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令和のオタク女子大生が西暦2000年に転生したら借金少女だったので歌舞伎町で働きます  作者: 昼夜兼行で働け


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22ー1 ラーメンとイケメンと埋伏の毒

 キヨミヤをラーメンに誘った。

 歌舞伎町さくら通りから仲見世通りに少し入ったところ、昭和レトロな町中華。こじんまりとした4人がけテーブルに陣取った。


「キヨミヤもカナメくんも、好きな物、なんでも頼んでいいよ!」

「姐さん、ゴチになります」


 まあ、この店はラーメンが500円、チャーハンが550円。歌舞伎町とは思えない良心価格。大食いチャンピオンでもない限り、安心して奢れちゃうのよ。


「しかし……アオイから誘ってくるなんて、珍しいな。何が目的だ?」

「知っていることを教えてよ」

「スカウトの件か?」

「うん」

「それは安くないぞ……おばちゃーん、餃子と唐揚げ、あとビールね」


 おばちゃんが、瓶ビールとコップを持ってきた。話の流れでサービス、サービス。キヨミヤのコップに注いであげたら、グビッといっきに飲み干した。


「アオイも飲まないのか?」

「私はいいよ、飲めないから」


 空になったキヨミヤのコップにビールを注いだ。ついでにカナメくんのコップに注いであげる。


「いただきます」


 カナメくんも、いっきにコップを空にした。いい飲みっぷりだね。空いたコップにビールを注いであげよう。


「ふぅぅ……えーと、スカウトついては自分が説明していいっすか?」

「ああ」


 カナメくんに、キヨミヤはうなずいてみせる。


「アオイさんの店に出入りしているのは、ここ1年くらいで台頭してきたグループっすね」

「えっ、ウチの店にも?」

「そうですね……出入りはしていますよ」


 ウチの店の採用は私が面接している。スカウト経由の子は一人もいないはずだ……。


「なあ、アオイ。オレが正月に行った時に変な男がいただろ?」

「あっ……引き抜きなの?」


 キヨミヤに言われて思い出した。アレコレ聞かれたって、茶髪(ケイ)が言ってたっけ。


「そうですね。アオイさんの店だと引き抜きか、調査っすかね。同じグループが『ピンクシャドウ』にも出入りしてるっすが、こっちは女の子を入れるほうもやっているっすね」

「月収400万円って宣伝しただろ? その時だぜ。稼げる店だってことで、大量に押し込んできたんだ」


 そういえば一時期、体験入店が何人も来て忙しかったなぁ……。あれって、そういうことだったのか……うん? あれれ??


「その時ってセクシーパブどころか、水商売が初めてみたいな子が多かった気がするんだけど、それもスカウトなの?」

「それなんすが……」


 なんだろう。カナメ君は言いにくそうな感じだ。


「おまちどうさま~」


 頼んでいたラーメン3人前。チャーシュー、メンマ、ナルトが乗っている。昔ながらの中華そばだね。


「のびちまう前に食べようぜ」

「そだね、いただきま~す」


 追加で頼んだ餃子と唐揚げも出てきた。まずは、食べることに専念しよう。唐揚げおいしいよ、唐揚げ。


「なあ、アオイ……こいつ、カナメはスカウトやってたんだよ。そこそこ顔もいいだろ? それで素人の女に声をかけていたんだ」

「ホグホグ……それで詳しいのね……ホグホグ……って、カナメくんの仕業なの!?」


 ラーメンをすすっているカナメくんを、ニラみつけてみる。カナメくんが、慌てて首を横に振った。


「カナメがスカウトをしていたのは2年も前のことだ。アオイのところには絡んでないよ」

「そうなんだ……」

「そうっすよ、今の自分は真人間っす」


 いや、ホストも真人間じゃない気がする。私も人のことは言えないけど……。


「まあ、それは信じてあげるよ」

「あざーす」

「それはそれとして、なんで今このタイミングで女の子が続けて辞めていくの?」

「それなんすけど……新店ができるっすよ」

「新店?」

「すぐそこにできるらしい。見に行くか?」

「行く……行くよ!」


 慌ただしくラーメンをすすって会計。今日は私のおごりだからね。3人で2800円だった。いいなぁ、この店。


「えーと、こっちっす」


 カナメくんの先導で靖国通りを渡る。


「えっ、信号を渡るの?」

「そりゃ、そうだろ。歌舞伎町じゃないからな」

「あそこのビルっす」


 歌舞伎町とは靖国通りを挟んで反対側。モア街と呼ばれる新宿3丁目の雑居ビルに、新店がオープンするらしい。

「何階?」

「4階っす」

「看板は出てないよ?」

「ああ、でも、3月中にはオープンするはずだ。行ってみるか、4階?」

「うん……行こう」


 エレベータに乗って4階へ。エレベーターホールの床に養生シートが敷かれている。あきらかに工事中だ。


「誰もいないね?」

「音がしないっすね」

「今日は休工かな……」


 キヨミヤはドアの前まで行って、引き返してきた。


「中に誰かいる。出てくるみたいだ」

「えっ……見つかっちゃ、マズいよね?」

「姐さん、こっち、階段っす!」


 あわてて階段に身を隠す。ほどなくして、店のドアが開いた。男の声が聞こえてくる。女の声も聞こえてきた。エレベーター待ちのようだ。


「……辞めてくる子が少ないが?」

「ほかの子たちは15日で辞めるわ」


 女の声。聞き覚えがある。涼子じゃないかなぁ……?


「もう何人か引っ張りたかったがな」

「お局が舞い戻って引き締めてるのよ。これ以上は難しいわ」

「マジカルはダメか?」

「あっちはクソビッチが固めているから無理よ」


 エレベーターが到着した。乗り込んでいく気配がする。カナメくんが顔をだして確認する。


「大丈夫……みたいっすね」

「おい、アオイ……おまえ『クソビッチ』って言われてたぞ。知り合いか?」

「え〜と、『ピンクシャドウ』を辞めた子だよ。というか、なんで私がクソビッチなの?」

「嫉妬だろ」

「嫉妬?」

「店を一軒、任せられたんだ。色恋だと勘ぐるヤツもいるだろう?」

「姐さんみたいな変わり者は、滅多にいないっすからね……」

「アオイの能力は異常だからな」


 人を変人扱いしないでほしい。まだまだ21歳の乙女だよ。いや、乙女でもないか。ギャル? レディ? とにかく、まだまだ世間知らずの若造よ、私は。


「ところで、さっきいた女のほうなんだけど、けっこう前から『ピンクシャドウ』にいた子なのよ。去年のゴールデンウイークくらいから人を押し込んでいたっていうカナメくんの話とは矛盾するような……?」

「それなんすけど、何人か押し込んだら、あとは内部から勧誘していくんすよ。さっきの人も、そうして勧誘されて工作員になったんじゃないっすかね」

「なるほど……」


 これって埋伏の毒(まいふくのどく)? 三國志で読んだ気がする。21世紀に体験するとは……。


「アオイ、それよりも、さっきの会話だと、ほかにも辞める子がいるぞ」

「そうだよ、店長たちに伝えないと!」

「話の感じだと、ここのオープンは3月15日以降だろうだし、対策する時間はあるんじゃないか?」

「うわぁ、なんか考えなきゃ……」


 次から次へと問題が出てくる。こんな状況で美由ちゃんが卒業しちゃって、『ピンクシャドウ』やウチの会社は大丈夫なんだろうか? というか、なんでこんなに事件が起こるのよ……。私の週休二日制は、いつになったら実現するのよ〜っ!?


筆者からの、お願い


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