番外編 あれから1年。
2002年8月31日の話です。
8月最終日。明日は歌舞伎町ビル火災から1年だ。
出勤途中に歌舞伎町一番街を通ってみた。土曜ということで人が多い。火災現場となったビルのシャッターに紙が張り出されている。近づいて見ると「つつしんで哀悼の意を表させていただきます」と書かれていた。
ビルを見上げる。1年たってもビルは、工事や解体の気配がない。焼け焦げた壁も、あの日のままだ。
花を供えている人がいる。手を合わせて祈っているので、私も合掌した。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏……。
小さな声でお念仏を唱え、礼拝した。
お念仏を終えて、再び歌舞伎町を歩き出した。
何も変わらないように見える歌舞伎町だけど、安全管理の体制は大きく変わってきている。今年(2002年)4月に消防法が改正された。10月25日から施行されるので、私も避難経路の確保や消火器・避難設備の扱い方、防火管理の重要性についての講習会を受けた。
歌舞伎町2丁目。
私の店『マジカルシャドウ』が入っているビル。いつもは正面からエレベーターを使うけど、今日は裏から非常階段を使う。階段に物が置かれていないのを確認しつつ4階まで上がっていく。
カギを開けて中に入った。裏口は店のバックヤード側に通じている。緊急時の避難導線も大丈夫だ。
あっ、私も店のカギを持たされている。『マジカルシャドウ』の責任者は店長、次が副店長の絵里奈さん。私も社員だし、店舗のデザインに関わってるからね。
まあ、なんというか、気が付いたら責任を負わされる立場になってしまっていた。
葵ちゃんって高卒3年目の若造よ。そんなに重荷を背負わされても困るんだけどなぁ〜。
「あれ、アオイ、裏口入店か?」
「そんな〜、裏口入店とか聞こえが悪い。いつでも私は正面突破ですよ」
絵里奈さんの昭和ノリにも慣れてきた。
私の働く場所。当たり前の日常。みんな尊い。
さあ、今日も働こう。働け、私!
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