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令和のオタク女子大生が西暦2000年に転生したら借金少女だったので歌舞伎町で働きます  作者: 昼夜兼行


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15ー1 ホストクラブ対抗サッカー大会とムチャ振り

しばらくサッカーの話が続きます。

 ゴールデンウィークに入った。

 今年(2002年)は最長10連休だけど、ウチの店の営業はカレンダー通り。3、4、5、6の4連休になった。ホントは5月2日は休んで、東京ドームに行きたかったのよ、ぐっすん。


 そんな連休の初日、私はサッカーの応援に来ている。

 ワールドカップ? 違う、違う。そんな大きな大会じゃなくて、ホストクラブ対抗サッカー大会。キヨミヤのチームが出ているのよ。


 キャー! キャーッ! キョエーッ! アッヒョー! 


 河川敷のグラウンドには、朝から人だかりができていた。お姉さま方、おばさま方の黄色い声が飛び交っている。

 キヨミヤチームの相手は歌舞伎町の大型店だ。応援もあっちのほうが人数が多い。なんか勢いで押されているぞ。大丈夫か、キヨミヤ! 負けるなキヨミヤ、がんばれキヨミヤ! サッカーのルールは知らんけど、諦めたらそこで試合終了ですよ……?


「キヨミヤさん!」


 キヨミヤへのパスが通った。キヨミヤがドリブルで左サイドを駆け上がる。


「走れーっっ、キヨミヤ、走れーっっ!」

 

 私も声援をおくった。

 早い、早い、早い……さすが早漏! 駆け抜けるのが早い。奥の奥まで突っ込んでから身体を捻ってセンタリング。ゴールの近くにボールを蹴り入れた。


 パスが通った。そのままシュートだ。イケ、キヨミヤの子分! 

 シュート……ゴールぅぅ!

 やったー! ナイスだよ、キヨミヤの子分! 


 キャーァッ! キイーッ! ウッキーッ!


 黄色い声援が交差する。お姉さん方、おばさま方、怖い、怖い、怖い〜。

 試合のほうは、そのままキヨミヤの店が逃げ切った。勝ち逃げでも、勝ちは勝ちだ。すごいぞ、キヨミヤ!


「キヨミヤ~!」


 グラウンドから引き上げてくるキヨミヤを、クラブハウスで待ち受けた。

 

「おい、アオイ、汗まみれだぞ、俺?」

「スポーツの汗、男の汗は勲章だよ!」


 そのままキヨミヤに抱き着く。


「ありがとう。アオイの応援で勝てたよ!」


 ほっぺにチューされちゃった。

 ヒュー、ヒューと、はやし立てる子分たち。恥ずかしいけど、悪い気はしない。


「みんなも、がんばったね。ありがとう」

 子分たちにも、ひとりひとりハグして回った。


「姐さん……」

「姐さん、勝ちました」


 うんうん、いい子たちだ……。あ、子分の半分くらいは私より年上だろうけど。 


「ふ~ん、じゃあ、このあとはバーベキューパーティがあるんだ?」

「まあ、そっちが本番かな? ファン感謝イベントみたいなもんだな」

「うん……参加費1万円? ぼったくりじゃん!」

「何言ってるんだ、アオイ? 普段の営業からしたらボランティアみたいな金額だぜ」


 まったく怖いねぇ、ホストは。

 さすがに私が、その1万円のバーベキューに出るワケにはいかない。とっとと退散するとしよう。おお……そうだ、その前に渡しておこう。

 

「ほい、キヨミヤ。これで若い子たちに冷たいものでも飲ませてあげて」


 包んでおいたよ、金一封。

 受け取ったキヨミヤが中身を見て、きょとんとしていた。

 多い? 少ない? どっちの反応なのか悩むね。私的には奮発したのよ。まあ、ガチ勢は何倍も包むんだろうけどねぇ。


「姐さん、あざーす」

「「「あざーす!」」」


 固まっているキヨミヤに代わって、子分のみなさんが礼をしてくれた。いいねえ、教育が行き届いていて。うちの店の若い子にも見習ってほしいよ。あ、まだまだ私も若い子の組だった。なってないのは私の礼儀だね!


 キヨミヤと子分たちに軽く手を振って、クラブハウスをあとにした。キヨミヤ推しの女性陣に見つかる前に、ダッシュで撤収しよう。

 

 そういえば太陽光の下でキヨミヤを見るのは初めてだったかも? 夜行性だから、陽の光で灰になるかと思ったよ。昼間に見ると、案外いい男だね、キヨミヤ。

 

 ◆◇◆


 新宿に帰り着いた。

 美由ちゃんは広石さんとデート。帰ってくるのは終電付近だろう。

 私ひとりだ、なにか外食でもしようかね〜。


 ♪プルルルル……

 おっと、着信。うげっ、社長だ。


『アオイくん、今どこ?』

「新宿ですけど……」


 呼び出されてしまった。

 事務所に行くと、せっかく3階に移動した社長室が、また段ボールに侵食されている。


「だから、なんで人を増やしていないんですか!」

「こんなに注文が来るなんて、想定外だよ!」


 理由はわかる。ウチの会社「郷田商会」がi〇ードの公式サイトに入ってしまったのだ。通常では難しいんだけど、一種の裏技かな? ウチのサイトを作っているバキさんの会社が「ショッピング」ではなく「ファッション情報系」として公式に押し込んでくれたのね。


「ご飯食べてないんですよ、私」

「ピザでいい?」

「下の階で残業している人の分も、ですよ」

「わかった」

「まったくもう……。ネット通販の申し込みが休日に増えるなんて常識じゃないですか? それに合わせて休日もシフトを組んでください」

「そうなのか?」

「えっ……はい」


 しまった、これ未来知識だったかも?

 携帯でのネット通販は、まだまだ始まったばかりだ。ユーザーデータが蓄積されて、購買時間や曜日の傾向がわかっていくのは、これからなのかもしれない。そのへんは今度、バキさんにでも聞いてみよう。


 とりあえずプリントアウトした注文票と宅配便の伝票を持って、2階に応援に向かう。

 2階の倉庫では若い男の子が一人、泣きそうな顔で箱詰めをしていた。4月に採用したばかりの中村くんだ。大卒だから私より年上。男の子なんて言ったら失礼だけどね。


「やるよー! やれば終わる!!」


 ぐだぐだ言っててもしょうがない。こちとらクリスマスもお正月も、商品の箱詰めしてんのよ! ゴールデンウイークが、なんぼのもんじゃい! 


 ピザ休憩を挟みながら、終電近くまで梱包を続けた。

 そこそこ片付いたので、中村くんを終電で返す。あとは社長と二人きりの時間だ。ウレしくねー。


「アオイくん……なんか汗くさいな」

「……すみませんね。昼間、サッカーの応援に行ってました。寮に帰ってシャワー浴びて寝る予定だったんですがねぇ~」

「正直、すまんかった」


 それは……いや、その鬼嫁の旦那さん的な謝罪。素直な気持ちは嫌いじゃないけどね。


「ところで、アオイくんはサッカー好きなのかね?」

「いえ、全然わからないですよ。ルールも知らないし。ただ、もうすぐワールドカップなんで便乗しておこうかと」

「ワールドカップかぁ……。新店の準備と通販の対応で何も考えてなかったよ。アオイくん、店長と相談して何か考えてくれよ」

「今からですか? もう今月ですよ、ワールドカップ!」


 なにその、ムチャ振り! また仕事増えたじゃん……。

筆者からの、お願い


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