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令和のオタク女子大生が西暦2000年に転生したら借金少女だったので歌舞伎町で働きます  作者: 昼夜兼行で働け


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17-3 働きすぎ? 私の調子が悪いみたい 

操作を間違えて、早めに投稿してしまいました。

「へ〜、お客様ノートにチェキの写真を貼ってるんだ。考えたわね、葵ちゃん」


 出勤前に寮でお客様ノートをチェックしていたら、うしろから美由ちゃんが抱きついてきた。

 最近、寮に居ると美由ちゃんが絡みついてくる。発情期かな?


「やっぱり顔があるとメモも捗るし、あとで見ても思い出すことが多いと思うのよ」

「私もやろうかしら?」


 そう言いながら、美由ちゃんは私の胸をまさぐっている。胸はもまれると大きくなる……というのはウソだと思う。私のスーパーデラックスBカップが証拠だよ。

 9月に入って最初の週末。予報では午後から雨だ。昨日までの残暑から一転して空気が冷たい。エアコンなしでイチャイチャできる。


「葵ちゃん、最近ちゃんと休めている?」

「うん……まあ、忙しいけど無理はしていないと思うよ」

「なんか最近、目を開けて寝ているのよ。ときどき目をキョロキョロさせたりするから、起きていると思うじゃない? 声をかけたら眠っているの。びっくりしちゃった」

「えっ……そうなの?」


 そういえば、まぶたを整形していると睡眠時に目を開けたままになりやすいとか、ナンとか……。まあ、ウワサだけどね。葵ちゃんって整形したことあるのかな? 今度、ママに聞いてみよう。

 まだまだ葵ちゃんについては、私の知らないことがあるなぁ……。


「あ、美由ちゃん、ごめん、今日は借金取りの田中さんと約束があるから、そろそろ出なきゃ」

「うん、じゃあ、身体に気を付けてね。無理しちゃダメよ」


 美由ちゃんとチュー。ついでにレロレロして寮を出た。


 ◆◇◆


「おお、佐藤さん。好調らしいな、新店」

「ありがとうございます」


 西新宿。パチンコ屋のとなりにある、いつもの喫茶店だ。

 私の向かいに座った田中さんに、お金の入った封筒を差し出す。封筒の中身を確かめる田中さん。


「ぴったり100万円。たいしたもんだね、佐藤さん。これで残りは836万7238円。このペースなら、アッという間に完済できそうだな」

「おかげ大忙しですよ」

「おいおい、無理はいけないぜ。前も無理して倒れただろ? 気を付けなよ」

 

 そうだよね。目を開けたまま眠っちゃうんだもん。疲労が溜まっているのかもしれない。少し休みを増やそうかな? 隔週で週休二日くらいでもいいかなぁ……。


「そうだ、田中さんは週に何日休みなんですか?」

「俺か? 俺は一応、会社にはしているがフリーの借金取りだからな。休む時は休むし、休まない時は休まない」

「私のことを言えませんね。ちゃんと休んでください」

「そりゃ、まあ、佐藤さんのように、毎回きっちり払ってくれる相手だけなら楽だがね」


 う〜ん、私ってチョロい相手なのか……。というか、そもそも借金取りって、どんな仕事なんだろうね? 気になるよ。


「あの……借金取りって、どういう仕事なんですか?」

「俺は俗に言う『買い取り屋』ってやつだ。焦げ付いた借金の権利を買い取っている」

「焦げ付いた借金の権利?」

「ニュースで不良債権って聞いたことあるだろ? それの個人版みたいなもんだな。不良債権を金を取り立てる権利ごと買って、少しでも金にするのさ」


 少しでも金にする商売? 「少しでも」ってことは当然、安く買い叩くんだよね?


「田中さん、私の借金って、いくらで買ったんですか?」

「うん? 2000万円だ。元々の額面が6000万だったからな」


 驚愕の事実。借金、ホントは6000万円だった。いい加減にしてほしい。2000万円でも異常なのに、6000万円とか頭がおかしい。6000万円……あれ? あれれ??


