↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令和のオタク女子大生が西暦2000年に転生したら借金少女だったので歌舞伎町で働きます  作者: 昼夜兼行で働け


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/88

18ー1 人生の選択と旅立ちの予感

 寮のベッドの上。裸で寝ていると、さすがに少し寒い。

 もう11月だもんね。 


 美由ちゃんは先に起きていた。キッチンからいい匂いがする。いつもの朝だった。

 まあ、学校なら2時間目が始まっている時間なんだけどね。


「おはよう、美由ちゃん」

「あら、今日はちゃんと起きたわね」


 のそのそと食卓に向かう。

 鶏ガラと生姜が香る中華がゆ。油条(ヨウティアオ )風の揚げパン付きだ。

 美由ちゃんの手料理を食べる生活も1年半。最近、(とみ)に腕を上げている。うん、なにか美〇しんぼっぽい言い方になっちゃった。私は限界OL派なんだけどなぁ……。


 お粥に入れると油条はおいしい。こんな食べ方を覚えたのも美由ちゃんのおかげだ。


「葵ちゃん、残り414万円なのよ」


 3個目の油条に伸ばした手が止まった。

 おもわず美由ちゃんの顔を見る。


「あと2回、来年の年明けの支払いで完済かしら」

「減ったね……借金」


 1年くらい前は3000万円以上残っていたと思うのよ。

 ちなみに私は660万5137円残っている。毎月100万円のハイペースで返しているんだけど、上には上、トンでもない上がいた。


「来年、結婚する」

「店……辞めるの?」

「うん」

「社長には話した?」

「まだ。一緒に行ってくれる?」

「しょうがないなぁ……」


 覚悟はしていた。覚悟はしていたことだけどさぁ、こんなに早く来る?

 私のほうが早いと思っていたんだけどね、借金完済。


 ◆◇◆


「おはようございまーす」

「失礼します」


 遅めの朝食後、美由ちゃんを連れて会社の事務所に向かった。

 寮から近いのよ、事務所。 


「あれ、ミユくんも来るとは珍しいね」


 3階の社長室。強面の社長がパソコンと書類と格闘していた。


「社長、ちょっと大事な話があるんですが……」

「なんだねアオイくん。労働組合でも作るのか?」

「いえ、そういう話じゃなくて、美由ちゃんのことです」

「ほう……」


 社長は作業の手を止めて、美由ちゃんの顔を見た。 


「あの……社長、私、結婚します」

「おおぉぉ、そりゃ、おめでとう」

「それで、店を辞めたいんですが……」

「……………………えーっ!?」


 社長がイスから飛び上がった。いや、大げさじゃない。ホントに飛び上がるように立ち上がったのよ。それで、勢い余ってうしろにひっくり返った。


「痛ぁ……あてて……って、本気かねミユくん?」

「はい。もう借金返済もメドが立ちましたし、来年の6月に結婚式を考えています」

「考え直してはくれないか?」

「もう、決めました」


 美由ちゃんは、決めたら一直線だからね。それに、そもそも美由ちゃんは借金を返すために夜の街で働き始めたのよ。借金返済が終わったら夜の街にいる理由もない。


「あぁ……アオイくん、ちょっと、なんとかならないか?」

「えっ、私ですか!?」

「アオイくんは、うちの経営状態も知っているだろう?」

「21歳の小娘の私が、身内の事情を知っていることのほうが問題だと思いますよ」

「アオイくんは身内みたいなものだろ?」


 だ・か・ら! 兄弟杯(さかずき)を受けた覚えはないって……。

 まあ、私も社員の端くれ。会社の一大事なら、対応策を考えるよ。

 それに、何より、美由ちゃんには気持ちよく「寿退社」してほしいからね!


「ウチの会社、郷田商会は表向き輸入雑貨や衣料品の販売が本業ですし。しかし、実態は歌舞伎町のセクシーパブの運営が売り上げの9割を占めています」

「その通りだ。アオイくんとミユくんがウチに来たころ、本業の売上は400万から450万円、『ピンクシャドウ』が4000万円だったからな」

「私たちが入って『ピンクシャドウ』は月に5000万円を売る繁盛店になった」

「ああ、おかげで弟のヤツに頭が上がらなくなっちまったがな……」


 それは察していたよ、社長。まあ、そういう兄弟の関係はわからないでもない。令和の私もボインボインの妹がいて肩身が狭かったからね……。


「10月の売上は『ピンクシャドウ』が4200万円、『マジカルシャドウ』が3500万円。合わせて7700万円。古着、雑貨など4店舗の売上が500万、ネット通販が1000万。会社全体で月に9200万円ほどになります」


 あ、ウチの店『マジカルシャドウ』。『ピンクシャドウ』の半分の規模で8割の売り上げ。すごいでしょ? 「ぎゃふん」と言わせているよ、絵里奈さん!


「キミたちが来てから、会社全体の売上は倍になった。ミユくん、アオイくん、二人には感謝している。いや、感謝なんて言葉じゃ足りない。だからこそ、ミユくんの門出を気持ちよく送り出してあげたいんだがな……」

「美由ちゃんの売り上げは月に1000万円。ウチの会社全体の1割なの。辞められたら困っちゃうのよ」


「……そうなの?」


 自覚なかったのかーい!

 美由ちゃんは恋愛になると、急にポンコツになる。


「ねえ、美由ちゃん。借金を返済しても貯金はないでしょう? 辞めるのは少し稼いでからにしない?」

「あっ……そうね。少しくらい貯金がないと、健人お兄ちゃんに迷惑かけちゃうかしら?」

「そうそう! だから、年内で辞めるのは延期しようね」

「うん、そうする!」


 社長の顔を見る。怖い顔をしているけど、少しだけ安堵しているようだった。


「あとはピンク店長と相談でしょうね」

「そうだよな……」


 渦中の美由ちゃんは、きょとんとしている。ここまで深刻な話になると思っていなかったんだろうね。


 ああ、また私の週休二日が遠のいた……どころか、大忙しになりそう。月月火水木金金だよ〜。

 

筆者からの、お願い


みなさんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどが力になります。

続きを書くためにも、どうか評価をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。