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令和のオタク女子大生が西暦2000年に転生したら借金少女だったので歌舞伎町で働きます  作者: 昼夜兼行


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11-2 夜の乙女の恋愛。その傾向と対策について考える

ホストクラブ専門の匿名情報交換掲示板が誕生したのが2001年4月。

当初はコアなホストファンや夜職関係者の情報交換サイトみたいな感じだったのですが、のちにキャバクラや風俗など水商売全般の総合掲示板に発展していきます。

アオイの情報も、ここに書かれていたという設定です。


「私……健斗お兄ちゃんと結婚する」


 寮で出勤の準備をしていたら、美由ちゃんが寝ぼけたことを言っている。


「美由ちゃん、借金いくら残っているの?」

「えっ、借金? 3253万円だけど……」

「それを広石さんに背負わせる気? 3000万円ってサラリーマンが住宅ローンで、30年とか35年で返す金額なのよ。広石さんって普通のサラリーマンでしょ? 3000万円の借金を背負わせていい相手じゃないと思うのね」

「あっ……」

 

 美由ちゃんが目を丸くした。何も考えてなかったね、これは。

 恋は盲目、小岩は江戸川区、川を渡れば市川市。先走る気持ちはわかるけど、冷静に。

 広石さんは大手出版社勤務。たしかに今の給料は高いかもしれない。でも、出版業界って10年後、20年後は大変なのよ。たまには役立つ未来の知識。

 まあ一応、広石さんの勤務先は令和の時代でも生き残っているけどね……。


「何をするにしても、まずが借金を返して身軽になってからだよ」

「そっかぁ……そうだよね」


 うつむいた美由ちゃん。

 しばらく固まっていたけど、急にムクっと顔をあげた。なんか急に携帯を取り出して数字ボタンをポチポチしている。


「美由ちゃん、何してるの?」

「計算。あっ、なんかメモするものある?」

「えっ、チラシの裏でよかったら」


 美由ちゃんは渡されたチラシをテーブルに置くと、ものすごい勢いで数字を書き出していく。返済シミュレーションを計算しなおしていた。相変わらず細かい字だね……。


「毎月100万円で3年弱、2年で返そうと思ったら120万円かぁ……」


 計算し終えた美由ちゃんがテーブルに突っ伏した。

 うん、気持ちはわかる。働けど働けど猶わが暮らし楽にならざり。やがて手が出る足が出る……ちょっと違うか? 


 おっといけない、そろそろ行かなきゃ! 借金返済は美由ちゃんだけじゃなかった。


「美由ちゃん、ごめん。借金取りの田中さんと待ち合わせがあるから先に出るね」

 

 ◆◇◆


 西新宿の喫茶店。借金取りの田中さんが、お金を数えている。

 最近、返済額が増えてきた。お客様ノートを作った成果が出ているのかな?


「80万円。今月は多いな。これで残りは……1508万1192円だ」

「えぇーっ、まだ1500万円も残っているの~」

「まあ、まあ、まぁ……。先は長いんだ。しっかり頼むよ」


 借金返済、道半ばどころか、まだ4分の1。先は長いよ、ほんと……。

 でも、私でコレなんだから私以上の借金女王は、もっと大変なんだろうね。そりゃ、テーブルに突っ伏しちゃう気持ちもわかるよ、うん。


「……そうだ、田中さん。私みたいに借金を抱えていても結婚できると思います?」

「なんだい急に……。好きな男でもできたのかい?」

「いや、私じゃないですが、結婚したがっている子がいまして……」

「で、その子はいくらあるんだい、借金?」

「私の倍くらいです」

「倍か……3000万は多いな」


 田中さんが腕組みをした。少し考えて、話をつづける。


「いやね、佐藤さんなら結婚できると言おうと思ったんだ。このペースなら……あと2年くらいで借金完済できる。2年待ってもらって結婚なら、ありえる話だろ?」

「そんなもんですかね……」

「佐藤さんは、あの歌舞伎町の売れっ子ホストの女なんだろ? 早く結婚しないとモテる男は大変だぞ~」


 売れっ子ホスト……キヨミヤ? キヨミヤなのか!? なんで、そんな話に??


「ちがいますよー! 田中さん、どこでそんな話を?」

「借金取り界隈では有名な話だぞ。なにしろ、取り立て相手にはホストで借金抱えた女が多いからね。あんた、刺されないように気を付けな。ハッハッハッハ……」


 田中さんは笑いながら席を立った。いや、笑いごとじゃないじゃん……。

 キヨミヤ、てめーっ!

  

 ◆◇◆


 折よく、ではないけれど、その日はキヨミヤが口明けの客だった。


「オレは何も言ってないよ。ただ……」

「ただ、なによ?」

「オレの行動を追っかけてる女がいるのよ。なんというか、ストーカー? オレが足しげく通っている店も知られているってワケ」


 ということは私が店の前でキヨミヤとチューしてたのも見られていた?

 それ......ヤバくね? おまわりさん案件じゃん。


「言っとくけど、その女は客じゃないからな! 一応オレもプロだから、客のケアはちゃんとしているつもりだよ。でもな、客じゃない女まではケアできないぜ」

「客じゃない女に、なんでストーカーされてるのよ?」

「オレ、けっこう売れてるだろ? 雑誌なんかにも出るからな。客として店に来たことはないけど、勝手にファンになっている女もいるんだよ。そいつらがネットの掲示板に書き込んだりして、ややこしくなっているらしいのさ。ネットとかわかんねーからなぁ」


 匿名掲示板か……。令和の時代だと掲示板は、あまり見ないよね? この時代に来て私もネット掲示板を覗くようになったけれど、カオスそのものだと思う。

 うわぁ……私、なんて書かれているんだろう? 気になるわ〜。


「キヨミヤの子分にネットに詳しい子もいるでしょ? とりあえず私に対しての誤解だけは解いておいてよね」

「ああ、じゃあ詳しいヤツに頼んでおくわ」


「なあ、アオイ」

「はっ?

「オレの嫁にならないか? これでもオレ、けっこう貯めてんだぜ。二人で店でもやろうや」


 えっ、なにそれ、プロポーズ?


 だが、断るっ!


 ふっふっふっ……キヨミヤよ、ナメてもらっては困る。私の借金の残額は1500万円。 キヨミヤの貯金額より多いぞ、たぶん。


「はいはい。話半分に聞いておくね」

「おいおい、オレのアオイへの気持ちは本物だぜ」


 卵の四角と女郎の誠。あれば晦日に月に出る。

 夜の世界なんて、そんなものよ。 

筆者からの、お願い


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