20ー3 葵、賞与計算をする
数字ばかりで、すみません。
午後からも事務所に戻って仕事だ。
正月から働きすぎだね、私。
「で、社長、例のお年玉はいくらなんですか?」
「おお、それだ、それだ……年末の30日に銀行で引き出しといた」
社長が鍵付きの引き出しをカチャカチャしている。
ドン……っ。
札束が出てきた。デスクの上に無造作に置いちゃうのよ……。
「700万円でいいか?」
「思い切りましたね……」
「まあ、そのくらい稼いでくれたってことだ」
う〜ん、イベント期間にウチの店が稼いだ金額の1割ってところか。
「これ、どう分けましょう?」
「店長、副店長、ボーイ2人で2割くらい取って、あとはキャストの売り上げ順でいいんじゃないか? アオイくんのメールにもデータ来てるだろ?」
私のパソコンのメールアドレスには、社長宛の売り上げ報告のメールがCCで届く。こんな重要情報を21歳の小娘が把握していていいのかな? それが「社長室付き企画経営補佐」だと言ってしまえば、それまでなんだけど……。
「わかりました。計算して分配しましょう」
「やっといてくれ。あっ、これCDの曲、どうやって取り込むの?」
社長は携帯音楽プレーヤーに夢中になっている。
仕方ないので、CDからパソコンへの取り込みと、プレーヤーへの移し方を教えた。
「曲名は英字しかダメなんだ。打ち直さなきゃな……」
あぁ……はい、はい。社長が80’USAベストヒットを取り込んでいる間に、私は働くよ。働けばいいんでしょ、働けば……。
表計算ソフトのデータから該当期間を抜き出す。ウチの店は個人単位の売り上げが、きちんとわかるようになっている。というか、そのへんはVisual Basicで私が組んだのよ。似たようなのはPythonで組んだことあったしね。
え〜と……ソートして、売り上げランキングを出そう。
13,623,000 アオイ
7,111,000 聖羅
5,805,500 ユリア
5,794,000 杏奈
5,362,000 沙希
4,503,500 ルアカ
4,502,000 ハヅキ
4,496,000 ナツコ
3,110,000 アサギ
3,002,500 茶髪
2,998,500 カレン
2,598,000 シーマ
2,410,500 ルン
2,181,500 イチカ
1,962,000 サオリ
1,490,000 マリナ
1,412,000 ホムラ
212,000 体験入店ほか
あらためて見ると私の売り上げは異常だ。美由ちゃんのことを言えない。もっとほかの子たちに売り上げが回るようにしないと、私が抜けたあとガタガタになっちゃうと思う。
まあ、それは、おいおい考えよう。
今はとりあえず、目の前の仕事。ボーナスの配分をやっちゃおう。
店長と絵里奈さんは50万円ずつでいいかな? ボーイの二人もがんばったから30万円ずつ出そうか。これで160万円だから、残りが540万円。これを売り上げ比例で分配していくと、私の分が多くなりすぎちゃう。そのへんは調整しよっか……。
60万円 聖羅
46万円 ユリア
46万円 杏奈っち
43万円 沙希っぽ
36万円 ルアカ
36万円 ハヅキ
36万円 ナツコ
25万円 アサギ
24万円 茶髪
24万円 カレン
21万円 シーマ
19万円 ルン
17万円 イチカ
16万円 サオリ
13万円 マリナ
12万円 ホムラ
66万円 アオイ
店長と副店長 50万円ずつ
ボーイ二人各 30万円ずつ
これでいいかな?
「社長、確認してください」
「できたか、見せてくれ……」
社長がヘッドホンを外した。私の横に来て、パソコンの画面をのぞき込む。
「うん、いいと思う。キャストの子たちは源泉したことにして、この額を手渡しするか。そのほうが有難味が出るだろうしな。こっちで税務処理はやっておく」
「ありがとうございます」
「で、アオイくんたち社員の分なんだが……まあ、いいか。4月から賞与の税金も引き上げられるんだ。今のうちに気持ちよくボーナスを出しておくよ」
4月から、税金があがるんだって。ひどいよね。
「じゃあ、アオイくん。名前を書いて封筒に、お金を詰めよう」
「ほ~い」
♪きけばんこくのろうどうしゃ~
労働歌を口ずさみながら、作業したよ!
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