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令和のオタク女子大生が西暦2000年に転生したら借金少女だったので歌舞伎町で働きます  作者: 昼夜兼行で働け


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17ー5 アイドルナイトで起死回生!

困ったときはダンス! ダンスはすべてを解決する!!

 9月27日の夜、歌舞伎町で発砲事件が発生。

 『マジカルシャドウ』は事件現場の近くだったが不幸中の幸いで、通常の週末並みの売り上げがあった。


 事件の翌日、私は午前中から会社に来ていた。昨夜のことを社長に報告するため……というか、いろいろ聞きたいことがあるのよ。


「大変だったなアオイくん」


 社長が新聞の社会面を開いてみせた。


『歌舞伎町の喫茶店で発砲、暴力団幹部ら2人死傷/東京・新宿』

『午後7時頃、新宿区歌舞伎町1丁目の喫茶店〇〇〇〇〇〇で男性2人が撃たれ、1人が死亡、1人が重傷を負った』


 新聞は事件の様子を、かなり大きく伝えていた。


「何か知っているんでしょ、社長は?」

「俺もたいしたことは知らないよ。ただ、犯行グループが逃走しているし、 背後にチャイニーズマフィアの問題もある」

「怖いですね……」

「本当に大変なのは、これからだ。歌舞伎町そのものへの客足が遠のくかもしれない。これは『マジカルシャドウ』だけじゃなくて『ピンクシャドウ』にも影響が出る」

「お客さんに来てもらえる手を考えないといけませんね……」


 せっかく軌道に乗った『マジカルシャドウ』だもん。失速させてたまるかってんだー。


「ところでアオイくん、身体の調子が悪いと聞いたが、大丈夫か?」

「ああぁ……それでしたら多分、働き過ぎです。仕事を減らしてください。休みを増やしてください。できれば給料そのままで」

「わかった。とりあえず通販のほうは軌道に乗ったし、来月から社員も増える。こっちは抜けても大丈夫だな。あっ、でも、会議は出てほしい」

「あうぅぅ……」


 私、会議苦手なのよ〜。会議アニメって見ていてツライもん。私はモビルスーツに暴れてほしい派だから……って、アニメじゃない! 仕事のことさ〜。


 ◆◇◆


 10月に入った。

 夕刊紙や週刊誌が「日本のヤクザ vs チャイニーズマフィアの全面抗争」とか「年末に向けて大戦争が起きる」とか煽りまくっているのよ。足が遠のくお客さんもいるでしょう? そんな暴力と恐怖に、負けてたまるか〜ってのよ! 


「マジカルシャドウ・アイドルナイト はじまるよ~!」


 今夜の『マジカルシャドウ』は「アイドルナイト」。歌って、踊って、盛り上がろう。


 ♪さあ、いくよ、123……


 私、聖羅、杏奈っち。なんたら娘は新作、あややダンスでスタートだ。こんなこともあろうかと、練習しといてよかったね。

 今夜の私たちはRPGじゃなくて、アイドル仕様。あややっぽいコスの聖羅。ちゃんとピンク色のつば付き帽子も用意した。私と杏奈っちは……チアガールだよ。まあ、いいや。このダンスのセンターは聖羅。私と杏奈っちは右と左だ。


「ヒュ~ヒュ~」「聖羅ちゃ~ん」


 お客さんから声がかかる。かわいいのぉ、聖羅。あややになり切ってる。アイドル的なかわいさじゃ、私は聖羅にかなわない。一応、私も清純派(自称)なんだけどね……。


 パチパチパチパチ……。


「みんな~、ありがとう~」


 ここで選手交代。私たちは控えに戻る。ここからは元・声優学校生の歌謡ショーだ。


「はーい、ありがとうございましたー!  お届けいたしましたのは、当店のアイドル聖羅ちゃんと、アオイ、杏奈の3人による、スペシャルダンスでございました。 さあ、ここからは歌謡ショーでございます。トップバッターは当店の美しき白百合、ユリアでございます」


 司会は絵里奈さんに任せた。さすがベテラン、なんでもできる。亀の甲より、ちんすこう。でも、ちょっと、昭和の歌番組みたいだね。


「花は開くと美しい。いかなる運命の荒波に翻弄されようとも、けっして気高さを失わない一凛の花。奇跡の乙女が今、華麗に咲く。歌っていただきましょう……ハニーフラッシュ!」


 ♪テンテンテレテーテーテー……


 ユリアは白地に青のラインが入ったミニスカワンピース。これは1997年版『F』の変身前のコスチュームなのよ。曲も疾走感あるダンスポップ調のアレンジになっているね。

 ユリア、歌うまいわ。声優事務所に入れたママ(唯依)にも負けていない。二人の差は……おっぱいのサイズ? ママのボインボインは、あれだけで武器だからね。エロは正義だと思う、ほんと。


 パチパチパチパチ……。

 

「ありがとうございました。ユリアちゃんにもう一度、拍手をお願いしますーす」


 パチパチパチパチ……。


「荒野に咲く一輪の花のように、強く、美しく、咲き誇る誓いの歌。歌うはハヅキで……『ゆずれない願い』」

 

 中学生が魔法騎士として異世界に召喚されるアニメ。ハヅキは緑色のキャラの衣装で登場した。ハヅキのメガネは、このためだったのか……!?

