18-2 ピンクvsマジカル どっちのシャドウショー!
「2店合同のイベントをやることになりました。題して『ピンクvsマジカル どっちのシャドウショー!』です」
私、マジカル店長、絵里奈さん。『マジカルシャドウ』は開店前に3人で打ち合わせをする。今日のミーティングはマジカル店長の報告からだった。謎のイベントが社長とピンク店長、マジカル店長の話し合いで決まったらしい。
絶望的なネーミングセンスは置いといて、これ、美由ちゃんの引退対策なんだろうなぁ……。
「期間は11月15日の金曜日から12月28日土曜日まで。本店と新店どっちが売り上げるか、お店の威信をかけた勝負となります」
「具体的には、何をやるんだ?」
絵里奈さんが聞いた。
「とくに何ってことはないんですが、期間中の両店の売り上げを競います」
「漠然とし過ぎだな」
ああ、こりゃ、まだ何も考えていないね。あとで社長を詰めて賞金くらいは出させよう。
「えーと……店長は、どこまで聞いていますか?」
「どこまでとは?」
「美由ちゃんのことです」
「ミユさんの話も聞きました。お辞めになるそうですね。それは『ピンクシャドウ』としては大問題でしょうが、ウチの店には影響がありません」
店長はセクト主義かな? たしかに会社的には問題だけど、ウチの店だけ見れば何の問題もない。むしろチャンスくらいの話だよね。
「おいおい、それは初耳だぞ。ミユが辞めるのか、アオイ?」
「うん。来年の6月に結婚するんで、その前に辞めますよ」
「結婚かーっ、うらやましいな、こんちくしょー」
絵里奈さんが、頭をかいた。言葉が乱暴になっている。気持ちはわからないでもない。
「くぅ~……で、このイベントの目的はミユが辞める前に稼いでおこうってあたりか?」
「それと『ピンクシャドウ』のテコ入れですね。最近、ウチの店に押されていますからね。これを機に本店の威厳を見せたいんでしょう」
「なるほど……そういうことか。じゃあ、私らは当て馬ってワケか。おもしろくないね」
「おもしろくありませんね」
マジカル店長って、言葉は柔らかいけど「いい性格」してるね。やっぱり強面一族だけのことはある。
「勝ちにいくか、店長?」
「勝ちましょう、絵里奈ちゃん」
「アオイ、何か策はあるか?
「あぁっ……ありますよ」
『マジカルシャドウ』には『ピンクシャドウ』にない武器がある。それが副店長・絵里奈さんの存在だ。店長と副店長、どちらかが居れば店は回るのよ……。
「とりあえず、日曜日も営業します」
「「な、なんだってー!」」
えっ、どっちの意味で驚いたの??
◆◇◆
♪エロ〜いお店だセクパブ勤務、月月火水木金金!
これから『マジカルシャドウ』は12月28日まで毎日休まず営業する。しかも土日は昼の1時オープンにした。休みなんて、いらんかったんやぁ……。
「は~い、いらっしゃいませ~!」
「いらっしゃいませ!」
土日の昼営業は大当たりだった。ホームページの告知とメルマガだけだったのに、お客様がたくさん来てくれている。
「アオイ、満席だぞ。どうする?」
「入り口の前にイスを置いて、座って待ってもらいましょう」
村人さんと二人でバックヤードからイスを運ぶ。店のドア前には入店待ちのお客様が3人。イスを並べている間にもエレベーターが開いて、さらに1人増えて4人になった。
昼間のお客様は滞在時間が長い。通常の夜営業だと1セット40分か2セット80分が多いんだけど、3セット、4セットと延長してくれている。
それは、とてもありがたいんだけど……入店待ちの方が増えてしまうのは忍びない。
「お待ちいただいて、すみません」
入店待ちの方に、一人一人に頭を下げる。あ、そうだ……。
腰の武器ホルダーから名刺を取り出す。この戦士のコスチュームは便利だね。
「アオイです。顔と名前だけでも覚えて帰ってください」
「これは、どうもご丁寧に、恐縮です」
お客様に名刺を渡す。土曜なんでカジュアルだけど、この方もサラリーマンなんだろうね。社畜ムーブが板についている。あ、私もか……。
「それと、これ当店のiモードのページなんですが、ブログを書いております。待ち時間のヒマつぶしでけっこうですので、お読みくださいませ」
ああ、なんか店の外だからかな? 昼職モードで営業してしまった。これじゃ『マジカルシャドウ』のアオイちゃんじゃなくて、郷田商会の佐藤さんだよ……。
キャラがブレブレ状態で、お客様を回る。これで入店待ちのイライラも少しは和らぐと思う。あ、そうだ。手の空いている女の子に、交代であいさつさせよう。指名にもつながるし、一石二鳥だね。
「あ、アオイ、11番のお客様お帰り。ウェイティング2名様、席ご案内して」
「了解で〜す。残り、お待ちの方ケアお願いします 」
入り口で待っていた2名が入店した。もちろん指名は私。あざといくらいに営業したからね。
「あらためましてアオイです。よろしくお願いしま~す」
「沙希で~す」
2名連れのお客様だったので、沙希っぽをヘルプにつけた。ヒマそうにしていたからね。
「えっ、マジでモーニングねらいがデキるんすか?」
「ああ『猛〇王』は天井が1201ゲームでね、チェリー成立でほぼ天井サバンナチャンスが発動するんだよ」
「おおおおおっ!」
「しかも、ボーナス成立までは天井状態が続くから、チェリーを引くたびに天井サバンナチャンスで……」
ああ、こりゃイカん。沙希っぽの目がイッてる。
「おい、こら、沙希っぽ!」
パコっ!
「痛ぁ〜。あにすんのよ、アオイっちぃ」
沙希っぽの頭を平手で叩いた。グーでないだけ感謝しろ。
「あんたねぇ、無一文になって泣きついてきたの、もう忘れたの!?」
「話を聞くくらい、いいじゃないのぉ~」
まったく……懲りてないね、沙希っぽは。
人は……あやまちを繰り返す。あれ、なんのゲームだったっけ?
とにかく、コイツは要監視ってことで!
定休日だった日曜を営業にして、土日を午後1時開店にします。これで営業時間が週36時間から52時間に増加。単純計算で売り上げは1.44倍に増えます。
たしかに売り上げは増えるんだけど、労働者の負担も増えるんですよ……。
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