「借金の額面自体は6000万円なんですよね? でも、私の借金は2000万円だって……」

「そもそも2000万円で買わされたのも、おかしいんだ。こういうのは、せいぜい1割が相場なのさ。それが3割以上。『若い娘だから回収できるだろう』って言われてね」

「いや、無理です!」

「俺も無理だと思った。そもそもヤバいスジから作った借金とはいえ、佐藤さんの母親と(コレ)に6000万円も貸すかね? まあ、おそらくだが元金は2000万円だろう。だから俺に2000万円で売りつけた時点で、ヤツらの回収は完了しているのさ」

「じゃあ、形としては田中さんに借金を立て替えてもらったってことですか?」

「債権者が移るってのは、そういうことだ。それが買い取り屋の商売だからな」

「ありがとうございます」

「お礼を言われることじゃないさ。不良債権を2000万円で買わされたのが俺だったってだけだ。お礼をいう気持ちがあるんだったら、しっかり完済してくれ。ハッハッハッ……」


 田中さんが笑う。邪心のない笑顔だった。顔は怖いけどね……。


「さて、俺は行くよ。また仙台から東京に逃げた女がいてね……」

「あ、お疲れ様です」


 田中さんは席を立った。


「おっと、ひとつだけ。俺は裏の人間だが、闇の人間じゃない。そこは誤解しないでくれ。じゃあな」


 なんか、いろいろ考えさせられた。

 借金2000万円は鬼かと思ったけど、本当の額面は6000万円。2000万円は田中さんの「善意」だったようだ。葵ちゃんというか私は、善意のロープを綱渡りして生きている。生きていることに感謝しなきゃいけないね。


 それにしても、葵ちゃんのクズ母。どこに逃げたんだろう? 会ったことないけど、許せんな。


「私の青春を返せ―っ!」


『ごめんね……』


 えっ! 今、なんか声が聞こえた? 女性の声?


 周りを見回した。少し離れた席にサラリーマンが二人いるだけ。女性はいない。空耳アワーかな? あ、でも、この店のBGMはインストルメンタルだから歌声がない。

 ああ、これは美由ちゃんに言われたように、疲れているんだ私。借金返済も道が見えてきたし、マジで週休二日制を考えよう……。


 ◆◇◆


 喫茶店を出て『マジカルシャドウ』に向かっていると、雨が降り出してきた。

 午後3時ごろから東京は大雨。文字通り、バケツをひっくり返したような土砂降りになった。

 さらに夕方にかけて雨が激しくなり、各地で道路が冠水。電車も遅れたり、運転見合わせになったりした。


 雨でお店に来れない女の子もいて、出勤したのは半分くらいだった。


「ヒマだね……」

「ヒマだな……」


 絵里奈さんと相談して、一応『マジカルシャドウ』は定刻通りオープンさせた。とはいえ、外は豪雨。誰も来るはずもないよね……。


「お客さん来たら、起こしてね」


 私は団体席のソファーでゴロリ。休憩させてもらった。2時間くらい眠っちゃったらしい。やっぱり疲れていたんだね。


 夜9時過ぎ。雨足も弱まって外を歩けるようになったようだ。

 お客さんもチラホラやってきた。さすがに今夜は『マジカルシャドウ』開店以来、最少の客入りだ。私も開店以来、初めて指名ゼロだった。まあ、こんな日もある。


 少し休めっていう天の啓示だと思うようにしよう。美由ちゃんに指摘もされたし、幻聴までした。さっきも眠っちゃったし。自覚はないけど疲れているのかもしれない。

 というか、私は働きすぎだよ、絶対。

 働いて働いて働いて働いて働いて……まいっちゃったよ。

葵(碧唯)の体調問題は、今後も続きます。

働きすぎです。休みましょう……。


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