19ー2 ハッピーバースデーは平穏無事に?
12月12日。今日は私というか葵ちゃんの誕生日だ。
「よお、アオイ、ハッピーバースデー」
「ハッピーバースデーっす!」
「姐さん、おめでとうございます」
「おめでとうございます、姐さん」
開店時間を待っていたように、キヨミヤと子分のみんなが来てくれた。
自称、売れっ子ホストは律儀だね、ホント。
この間、中の人である碧唯は誕生日だったから、これで心も体も21歳だね。この時代に来た時は18歳だったのに、21歳かぁ……。なんか、すっかり大人って感じ。大人にならないのはバストサイズだけだよ、ホント。最近やせちゃったから、また小さくなったんじゃないかな? もう、いや〜ん。
「そうだ、キヨミヤ。私のバースデーポートレートを作ったから、あげるよ」
「買わなくていいのか?」
「いいの、いいの。いっぱい連れて来てくれたし、誕生日プレゼントとしてはもらいすぎだよ。ほんの気持ちだけ、お返しね」
ポートレートのファイルから、この日のために撮影した1枚を取り出した。
「2と1の風船を持っている……21歳か?」
ざわざわ……ざわざわ……。
「えっ、21?」「姐さん、年下?」
何歳だと思われてるんだ、私は? まだまだ大学3年生の歳だぞ!
今度、しっかり教育してあげなきゃね……。
キヨミヤ一行は1セットで帰っていった。仕事前に寄ってくれたんだね。サンキュー、キヨミヤ。今度、ラーメンくらいおごるからね。
キヨミヤ一行と入れ替わるように、つよたんが来店。普段より、ちょっと遅めだった。
「アオイちゃん、ハッピーバースデー。はい、プレゼント」
うん、これは……新宿伊勢丹の地下で売ってる、お高いバウムクーヘン!
わざわざ買いに行ってくれたんだ。うれしいよ、つよたん。
「わあ、ありがとう……でも、いいの?」
「ボーナス出たからね~」
あれ、そういえば、ボーナスが出たらパソコンを買うとか言ってた気が……。
「ひょっとして、パソコン買います?」
「そうだね、今週の休みに買いに行くと思う」
「あぁ……」
つよたんは今日も、20分延長して1時間。きっちりしているのは公務員っぽい。
「ああ、そうだ、はい。バースデーポートレート」
ポートレートのファイルから、21ポーズの1枚を出して渡した。
「えっ、いいの?」
「誕生日プレゼントのお礼だよ。パソコン買っても、ちゃんと来てね」
「ははっ……、もちろんだよ」
つよたんは笑顔で帰っていった。
パソコンを買っても家に引きこもらないことを信じているよ、つよたん。
夜10時を過ぎて、バキさんたちが来てくれた。バキさんを入れて6人を団体席に案内する。バックヤードからチラっと聖羅が顔を出す。一行に野本くんがいないのを確認して引っ込んだ。現金なヤツめ……。
ヘルプは若手の子に任せて、私はバキさんの隣に、ちょこんと座る。
「ハッピーバースデー、アオイ殿。プレゼントでござる」
「これはっ……先週発売になったばかりのオリジナルサントラCD!?」
なんのサントラ? 決まっているじゃん。モビルスーツが出るアニメだよ!
「ありがとう、バキさん!」
さすが、バキさんだね。乙女心をわかっているよ。うん……乙女心で合ってるよね?
抱きついて、ホッペにチューしちゃった。照れちゃうバキさん、かわいいね!
「そうだ……はい、バキさんにバースデーポートレートをあげるね」
クリアファイルからポートレートを取り出して渡した。
「よいのでござるか? 誕生日プレゼントを渡しに来たのに、拙者がもらってしまっては逆でござるなぁ……」
「いいの、いいの〜。これは誕生日に来てくれた人への感謝の印なんだから」
私とバキさんが話していると、バキさんの部下の一人が近づいてきた。佐々木くんだったかな? バキさんの部下もいっぱい増えたから覚えきれないよ……。
「アオイさん、僕らからもプレゼントです」
ケーキかな? 小洒落たロゴが入った紙箱を渡された。
「ハッピーバースデー、アオイさん」
「「「ハッピーバースデー!」」」
「ありがとう~」
ふたを開けると、フルーツの甘い香り。サクサクの分厚いパイ生地の上にフルーツ。これでもか、これでもか〜っと盛り付けられている。
「うわぁ……すごい!」
「アオイさん、これ代官山のママタルトのフルーツケーキですよ……」
ヘルプについた女の子、アサギのテンションが高い。誰だよ、アサギって源氏名つけたの……。
ほかの女の子たちも目を輝かせている。食べたいんだよね、わかるって。
「ありがとう……私、こんなに美味しそうなフルーツタルト、初めて!」
「アオイ殿は社員たちにも人気でござるからな。いろいろ調べてござったよ」
「社長~、ばらさないでくださいよ」
若手社員さんたちの気持ち、みんなで食しよう。というか、食べさせなかったらウチの女子たちが怒っちゃうね。村人Bこと翔太くんにお皿とフォークを頼んだ。
「お待たせしました~」
なぜか聖羅が食器を持ってきた。さては……そのままケーキにありつくつもりだね!
「いただきま~す」
「う~ん~っ!」
「甘~いっ」
大きなタルトケーキだったけど、みんなで分けて完食。なんで、聖羅が2切れ食べてるのよ。ホントに現金な子なんだから。
え〜と……代官山のママタルト。令和の時代にあったかなぁ? こんなに美味しいんだから、あれば噂になっているはず。だから、たぶん残っていないんだろうなぁ……。ちょっぴり寂しい気持になった。まあ、せっかくだから、自分でも買って食べよう。フルーツたっぷりのタルト。場所を教えてもらわなきゃ!
「バキさん、ありがとうございました~」
「また来るでござるよ」
なんだかんだで、バキさんたちは閉店まで居てくれた。
エレベーターまでバキさん一行を送る。
「みなさんも美味しいフルーツタルト、ありがとうございました」
「いえいえ、こっちこそバースデーポートレートをありがとうございます」
「大事にします」
「アオイさん、ありがとう」
結局、社員さんたちにも1枚ずつ渡した。感謝の気持ちだよ。みんな、バキさんを支えてあげてね。エレベーターのドアが閉まるまで頭を下げた。
誕生日。ブログに書いたくらいで特別に大きな告知をしてなかったけど、お客さんがたくさん来てくれた。プレゼントも、いっぱいもらっちゃったよ。みんな、ありがとう。
◆◇◆
私というか、葵ちゃんのバースデーイベントは平穏無事に終了した。
寮に帰ったので、もらったプレゼントをテーブルに広げる。今日は幸せな気分で眠れそうだ……。
「葵ちゃ〜ん、ハッピーバースデー! お酒買ってきたよ、飲も~」
美由ちゃんが帰ってきた。両手にコンビニの袋を下げている。
♪さーけーはのーめーのーめー
ああ……家庭内が平穏じゃなかった。
このあと滅茶苦茶、どんちゃん騒ぎだった……ほぼ美由ちゃんが。
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