20-1 ダメ人間たちの正月 ~春よ来い~
一人だと正月なんて、こんなもんです。
年末年始は、さすがにウチの店も休みだ。
みんな実家に帰ったり、家族と過ごしたりで、私ゃ寂しいよ〜。
もう大みそかもテレビで格闘技を見るくらいしか、楽しみがない。
今年はひとりぽっちで年を迎えたんです。除夜の鐘が……聞こえないか、大都会新宿だもんね。
ゴーン……ゴーン……。
聞こえるじゃん、除夜の鐘!
そうだった、寮から歩いてすぐのところに、お寺があったんだ。
ゴーン……ゴーン……。
寂しいと思ったけど、なんか、いい年が迎えられそうだね。
目が覚めたら7時過ぎだった。
2000年に転生したハズなのに、気が付いたら2003年。もう三度目のお正月だよ。
といっても、やることなんてないからね。初詣でも行こう。
(雪だ……)
外に出たら雪が舞っていた。道路に雪はないけれど、植え込みには少し積もっている。
元日に雪なんて珍しいね。
たいした雪でもないので、パーカーを被って行く。そのまま靖国通りを歩いて花園神社へ向かった。
雪もちらつくというのに、花園神社は混んでいた。
花園神社には倉稲魂神、日本武尊、受持神と三柱の神さまが祀られている。去年わからなかった受持神は日本神話に登場する食物を司る神様で、人々が生きていくために欠かせない食べ物を生み出したらしい。一応、調べておいたのよ。食いっぱぐれないように、しっかり拝んでおこう!
パンパン……。二礼二拍手一礼。
(私の借金返済もメドが立ちました。あとは、どうか未来に戻れますように。戻れないなら……どうしよう? 幸せになれるかな、私。幸せになりたいです。お願いします)
帰り道。フラフラ歩いていると、元日から営業のパチンコ店が今年もパッキーカードを配っていた。これは寄るでしょ!
入口で店員さんにカードをもらって店内を物色する。
おっ、なんか宇宙戦艦っぽい台を発見。さっそく打つことにした。
『リーチです……ガイーン』
10回転くらいで、連続チャンス目予告からWリーチ。いきなり当たった。確変じゃなかったけど、まあ、いいか。
大当たり消化後は時短100回転……と、80回転くらいで、また当たった。今度は確変。そして、ここから続いちゃったのよ!
『ただいま69番台、お若いお姉さんが打たれております大〇マト。なんとなんと大当たり10回目の大爆発。今年最初のドル箱の山を築いておりまーす!」
いかん、目立っている……。なんか、チラチラと様子を見に来るギャラリーもいる。めっちゃ恥ずかしいよ〜。
「ドル箱を積み上げている若い女って、アオイっちかぁ……。相変わらずヒキが強いね」
振り向いたら沙希っぽだった。
まあ、そうだよね。元日からパチンコを打ちに来るダメ人間の知り合いは、沙希っぽくらいしかいない。もちろん、自分のことは棚上げさ!
「アオイさん、あけましておめでとうございます」
村人Bことボーイの翔太くんだ。こいつら、やっぱり付き合ってるんじゃん。
「沙希っぽ、翔太くん。あけおめ、ことよろ~」
「うぃーっす、あけおめ」
「二人ともパッキーカードもらった?」
「ああ、もう使い切っちゃったよ。3000円じゃカスりもしないっす」
「じゃあ、これまだ残っているから使いなよ」
パッキーカードを沙希っぽに渡した。
「さすが、お大尽さま。気前がいいっすね~。よっしゃー翔太、打って」
「すみません、アオイさん、打たせてもらいます」
翔太くんが隣りの台に座った。座った椅子のうしろで沙希っぽが見学する。もう、やだ、このカップル……。
「えっ、2500円も残っている! 500円で当てたんですか?」
「うん」
「ほらね……アオイっちは異能者なんよ」
沙希っぽと話している間にも、また私は大当たり。これで11連チャンだ。
「うわぁ……やっぱ、ヒキが強いわ、アオイっち」
「沙希、沙希、こっちリーチ来た、熱いよ」
「2ラインの大ヤ〇ト砲じゃん。当てろ、翔太!」
「ムチャ言うなよ……」
翔太くん、店では「沙希さん」って呼んでるのに、「沙希」って呼び捨てなのね。ああ、なんか仲良さそうでムカついちゃうなぁ……。
『フィーバー』
「翔太、当たったよーっ!」
「当たっちゃった……」
うわぁ……。お座り一発。確変大当たり。ヒキが強いのはどっちだよ〜。しかも連チャン。あれよ、あれよと怒涛の5連チャンで、いきなり万発オーバーだった。
えっ、私? 17箱で、3万5000発の大勝利。うわぁ〜、正月から運を使っちゃったよ。大丈夫かな、私……。
パチンコ店から出てきたら、すっかり晴れていた。正月らしい、いい天気だ。
「いやー、アオイっちのおかげで、正月から大勝利だよ」
「アオイさん、ありがとうございます」
景品交換所で特殊景品を交換した。
翔太くんは3万3000円と、お菓子が少し。今の沙希っぽなら、1日の稼ぎに届かないくらいだろうけど、やっぱり勝つのはうれしいみたいだ。あっ、当てたのは翔太くんだったけどね……。
「あのさあ、やっぱり二人、付き合っているよね?」
「「……」」
「付き合ってないっすよ~」
笑顔で否定しつつ、二人は去っていった。後姿を見送っていたら、少し離れてから手をつないだ。いや、絶対に付き合っているだろ、お前ら。
ムカつくけど、うらやましいね。
春が訪れるまで、今は遠くない……はず。
春よ来い……春よこ〜い!
まあ、いいや。今日は11万5500円も勝ったから、ぜいたくするぞーっ! コンビニ弁当2個買って帰ろう〜。
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