学路。

僕はこの春から高校二年生。


とはいえすでに一年間通った通学路に新鮮味は無く、いつもの朝だった。

なんの代わり映えも無い朝だった。



池のある森林公園を通り、いつもすれ違う美人のOLさんを横目で盗み見て、ちょっと残り香を胸一杯に吸い込んでいると、いつもと違う出来事が。



「お兄さま! あなたは私のお兄さまではありませんか!」


美人のお姉さんが僕にすがりついてきた。

あまりの出来事に、僕も対応が追いつかない。

それをいいことに彼女は、一方的にまくしたててくる。



「覚えてらっしゃらないのですか、お兄さま! 前世の異世界オデオン王国において第一王子でらしたお兄さまと、婚姻の契りまで果たしたと申しますのに!」



え? なにそれ、ちょっと待って。お兄さまなのに婚姻の契りって、いいの? それ?



「わたくしですわ! 妹で第一王女のローラですわ!

もうお忘れになってしまって、お兄さま……。そうですわね、お兄さまは第一王子の身であり、なおかつイケメン。そのうえ絶倫の床上手と国民から謳われたお方……。ローラのことなど、もうお忘れなのでしょう……」



一方的にまくしたてられてるだけなんだけど、身に覚えのない設定が並べられたんだけど、なんだかムカつく設定だよね、それ。



「なにしろお兄さまときたら、通りすがりのノラネコでさえすれ違いざまに孕ませてしまうようなお方。この現世うつしよにおいても、もうすでに認めたくないお子の五人や十人逢われておられるのでしょう……」



ヨヨヨ……とお姉さんは泣き崩れるけれど、えらい言われ方してる僕の方が泣きたい気分だよ。



「とにかくお兄さま、今生この場でお会いしたのも百年目! ローラはもう、お兄さまを離しませんからね!」


「いや、僕これから学校ですから」


「学校への申し開きですね! わかりました、このローラがなんとでもいたしましょう!」


「具体的にはどのように?」


「私たちの婚姻を認めてくださらないのでしたら、この場で喉を突いて死にます!」


って、お弁当の箸でなにやる気さ、あんた!


……とにかくだ。前世がどうのこうのと言い出している辺り、きっと気の毒な女性なのだろう。

これ以上関わりにはなりたくないものだ。

とっとと逃げ出すのが吉だろう。



「……お兄さま、左の脇の下にホクロが三つ。三角形にならんでますね?」


「っ!?」


なぜそれを! 脇の下だからそんなに目立たなくて、知る人ぞ知る僕の秘密なのに!



「その脇の下の三角形のホクロこそ、王家の証。そのホクロを持つ者はテルー王家のさだめより逃れること能わず!」



お姉さん、ジャケットを脱ぎ捨ててブラウスの袖を捲り上げて、桜吹雪を見せつけるお奉行さまみたいに、腕に並んだ三つのホクロをさらしている。

僕が悪人ならば「はは〜〜っ、参りましたお奉行さま」と平伏すところだけど、残念ながら僕は気の毒な女性にからまれて遅刻の危機にある学生でしかない。

「じゃあ僕、遅刻するから」と歩き出す。



「お待ちくださいお兄さま! やっぱりいるのですね! ローラに会わせられない女がいるのですね!

なにしろお兄さまときたら、群がる女どもを片っ端からちぎっては投げちぎっては投げ! 無体の限りを尽くしてきたのですから!」


彼女の言う前世の僕が目の前にいたら、絶対に張り倒してやる。


お前のせいで僕はいま、こんな悲劇に見舞われているんだぞ、と。


つーか前世の僕、どんなんだったのさ?


っていうか、お姉さん。


僕の腰にタックル同然にしがみついてズルズル引きずられるのはやめてもらえないだろうか?



「仕方ないですね、お姉さん。僕には前世の記憶が無いものですから、対処のしようがありません。とはいえ脇の下のホクロの秘密を知っている以上、お姉さんがウソを言っているとも考えられません今度時間を取りますから、その時にゆっくりと話し合いましょう」



僕が電話番号を教えると、お姉さんも落ち着きを取り戻した。



「いつがよろしいでしょうか、お兄さま」



お姉さんも名刺をくれた。

生命保険会社の経理部らしい。

名前は姫乃樹愛と書かれていた。

電話番号も記されている。



「まずは電話からにしようか。僕の方が先に学校が終わるだろうから、姫乃樹さんから電話をくれるかい?」


「仕事が片付き次第、早急に電話させていただきますね」



こうして僕は、考えられないような受難から解放された。


それにしても僕が、前世で王子さまでイケメンだったとは……。

にわかには信じ難いものがある。


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