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令和のオタク女子大生が西暦2000年に転生したら借金少女だったので歌舞伎町で働きます  作者: 昼夜兼行で働け


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21-1 卒業写真とデジタルカメラの進化

 代々木八幡駅。小田急線の各駅停車だけの駅。初めて降りた。埼玉県民だったからね、私。


 少し歩くと代々木公園に突き当たった。土手の斜面を見ながら井の頭通りを渋谷方面に歩いていく。


 地図だと、この辺なんだけどなぁ……。


 似たような大きさのビルが並ぶ。FAXで送ってもらった地図はわかりにくい。スマホのナビの偉大さがわかるよ……。


 あった、あった!

 スタジオって書かれた旗が出ている。ようやく見つけた。


「おはようございま~す」

「あーアオイちゃん、おはよう」


 スタジオのドアを開けると、カメラマンの小山さんが撮影の準備をしていた。見たことない規模のストロボライトを立てている。超本格的だ。


「美由ちゃんは?」

「メイクルームに入っているよ」


 小山さんが階段の上を指さした。

 吹き抜けになっている二階に昇っていく。ちゃんとした撮影スタジオは初めて来たけど、なんか、おしゃれだ。メイクルームも広い。3席ある真ん中に美由ちゃんが座っている。プロのメイクさんが髪をとかしていた。


「あ、葵ちゃん」

「おはようございま〜す。郷田商会の佐藤です」


 メイクさんと名刺交換をした。打ち合わせは電話だったので、実際に会うのは初めてだ。


「美由ちゃんが、お世話になります」

「Dハーツの中田です。こちらこそ、よろしくお願いします」

「順調ですか?」

「お肌の調子もいいので、お時間はかからないかと」

「だってさ、美由ちゃん」

「お酒、控えたからね」


 年明けからの美由ちゃんは営業でも、お酒を控えている。もう借金を完済しちゃったので、無理する必要もないからね。肩の力を抜いて、のんびりやっているみたいだ。


「じゃあ、下にいますんで、メイクが済んだら声をかけてください」


 本職のメイクは気になるけど、ジロジロ見ているワケにもいかない。撤収だ。

 階段を降りて下に戻ると、社長が来ていた。休憩テーブルみたいな席に、ドカッと座っている。


「なんで、社長も来たんですか?」

「だって……見たいだろ、スタジオ撮影? 本格的なスタジオで芸能人みたいじゃねえか」

「はぁ……」


 ミーハーだよね、社長。顔怖いのに。


「それよりも、ほい。食料だ。必要だろう?」

「あー、すみません。ありがとうございます」

「ふっ……まあな」


 テーブルには大量のサンドイッチが置かれている。あとで買いに行こうと思っていたので助かった。食欲モンスターの美由ちゃんでも、さすがに食べきれないだろう……いや、食べちゃうか。


「アオイさん、バック何色からいきます?」


 カメラマンの小山さんが、背景に使うロール紙を選んでいた。


「最初の衣装はブレザーなんで、合いそうな色で~」

「じゃあ、ピンクかラベンダー色にしましょうか?」

「途中で色変えられます?」

「できますよ。じゃあ、2パターン撮りましょう」

「お願いします」


 スタジオのスタッフさんが壁のボタンを押した。


 ウィ〜ン……。

 ロール紙を吊り下げる金具が降りてくる。


「こういうのが見たかったんだよ」

「はぁ……」


 私の隣で社長はうれしそうだ。見た目はオヤジ、中身は子供。逆・名探偵だよ。


「おまたせ~」


 メイクを終えた美由ちゃんが階段を降りてくる。なんちゃって女子校生の制服だ。安直だと思うけど、卒業記念ポートレートだからね。


「さすがにもう、年齢的に制服はキツくないかしら?」

「大丈夫、大丈夫、こういうのは勢いだから!」


 美由ちゃん、大人っぽくなったからね。私とは大違いだよ。


「じゃ、ミユちゃん、撮影いきましょー」

「は~い」


 スタスタと照明が当たるスポットに入っていく美由ちゃん。指示されなくても位置がわかっている。


「はい、テスト撮りまーす」

 

 カシャッ、ピピピピ……。


 自然なポーズ。広告塔として取材や撮影を受けまくった経験もあるんだろうけど、モデルとしての勘もいいのかも? 中村くんが力説するのもわかる。これは、欲しい人材だ。


「アオイちゃーん、ちょっと見てー」

「ほーい」


 小山さんに呼ばれた。カメラとノートパソコンがつながっていて、今撮った写真がモニターで確認できる。昔はテスト撮影用にチェキみたいなインスタントフィルムを使っていたらしい……というか、今(2003年)でも使っているらしいけど、小山さんはハイテクだ。


 うん? あれれ……??


「カメラ、変えました?」

「わかる!? 1110万画素なんだよ。アオイちゃんのクリスマスポートレートに間に合わせたかったんだけど、なかななか品薄で手に入らなくてね……」


 主役マシンの交代、ZからZZに乗り換えた感じ……ということは、Zもあるよね?


「ねえ、小山さん、前のカメラって下取り出しちゃいました?」

「それが……金額が折り合いがつかなくて、まだウチにあるんだ」


 通販用の写真なら前の機種でも十分だし、買っちゃおうかな……。


「カメラ、レンズ一式、30万だな」


 いきなり社長が入ってきた。わかるの、カメラの相場?


「わかりました。売りましょう」

「商談成立だ」


 なんか社長と小山さんが握手している。なに、この展開?


「ちょっとー、アオイちゃんも社長も、私の撮影よー!」

「わぁ~、ごめん、ごめん……」


 美由ちゃんに怒られちゃった。そうだよね、今日は美由ちゃんの撮影だもん。


「社長、邪魔しないように戻りますよ」

「じゃあ、小山さん、詳細はのちほど……」

「はい。撮影が終わったら……」


 社長を引っ張って、休憩テーブルに戻った。


「カメラに詳しいんですか、社長?」

「中村くんからカメラが欲しいって言われて、調べてたからな。新品で買うと100万だ。さすがに新品は買えんだろう?」


 ちゃんと社長に報告しているんじゃん、中村「主任」。


「ということは、モデルの件も聞いてます?」

「ああ。だが、さすがにモデルだけじゃ雇っておけないぞ」

「そうですか……」

「それなんだが……古着屋の店員で、どうだ? 高円寺の店、ミユくんは高円寺の子だろ? 商店街の連中もミユくんとは顔なじみが多いし、悪い気はしないじゃねーかな」


 そっか……ミユちゃんって「実家」はないけど「地元」はあったんだっけ。落ち着くべき場所に落ち着く感じになるのかな? 


「あとは美由ちゃん次第でしょうけど、こっちの問題は解決しそうですね」

「そうだな。まだまだ、やっかいな問題は残っているがな」

 

 やっかいな問題かぁ……。

 『ピンクシャドウ』を、どげんかせんといかん! あっ、これの元ネタの知事、まだだっけ? とにかく、なんとかしなきゃ。やるっきゃない!


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