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令和のオタク女子大生が西暦2000年に転生したら借金少女だったので歌舞伎町で働きます  作者: 昼夜兼行で働け


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21ー4 雲行きがあやしい

 2月も後半戦。いつものように会社で事務仕事をこなしてから『マジカルシャドウ』に出勤したら、舞さんが来ていた。


「あれ、珍しいですね。舞さんがウチの店に来るなんて?」

「あぁ……よかった、ちょっと相談があったんだ」


 舞さんは『ピンクシャドウ』の最年長。いわゆる「お局様」だ。


「なんですか、相談って?」

「女の子が大量に辞めているのよ。中堅が、ごっそり」

「誰と誰が辞めたんですか?」

「涼子、貴子、マリア、美咲……」


 涼子と貴子は1年以上のキャリアがある。この二人が抜けたのは痛い。マリアと美咲は私が移籍する前後の入店だから、キャリア半年くらいだ。それでもう中堅扱いになっちゃうほうが問題かもしれない。


「優香、菜々子、紀香も今月いっぱいで辞めると言っている」


 何も言わずに店を辞める子が多い業界。2週間前でも言うだけマシという感じかな……。それにしても退店者が多い。


「おう、舞! 来てたのか?」

「絵里奈さ~ん!」


 絵里奈さんが出勤してきたんで、話を聞いてもらった。


「ふ〜ん……事情はわかった。それで、人数は足りているのか?」

「一応、人数は足りてる。でも、若い子ばかりで回すのは厳しくて……」


 それはわかる。お店って若い子ばかりじゃ回らないのよ……。だから私も『マジカルシャドウ』を立ち上げるとき、真っ先に絵里奈さんを口説いたのよ。絵里奈さんは副店長だけど、実質ほぼ店長。めっちゃ優秀だもんね。

 あれ……ということは『ピンクシャドウ』がグダグダなのって、絵里奈さんが抜けたせいなの? つまり、私が悪い?? 


 また私、なんかやっちゃいました?

 いや、ボケてる場合じゃない。対策を考えろ、私!


「アオイ、2週間ほど副店長を変わってくれ」

「……はい?」

「あっちの店が、うまく回るように交通整理をしてくる」


 交通整理……って、昭和の人は言い方が難しいね。


「業務改善なら、私が行きましょうか?」

「いや、私が行く。アオイはデキる子だけど、さすがに『ピンクシャドウ』を切り盛りするのは難しいと思う。ウチの店の倍の規模だからな」

「はい……」

「そんな顔するなよ……私たちの店『マジカルシャドウ』を頼むぞ、アオイ!」

「はい!」


 うわぁ……カッコいい、絵里奈さん。店長じゃなくてもホレちゃうね!


「すみません、絵里奈さん」

「舞が困ってるんだ。一肌脱ぐよ……あぁ、もう服は脱がないけどな。ハハハッ……」


 絵里奈さんが『ピンクシャドウ』に乗り込むことになりそうだ。う〜ん、私が副店長か……大丈夫かな? 


 それにしても、美由ちゃんの卒業まで残り10日ほど。『ピンクシャドウ』は大盛況……だと思っていたんだけど、ちょっと雲行きがアヤしくなってきたよ。


 ◆◇◆


 舞さんの相談を受けた翌日。朝イチで会社に行った。


「で、社長、そういうことになりまして……」

「報告を受けた。2週間の予定で絵里奈くんを『ピンクシャドウ』に派遣する。それで問題ない」


 さすがに社長への報告は届いていたよ。


「その間、私が店長のサポートをすることになります。まあ、キャストと兼任なので絵里奈さんのようにはいきませんけど……」

「アオイくんには負担をかける。すまんな」

「私も社員の端くれですから……」


 社長はデスクで腕組みをしている。考え込んでいる時の社長は、このポーズが多い。


「それにしても、こんなことになっていたとはなぁ……」

「もっと店のことも、きちんと話してくださいよ。兄弟なんだから」

「兄弟だから、難しいこともあるんだ」


 兄弟は仲良くしてほしいよ。曹丕と曹植じゃ、司馬懿に国を乗っ取られちゃうよ。そこは豊臣兄弟のように仲良く……って、こっちもダメじゃん。


「一度、ピンク店長と話し合いましょう」

「そうだな……」


 社長は腕組みをしたまま、斜め上を見つめている。考え事を邪魔しないように下がっていよう……。


 2階の倉庫こと通販部に逃げて来たら、中村くんが段ボールを片付けていた。


「どうしたの、中村くん?」

「あぁ、先輩。人が増えるんで机を置く場所を……」

「手伝うよ。これはどこ?」

「小物ラックのAです」

「ほーい」


 中村くんは整理・整頓が上手だ。商品ごとに仕分けされたラックもわかりやすい。


「そういえば、採用どうだったの?」

「ああ……学校の推薦してきた3人を、そのまま採用ですよ。僕がやることなんて、なかったですね~」

「そうなの?」

「みんな優秀なんで、僕のほうがプレッシャーですよ……」


 そうは言うけれど中村くんも優秀な人なんだよね……。こんな就職難の時代じゃなかったら、ウチみたいな零細企業には来ない人材だと思う。

 もうすぐ入社してくる専門学校生も含めて、彼らの能力を活かしてあげられる職場環境を作らなければ……って、なんで私が社長目線なのよ? 兄弟杯(さかずき)を受けた覚えはないよ、私は!


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