11-4 写真撮影とホームページとデジカメと
最初期の一眼レフデジカメの画素数は、そのまま印刷に使えませんでした。パソコンに取り込んで加工してみたり、いろいろやった挙句、写真プリントして製版原稿で入稿すればいいという結論にいたりました。
案内所に置くチラシや夜遊び系の雑誌には、そうしてプリントして入稿したという設定にしています。
「株式会社BAKIA……。BAKIAって、あのBAKIAですか?」
「左様でござる」
ウチの社長がバキさんの前で固まっている。
バキさんを引き合わせるから、バキさんが来店する日にウチの社長を呼んだだけなんだけどなぁ……。
「ほかならぬアオイ殿の頼みでござる。受けましょう」
「ありがとうバキさん!」
「……」
あっ、なんかウチの社長が震えている。
「そちらの予算でお受け申すので、心配ご無用でござる」
「は……ははぁ~」
ああ、社長と店長が平伏している。なに、この展開?
◆◇◆
ウチの社長とバキさんを引き合わせてからの動きは早かった。
ホームページの件は、バキさんの会社の若い社員が担当についた。かわいい系の男子、野本くんだ。絵里奈さんや舞さんが喜んでいる。たぶんバキさん、ワザと担当につけたよね?
その野本くんがプロのカメラマンを連れてやってきた。
美由ちゃんの写真だけ撮るのかと思ったら、顔出しOKキャスト全員の写真を撮りなおすんだって。ちょっと待ってよ、だったらイロイロ準備したのに〜!
お店の一角に撮影スペースが設けられていた。なんか大きな傘みたいなライトスタンドが左右に2本立っている。
ライトが当たるセンターに美由ちゃんが立っていた。普段より露出が際どいキャバドレスだ。見えそうで見えない。ギリギリでチクビームを回避している。
カシャッ、ピピピピ……。カシャ、ピピピピ……。
カメラのシャッターの音、ストロボの光とチャージ音。本格的な撮影現場を初めて見たよ。テンション上がるね〜。
「はい、ちょっと休憩。メモリチェンジするね」
メイクのお姉さんが美由ちゃんに駆け寄った。なんか、汗拭きみたいなので顔をポンポンしている。
カメラマンさんを見ると、ケーブルを取り出してカメラとノートPCを接続した。
へ〜、この時代でも一眼レフのデジカメなんだ。
「このデジカメって、どのくらいの解像度で撮れるんですか?」
あ、おもわず聞いてしまった。
「おっ、興味あるの? これね533万画素で、3008×1960ピクセルで撮れるんだ。今年の5月に発売されたプロ用だよ」
「533万画素?」
令和のスマホだと4800万画素とかあったよね? まあ、カメラの性能は画素数じゃ決まらないってパパも言ってたしなぁ……。
「ほら、見てごらん。きれいに撮れているでしょ?」
カメラマンさんがノートPCの画面を見せてくれた。
「わぁ~、キレイに撮れるんですね!」
「ちょっと印刷サイズには画質が足りないんだけど、ホームページなら十分かな?」
「印刷の時はどうするんですか?」
「写真プリンターで出力して、それを改めて印刷所に入稿するんだ。一旦アナログにすると、できちゃうんだよ」
「すごい、魔法みたいですね!」
「ちょっと、葵ちゃん! 私の撮影よ」
ひぇぇぇっ、美由ちゃんに怒られた。あやまろう。あ〜い、とぅいまてぇ〜ん! えっ、時代が違う? すんまそん。
とりあえず、カメラマンさんに名刺をもらった。小山さんっていうんだ。今度カメラを教えてもらおっかなぁ〜。
◆◇◆
撮影が終わって数日。
立派なホームページができていた。もちろんPC版とモバイル版、両方だよ。
メインのビジュアルは美由ちゃん。性格はともかく、見た目は超絶美少女だから映えるよね。セクシーグラビアもあったりするのよ。ハアハアハアしちゃう。
私を含めて顔出ししているキャストは撮り下ろしショットがある。美由ちゃんほど枚数はないけどね。PCだと壁紙、モバイルだと待ち受け画像がDLできたりもする。
私? もちろん美由ちゃんを待ち受けにしたよ!
「出勤のスケジュール更新はですね……」
事務所の隅で野本くんが店長とボーイの二人に説明している。モバイル予約とか、イベント情報のメール配信とか、いろいろできるようになった。そのぶん、店長たちは大変だね~。がんばって、使い方をマスターしておくれ。
あ、そうそう! 私たちキャストのブログもあるのよ。
「ブログ? ブログってなんだ、アオイ?」
絵里奈さんに聞かれた。この時代だとブログって一般的じゃないのか。ブログってネットでも古典的なものだと思ったけど、違うのね。
「インターネット上に書く日記みたいなもんです。プライベートをチラ見せして親近感を高めるんですよ〜。まあ、ほぼ宣伝でいいと思いますけどね」
「ふ~ん、携帯だ、モバイルだって、やることばかり増えるね、まったく」
絵里奈さん、もう完全に昭和のオバチャンだよ。
「それにしてもアオイの太客、本当に太い人な。あの人ってBAKIAの社長だったんだな。すごいなアオイ。BAKIAだぞ」
なんか……バキさんの会社ってモバイル系では日本有数の企業らしいのよ。普通だったらウチみたいなエロい店の仕事なんか受けるワケがないの。というか、常識で考えて仕事を頼めないレベルなんだって。
だから業界的には、ちょっとした事件になっているらしいのよ。
また私、何かやっちゃいました?
いや、今回もホントにやらかしてるから、マジで。あやまろう。
ごめんねごめんね〜。
だから、また時代が違うって! ……ごめんちゃい。
あれ?
BAKIAって会社、令和の時代にあったかなぁ?
気になってしまった。
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