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寿さんの雑記帳  作者: 寿
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お客さん、いかがですか? その2

たとえ正座をしても乙姫さん、背筋を伸ばしてキッチリしている。

「まずは状況を説明させていただきます」

「はい」

僕も丸くなっていた背筋を伸ばす。



「私たち惑星アルファは田舎の惑星でしたが、勤勉な星でした。その勤勉な国民を奴隷のごとく使役しようと帝国軍が攻めてきたのです」

それだけのために帝国軍が攻めてくるものだろうか? もしかしたら彼女の知識が偏っているのでは? そんな疑問が生じる。

「開戦初頭は我が軍の連戦連勝。創意工夫と努力の結果を見せつけていたのですが、さすがブルジョアな帝国軍。物量で押し返してきたのです」

なんだか悔しさと怒りがにじみ出ている。



見た目は真面目そうな女の子だけど、やっぱり次元潜水艦という兵器なんだろうな。敵憎しという感情が丸見えだ。

「そこで窮余の策として考えられたのが私、次元潜水艦乙姫です!」

「それはわかるんだけどさぁ、プラモデル組み上げたら艦長って、どういうこと?」

僕が訊くと乙姫さん、ビクッと身をふるわせて顔に脂汗をにじませた。



「は、はい。その件につきましては……天才技術者カナザワ博士が人間の欲望をエネルギーに変換するシステムを構築しまして、先ほども申しました通り、惑星地球の日本人男性がこのシステムに適正があると……」

スッゴイ目が泳いでる。明らかになにか隠してるね、こりゃ。

「それはさっき聞いたけど、惑星アルファの問題に地球人が干渉してもいいの?」

ビックン! ビックン! すっごい痙攣。もう泡を吹いて倒れるんじゃないかって勢いだ。

「そそそそのことに関しましては麻実也さまの志願と申しますか助太刀と申しますか、その辺りを期待するばかりで、でもでも俸給は出ますしボランティアではないことは保証しますので……」



「そりゃそうでしょ。自分に関係ない戦争に乗り出していく奴はいないんだから。僕が聞きたいのは、関係ない星の人間をつかまえて戦争してくださいっていうのは合法か?

ってこと」

「それほど事態は切迫してるんです!」

ウン、つまり非合法ってことだね?

「そうでなければプラモデルに偽装して建造費を浮かせて、なおかつ帝国軍の目を盗むように通販の商品として並んだりしません!」



つまり僕がキミを購入するところから罠だったと、こういうことか。

だけど、ここで断っても僕にいいことなんてひとつも無い。

また明日から早起きして、毎日毎日扱いの変わらない日々を送るだけ。

何年も、何十年も……。





「乙姫さん?」

「呼び捨てで、乙姫とお呼びください」

「じゃあ乙姫? キミは強いんだよね?」

「はい、麻実也さまが乗艦してくだされば……無敵になれます」



「僕にとってのメリットはある?」

「戦勝の暁には名誉市民として惑星アルファで受け入れ、生涯遊んで暮らせることをお約束します」

「それって可能性はどれくらい?」

「100%、この乙姫が保証します!」

「よし、乗ったぁっ!」

「あ、あ、あ、ありがとうございます! 麻実也さま!」




どうせ僕の人生は詰んでいる。

このままウチの会社でコキ使われていても、いいことなんかありゃしない。

だったらここは一発、勝てそうな目に賭けるしかないんだ。

少なくても自称画期的、自称最新鋭を引き当てたことは幸いだった。ここはこの幸運に乗っかって、思い切った判断をするのが最適解だろう。



「それでは麻実也さま、契約書にサインを。他の事務的な手続きは私がしておきますので」

「サインね、はいはい」

「はい、これをもちまして伊藤麻実也さまは、正式に惑星アルファ海軍所属次元潜水艦乙姫の艦長として就任しました♪ よろしくお願いしますね、艦長♪」

「こちらこそよろしく、乙姫」

それにしてもキレイな娘だ。艶をはなつ黒髪。まっすぐな眼差し。美少女って言葉をそのまま形にしたみたいだ。





思わず見惚れていると、「ンッンッ! エヘンエヘン!」窓の外から咳払い。

目を向けると、窓の外にボートが浮いていて、ヘルメットをかぶった乙姫そっくりな娘が急かせるような眼差しを向けてきた。

「あれ? 乙姫が二人、三人、四人?」

「えぇ、あの娘たちは潜水艦乙姫のサポートアンドロイド。簡単に言うと乗組員です。そして私が次元潜水艦乙姫の頭脳にしてオリジナルパーソンの艦長サポートアンドロイド。副長の乙姫です」

まあ、元祖乙姫ってことかな? それとモブ乙姫。正直言うと見分けがつかない。



「そこは区別ができるようにしておきますね。それより、乗組員たちが待ってますので。どうぞ内火艇にお乗りください」

アパートの二階、窓の手すりにロープでもやっているボート。すごく目立つのではなかろうか?

「ステルスを使ってますので、一般人には視認できません。それに見られたところでどうでしょう? この星では『気のせい』とか『目の錯覚』で終わらせるのでは?」

確かにそのとおり。僕は乗組員乙姫に手を引かれて、ボートに乗り移った。


まだ試作段階ですので、不細工は数々あるかもしれませんが、まだ少々続きます。

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