 あっ……でも、ハヅキって歌はイマイチだった。ちょっと残念。


「次は二人の歌姫が織りなす、妖しくも美しい魂の葛藤。 ナツコとルアカで……『MASK』」


 ナツコとルアカはダブルボーカル曲だ。1990年代リアルタイム勢ではない私は、未履修だったけどカッコいいね! 


 パチパチパチパチ……。


 おっと、ここで沙希っぽも参戦だ。香盤表になかったけど、何を歌うんだろう?


「ありがとうございます。ありがとうございます。連日のご来店、店員一同に代わりまして厚く厚く御礼申し上げます。パチンコは一日の疲れをいやすストレスうっぷんの捨てどころ、あなたの腕の見せどころ……」


 な、なんだ、このマイクは? 


「パチンコの歌よ『ひらけ!チューリップ』だったかな?」

「知っているのか、絵里奈さん!?」

「うん、沙希ちゃんが歌うって、自分でCD持ってきたわ。有名な芸人さんの歌なのよ」


 わかんないけど、なんか……お客さんにはウケている。まあ、いいか。


 パチパチパチパチ……。

「いいぞ、ねーちゃん!」「おもしろかったー」


 おそらく、今日一番の歓声を受けて沙希っぽが戻ってきた。

 ちょっとドヤ顔なのが、ムカつく。もう、晩御飯おごらないぞ!


 戻ってきた沙希っぽと入れ替わりで、4人がフロアに向かう。


「どんなに悲しい夜が訪れようとも、決して涙は見せません。当店の同期、4人が心を合わせて歌います。ハヅキ、ユリア、ナツコ、ルアカで……『乙女のポリシー』」


 これも有名なアニメのエンディング。リアルタイム勢の彼女たちには特別な曲らしい。

 聞いているキャストの子たちが涙ぐんでいる。


 パチパチパチパチ……。


「ありがとうございました」


 ハヅキ、ユリア、ナツコ、ルアカが深々と頭を下げる。

 ちょっと、しんみりしちゃっているよ。出にくいな、このあと私なのに。 


 ♪タランラランラランララン……


 さーて……トリは私だ。何を歌うのかって? 決まっているでしょ!


「今夜最後の一曲は、まさに今月スタートしたばかりのアニメから! 当店の誇り高きエース、アオイが歌います……」


 ♪ ダダダダダダン……


 ド派手なシンセサイザーと激しいギターのイントロが鳴り響く。 私の心はモビルスーツだよ! お前ら、みんな見てるよね? 私の好きなモビルスーツが活躍するアニメのオープニング……私が大好きな曲だよっ!

 令和の私も劇場版から入って、テレビシリーズを全話見た。あっ、一番好きなのはモビルスーツじゃなくて、宇宙戦闘機だけどね。ガンバレルという遠隔誘導できる機関砲みたいな武器が、グッとくるのよ……。


 ♪キミニアルカラ……


 パチパチパチパチ……

「アンコール!」「アンコール!」「アンンコール!」


 よかった、盛り上がった!


「みんな、でてこーい」


 キャストを全員呼び込んだ。聖羅、杏奈っち、声優学校卒の4人に、沙希っぽ。その他、歌っていない子たちも全員出てくる。


 ♪Yo…… 

 

 もちろん最後は全員でダンス。

 やはりダンス、ダンスはすべてを解決する!


 ちょっとしんみりしていたユリアもハヅキも笑顔になった。絵里奈さんが手拍子している。店長が笑顔でちょっと怖い。

 そして、何よりも……お客様が楽しんでくれている。


 踊れば、そこが楽園だよ、ベイベー!


「ありがとー! みんなーありがとう~」


 こうして『マジカルシャドウ・アイドルナイト』は大盛況で幕を閉じた。


 このまま終われば美しいでしょう?

 でも、これじゃ終わらないのよ。


 ライブのあとは、大物販会!

 このために、みんなの新作ポートレートを作ったのよ。サインを入れて1枚4000円。あややコス聖羅のポートレートは特別価格。額縁をつけて5000円だよ!

 1回2000円チェキの撮影会も大人気。段ボールで2箱買ってきたフィルムが完売しちゃったよ。なんかもう……どんどん商売がアコギになっていくね、私たち。


明日は番外編です。



筆者からの、お願い

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