其の二十七『色情霊』
神八代祝人は再会していた。
久しぶりに中学時代の仲間が友人宅に集まっていた。
中には10年以上ぶりに会う人もいて、毛髪の薄さに時の流れを感じ、感慨深いものがあった。
ぬーんとしていて影の薄かった奴が結婚して二児の父になっていたり、モテモテだった奴が未だ独身でかれこれ3年は彼女もいないなど、人の人生はローティーンではわからないものだと彼は思った。
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『色情霊』
「私さ、なんか霊に犯されたことあるかも?」
深夜を周り怖い話になった。久しぶりに会ったとはいえ昼の12時に開始したプチ同窓会は話すネタが尽き、何故か心霊話で盛り上がっていた。
霊に犯されたという奇妙な体験をしたのは元女子バスケ部のクラスで一番可愛く、クラスで一番暴力的な女の子だった。
「フリーターの時に夜寝てたら金縛りにあったの。そしたら黒い影が部屋の入り口に立っていて、怖くて目を瞑ったんだよね。したら微かに体が重くなって、人よりも軽いんだけど重みを感じで、そしたらその霊、私のおっぱい揉みだしたの」
ほほう、それはまた興味深い。
「嫌だったけど体動かないし、されるがままになってたのね。したら今度はパンツの中に手を入れてきたの」
友人の1人が大切なことを確認した。
「それって、気持ち良かったの?」
誰1人笑う奴はいなかった。
「それがさぁ、ほんのり気持ちいいんだよね。ほんのり」
なるほど。
「で、ほんのり気持ち良いんだけど何となく気持ち悪かったのよ。霊にされてるのを抜きにしても、なんか嫌悪感があるっていうか。で、1時間ほど弄られてその日は終わったの」
その日は?
「それからしばらく同じ時間にそのエロ霊が私のところに来て私の体を触っていくの。で、ある日とうとう中に入って来たの」
友人の1人が大切なことを確認した。
「それって、気持ち良かったの?」
誰1人笑う奴はいなかった。
「いや、それはあんまり。けど、中に入ってるっていう感覚だけはあるの。で、終わった後で金縛りが解けた後妙に喪失感があって、あの頃少し鬱っぽかった」
俺は気になったことを聞いてみた。
「中で出された?」
周りは笑ったけど彼女だけは笑わなかった。
「うん。された。幽霊に、中で」
周りはまだ笑っていた。
「妊娠した?」
俺はあくまで真面目に聞いている。俺と彼女以外笑っている。
「うん。ある日に『あ、妊娠したっ』って頭の中で確信したの。体は何ともないんだけど」
「生理は?」
「ちゃんと来た」
「産まれたのはそれから何日後?」
お前さっきから何言ってんだ?とそろそろ周りが疑問に思い出して来た。
「2週間後。祝人、この話知ってるの?」
俺は聞いたことがある。色情霊のタチの悪いやつ。
「バイト中、突然『あ、今産まれた!』って感じて。その夜にまた金縛りにあって、また黒い影が部屋に立ってたの。子どもを抱いて」
その部屋にいた全員が沈黙した。もう誰も笑っていなかった。
「じゃあ、って行ってスって消えたんだけど、その日以来その幽霊は来なくなった。これって何だったの?」
彼女は俺に尋ねる。
「うん、まあ、そのまんまだよ。ただ、こういう場合その幽霊は知ってる人だけどね、絶対」
また部屋がシーンとなる。その空気に耐えられなくなった1人が
「そういや坂下ってお前のこと好きだったよな?坂下じゃねぇの?」
と、言った。昔から人の事を見下していて笑いを取るために誰かを陥れるような奴で俺は好きではなかった。
「やめろ」
学生時代ぬーんとしていた彼が起こったように一喝した。
「なぁ、それって何年前の話?」
ぬーんの彼が彼女に尋ねる。
「7年前」
ぬーんは両手で顔を覆った。
「坂下が自殺したのも7年前だよ」
俺らは誰1人坂下が死んだ事を知らなかった。付き合いのあったぬーんだけが知っている事実だった。
「この話もうやめよう」
俺はそうやって無理やり切り上げた。
翌々日、彼女から俺の携帯に電話があった。
「ねぇ、私あんな体験して大丈夫?」
「なんか、心当たり、あるの?」
心配なことは確かにあった。
「前付き合ってた彼氏がちょっと色々あって、結婚するには妊娠するしかないって頑張ってた時期があったんだけど一年経っても子どもできなかったの」
あぁ、そうなのか、やっぱり。
「色情霊に犯されると妊娠しづらいって聞いたことはあるよ。検査しても異常はないんだけど、何故が子どもが出来ないって」
受話器から聞こえる彼女の声はとても小さく弱々しかった。
「祝人、どうにか出来ない?」
できるか出来ないかで言えば出来るのだけど…。
「お前、俺の前で裸になれる?ていうか、俺とそういうことできる?」
「無理!」
食い気味で来た。
「俺はそうじゃないと無理なんだよ。説明するとめんどくさいからサクッというと、1度お前の中に入って霊の残り香を綺麗にしないとダメなんだけど、外からじゃ出来ないんだ。だからこの除霊方法はプライベート専用。だからお前には出来ない。ちなみに俺もお前とは無理だからな」
一応強がっておいた。
「代わりに俺の姉弟子紹介するからそこ行け。ちょっとお金かかるけど俺から言っておくから割引はしてくれると思う。それでも10万は覚悟しろよ?女の人だから安心だよ」
後日俺は姉弟子にお礼を言いに彼女のところへ行った。
「あの子可哀想だったよ。生き霊からの色情霊だった。生きてても死んでても憑くなんてよっぽどしつこかったんだねぇ」
俺は一応クラスメイトだったわけだし、死んだ者のことは悪く言わないでおこう。
「けどもう彼女がそいつの子を産んだことで上に行ったんだから、彼女とそいつの関係は全くなくなったわけだよ」
俺は疑問を質問した。
「その子どもって、何なんですか?これからどうなるんですか?」
姉弟子は嫌そうな顔をして教えてくれた。
「どうにもならないよ。元々魂がないものだから。ほら、前に一緒に見ただろう?灰色の炎。あれとは違うけど、でもあんなもんなんだよ。魂のないものが生まれるって」
いつか見たあの灰色の炎を思い出した。思い出すと気持ちが悪くなってすぐに頭の中から追い出す。
「それよりあんた、エッチしながら念入れするの?」
話題が怪しくなって来たのですぐさま俺は退散した。
余計なこと言わなきゃよかったと後悔した。
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数年後、彼女はめでたく新しい彼氏と結婚することになった。
来年その子は4歳になる。
死んだら色情霊になりたい!と思ってたけど、なんか気持ち悪くて嫌になりました。




