16-2 人材を求めて~契闊談讌して心に旧恩を念う
ママ=唯依。葵にタイムスリップ憑依している碧唯の母親。2002年当時は旧姓の小野寺唯依。パパ=大工原真治と結婚して令和の時代には大工原唯依になっている。葵とは家が近所で、子供のころからの付き合い。
沙希っぽが訪ねて来てから数日が経った。
「えーと、沙希だったな? なかなかスジがいいぞ」
「あざーす」
「私が特別に教えてあげよう、チン〇の扱き方を……」
「ストップ、ストップ、スト~ップ! 舞さん、沙希っぽは新人なんです。変なことを仕込まないでくださいっ!!」
沙希っぽは、ウチの店で働くことになった。キャバクラで働いた経験があるらしく、わりとすんなり仕事になじんでいる。まあ、私の元・仲間ってことで、先輩方が目をかけてくれている面もあるんだけどね。
そうそう! 沙希っぽが、いきなり店に私を訪ねてきたのは、携帯が止まっていたからなんだって。ほかにも家賃やら電気代やら、未払いや滞納があるらしい。
1年ちょっと前はボロ勝ちして、ウチの店で豪遊していたのに諸行無常。おごってほしいよ久しぶり……だったかな? とにかく、一寸先はハプニングなのよ、人生は。
♪ビーー、ビーー、ビーー、ビブベー
おっと、ママからのメールだ。
『頼まれた件、5人くらいは集まりそう』
さすがママだ。手が早い。
あとは私が、口説けるかだね……。
昔の偉い人は、人材確保に奔走したのよ。
烏鵲南に飛ぶ、樹を繞ること三匝、何れの枝にか依るべき。
私も詩でも吟じようかね~。
◆◇◆
歌舞伎町のライブハウスに来ている。
令和の時代だとプロレス会場になっていて……って、そういえば令和では閉館するってニュースになっていたね。なんか、感慨深い。
「チンホーオンラインプレゼンツ、MMORPGコスプレバトルin新宿ぅぅ」
今日はチンホーオンラインのイベントだ。なんと、ママはメイン司会に出世していた。チンホーさんに気に入ってもらえたみたい。首都圏のイベントは、ほぼレギュラーなんだって。ありがとうチンホーさん。
もちろんママはエロエロ衣装。海賊風だけど、ボインボインがこぼれそう。ママが動いて胸が揺れるたび、カメラのシャッター音が鳴り響く。エロは正義だ。毎回ママが呼ばれる理由がわかる。
「ただいまベータテスト中のMMORPG……」
しゃべりも上達している。きっかけは不純でもチャンスはチャンス。場数を踏むのが大事だから。まあ、私の経験なんて参考にならないだろうけどね……。
おっと、今日はママの応援にきたんじゃなかった。
グルーっと客席のほうを見渡す。えーと……おっ、いた。あの子たちかな? 左奥の壁際。数人の女性がステージを見つめていた。
「失礼……唯依の同級生のみなさんですか?」
近寄って声をかけた。明らかに警戒の表情を浮かべている。あやしいか、私? かわいこちゃんだよ、自称だけど。
「仕事の話で来ました」
「仕事……あなたが、ですか?」
5人いた。顔を見合わせている。ややあって、メガネの子が近づいてきた。
「クラスに17人いました。卒業公演が終わって、所属が決まったのは小野寺だけです。プロダクションの養成所に入ったのが1人。別の養成所に入ったのが2人。残りは違う仕事についたり、田舎に帰ったり、私たちみたいに……」
言葉に詰まった。ステージに立っている唯依を見ている。
この場所に呼んだのはママだ。自分の仕事ぶりを同級生に見せたかったんだろう。ママのことだから、深く考えていないよね? でも、これは残酷だよ。
まあ、私はもっと残酷かもしれない。夢に破れた女性たちをスカウトに来ているんだから……。
「あなたたちにピッタリの仕事があるの」
「でも、それは夜の仕事、しかもエッチな店だと聞いています」
「仕事がなくて、苦労しているんでしょう?」
「うっ……ええ、まあ」
メガネの子は下を向いてしまった。ほかの4人も下を向いている。
「テレビゲーム、RPGをコンセプトにした店を始めるの。お客さんもゲームが好きな人が中心だと思う。アニメが好きな人も来ると思う。そんな話をお客さんと一緒になって楽しめる女の子が必要なの」
うしろの子が二人、顔を上げた。もう一押しかな? こういうヤリ方は好きじゃないけど、仕方ない。札束で顔を叩こう。
「私の月収は150万円。ルームメイトは400万円よ。はい、雑誌にも取り上げられたわ」
店から持ってきたファッション雑誌。美由ちゃんが取材されたページを見せつけた。
「私、やります」
ずっと下を向いていた髪の長い子が、いきなり手を挙げた。
「ちょっと、百合ぃ、あんた本気? エッチな店だよ!?」
となりの茶髪が、驚いて隣を見る。
「エッチな店っていっても、別にチン〇舐めたりしないんでしょ?」
「ええ。キスとか、おっぱいモミモミとか、そんな感じですね」
「キスするんだよ、百合!」
「いいじゃん、キスくらい。減るもんじゃなし」
「あんたねぇ……」
「あの……私たち、やります」
うしろの二人が手を挙げた。
「えっ、じゃあ私も」
メガネも手を挙げた。
「ちょ、ちょっと、あんたたち、いいの? それで、いいの!?」
茶髪が食い下がる。
「私ね……決めたの。小野寺より稼いでみせるって。声優になれたのは小野寺だけど、稼ぐのは私のほうよ!」
メガネの子は、そう言い放つとステージのママをにらみつけた。
「私も小野寺を見返すくらい稼いでみせる」
「私も」「私も!」
わぁ……めちゃくちゃ嫉妬されてるよ、ママ。でも、おかげで茶髪以外の4人をスカウトすることができた。ここは、ママに感謝しておこう。
サンキュー、マッマ!
スカウトした4人は新店の戦力として大活躍する予定です。拒否した茶髪も、いずれ再登場します。
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