惑星間戦争に巻き込まれたけれど、僻地でノンキに輸送船狩りをしています第12話『姉妹艦とその艦長』
ムシル泊地海域。ここから亜空間に潜行して、カップ湾沖合で通常空間へ浮上。
大気圏突入などの危険なイベントもなく、鉛色の空とどんよりとした波に迎えられる。
通常船舶と同じように泊地へ入るので、事前連絡の無線を規定通りに入れる。
「ムシル泊地より返信。発、ジョー・シドウ司令官。サプライズがあるから楽しみにしとけ、だそうです」
はて? サプライズ?
心当たりある? という視線を乙姫に向けてみた。
乙姫も「はて?」という具合に首をかしげている。
とりあえず潜水艦乙姫は二番ドックに入ることを指示されていた。
が、その二番ドックが近づいてくると、乙姫だけでなく乗組員たちの瞳が輝きはじめた。
「……あれは?」
僕のバイザーにも写りはじめた。
一番ドックにも潜水艦が停泊していたのだ。
しかも、船体が乙姫によく似ている。
「潜水艦桜姫です、麻実也艦長! 乙姫型二番艦で、私の妹です!」
潜水艦は海の忍者。
その行動は隠密機密であり、例え姉妹艦であってもお互いの行動は知らされていないそうだ。
しかも機密艦の悲しさ。
例えどこかの海域で撃沈されてもそれは誰かに知らされることがなく、弔うことさえ許されないのだそうだ。
故にお互いの無事を確認すると、潜水艦同士姉妹艦同士、ものすごくテンションが上がるらしい。
乙姫は艦内放送をかける。
「二番ドックに姉妹艦桜姫を認む。手空き総員、上甲板へ」
その放送がかかるや、乗組員たちが現れて発令所のタラップを登り出した。
もちろん艦底寝室からタラップを登ってくる者もいた。
発令所は乙姫そっくりの女の子たちでみっしりとなる。
その騒ぎも落ち着いて、入港ラッパ。
ヘルメットのバイザーには、甲板に並んだ乗組員たちが両手を振って大騒ぎしているのが映っていた。
それは潜水艦桜姫でも同じようだった。
さまざまなな色合いのセーラー服で、乙姫に向かって前甲板から手を振っていた。
が。
潜水艦桜姫の乗組員たちは、乙姫には似ていない。
乙姫がキッチリかっきりの優等生タイプなら、桜姫の乗組員たちはゆるふわな感じがする。
「そこはデザインを変えていて、個性を出しているんですよ♪」
乙姫が教えてくれた。
なるほど、キッチリかっきりの乙姫も重要だけど、『戦果上げるまで帰ってくんな』の潜水艦では、少しゆるいくらいなタイプも必要なのかもしれない。
ともあれ、入港完了。
乙姫とともに司令部へ行かなくてはならない。
外套の襟をきつく合わせて埠頭に降りると、潜水艦桜姫副長が出迎えてくれた。
「おかえりなさ〜〜い、お姉ちゃん♪」
「ただいま帰りました、ひさしですね桜姫♪」
「まずは再会のハグ〜〜♪」
桜姫が乙姫を抱きしめた。
というか桜姫の方が背が高い。
そして乙姫の顔が埋まるほど、ダイナミックな胸部装甲であった。
豊かな胸に顔を埋められた乙姫は、瞬間的に不機嫌な表情に見えたけど、僕の見間違いだろうか?
「そういえばお姉ちゃん、髪型変えたのですか〜〜?」
「そうですよ、桜姫。ウチの麻実也艦長の要望で、潜水艦乙姫は部署ごとに髪型を変えているんです!」
ふっふ〜〜ん♪ どうだすごいだろ、とばかりに乙姫は自慢顔。
「それはいいアイデアですね〜〜♪ サクラもそうしてみましょうかぁ」
「え? でも桜姫。貴女艦長不在なんじゃぁ……」
「お姉ちゃん同様、サクラも艦長スカウトに出ていたんですよぉ〜〜♪」
すると桜姫の陰から、黒髪の男の子が顔を出した。
黒髪だけではない、肌も褐色だ。
しかも少年ポニーテールときたもんだ。
線が細くて華奢な身体つき。
細面な顔立ちに勝ち気な眼差し。
だけど照れくさそうに僕を見上げている。
「オイラ、ライゾー……。桜姫の、艦長」
「僕は麻実也、伊藤麻実也。潜水艦乙姫の艦長なんだ。よろしくね、ライゾー艦長」
敵意が無いことを笑顔で示すと、ライゾーもニパッと笑って桜姫の陰から出てきた。
出てきたのはいいんだけれど……。
「あの、桜姫……」
「なんでしょうか、お姉ちゃん?」
「ムシル泊地は極寒の僻地。早春とはいえまだ外套を手放せない気温ですけど……」
「そうですねぇ〜〜一杯やりますかぁ?」
「いえ、そうではなくて。ライゾー艦長はなにゆえ半袖半ズボンの制服なんでしょうか?」
そう、桜姫艦長ライゾー少尉は略衣と呼ばれる開襟シャツ型の制服に、半ズボンの制服とソックス。
言わば南国用の制服なのだ。
「それは〜〜ライゾー艦長がとっても寒いところで生まれ育っているからですよ〜〜。艦内の空調やムシル泊地の気候になれたら、私たちと同じ服装になるかもしれませんね〜〜♪」
しかし、乙姫の姉妹艦だけでも驚きなのに、その姉妹艦まで艦長スカウトをしていたとは。
二重の驚き、サプライズである。
「ですがお姉ちゃん? サプライズはこれだけじゃないんですよ〜〜?」
桜姫はゆる〜く、ニヘラと笑う。
「これだけじゃない、ですか?」
「はい〜〜、さらなるサプライズはぁ、ジョー司令官から聞いてくださいね〜〜♪」




