7-5 夜の世界は持ちつ持たれつ
夜の業界で働く女性にとってホストは、自分の映す鏡のような存在です。
多くの男性客をハマらせる嬢は、ホストにハマりやすい傾向があるとか、ないとか?
実際に当時からホストにハマる夜の嬢は少なくありませんでした。
4月も後半。ゴールデンウイークも近づいた平日だった。
「おー、アオイ! 来たぞーっ!」
誰かと思えばホストのキヨミヤだ。
キヨミヤは開店直後の早い時間に『ピンクシャドウ』にやってくることが多い。
1セットだけチュッチュして自分の店に出勤していく。
自称「売れっ子ホスト」の割にヒマじゃね?
「ほぉ……この店のお姉さんたちは、そんなに若い子が好きなんだ」
「うん、もう飢えた野獣のようにガツガツ食いついていたよ」
「へっへっへっ……いいことを聞かせてくれた」
キヨミヤが携帯メールを打ち出した。
ほくそ笑むというか、すご〜く悪人顔になってるよ。
「ふぅ……やっぱりアオイはオレの女神だね」
テーブルにキヨミヤが携帯を置いた。
ぐいっと、私の肩を抱き寄せる。
「ウチの若いのが5人ばかり来る。VIPを押さえてほしい」
「VIPルームを?」
「な〜に、お姉さま方へのサービスさ」
キヨミヤが耳元でささやく。
振り向いたら目が合った。絶対に悪だくみをしている顔だ。
悪い顔のキヨミヤ、ちょっと男前だと思っちゃった。
なんか、ちょいワルにホレる女の気持ち、少しだけわかるね。
ざわざわ……ざわざわ……。
お姉さま方が騒がしい。
キヨミヤがメールをして15分。若い男、しかもイケメンが5人もやってきた。
誰がヘルプでVIPに入るか、モメてるみたい。店長が頭を抱えている。
まあいいや。お姉さま方は放っておいて、キヨミヤと若手ホストくんたちをVIPルームへ案内しなきゃ。
大きいほうのVIPルームは、14〜15人入れる広さ。ちょっと豪華なカラオケルームだと思ってね。
「お前らわかってるな。アオイはオレの隣。あとは、ほかの女が来てからだ。うまくやれよ」
「「「「「はい! キヨミヤさんっ」」」」」
なんだ、この体育会みたいなノリは?
というかキヨミヤがリーダーっぽい。カッコいいじゃん。
スパァン!
勢いよく、VIPルームのドアが開いた。
いや、勢いよく開けちゃだめでしょ。
「アオイのサポートは任せてほしい!」
「私たちが、しっかりお相手させていただきます!」
「ペロペロさせて!」
絵里奈さん、舞さん、蘭さん……。肉食女子三銃士が来ちゃった。
ほんと、お姉さま方はイケメンと若い男が大好きみたい。
まあ、キヨミヤのイケメンは自称に過ぎないけど、今回連れてきた若手ホストは普通にイケメンだからね。食いつくのもわかる。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ……!
女たちの熱量が、すさまじい圧力で迫ってきた。
ぞろぞろ、ぞろぞろと、VIPルームの中に入ってくる。
あれれ……人数、多くね?
キヨミヤと子分が5人だ。男性客に一人ずつ女性キャストがつくとして、キヨミヤには私がいる。ヘルプは5人いればいい。
ヤル気まんまんの肉食女子トップ3、絵里奈さん、舞さん、蘭さん。
杏奈っちと聖羅、華恋。年齢不詳のベテラン奏さんと美緒さん。
「ごめんねアオイちゃん。あの3人が無理やり店長に言って割り込んできたの」
杏奈っちが、こっそり耳打ちしてきた。
そんなことだと思ったよ。
いいのか、店長。ヒマなのか、ウチの店?
「うわあ、すてきなおねえさまたちに囲まれて、夢のようだなあ」
キヨミヤが棒読みセリフを口にする。
若手ホストくんたちが、動き出した。女性陣と距離を詰める。身体が密着した。
「ふっ……見てろよ、アオイ」
私を抱き寄せて髪をなでるキヨミヤ。不敵な笑顔だ。
しばらくして、お姉さま方と若手ホストくんたちが手を握って見つめあっていた。
恋する乙女の顔になってるよ。
いつもは男のチ〇ポをシコシコしてニコニコしているのに、ナニよそれ!?
お姉さま方にも、乙女の心があったのね。
ああ、肉食女子が捕食される側に堕ちちゃったよー。
ホストって……ヤバい。
キヨミヤは私の身体をまさぐりながら、ときどき目で若手に指示を出していた。
なんかムカつくけど、カッコいい。
これで早漏じゃなかったら、ホレてもいいね。
◆◇◆
VIPルームの戦いはキヨミヤ率いる若手ホスト軍が圧勝。
1時間ちょっとの攻防戦で、肉食女子軍団は壊滅した。
エレベーターまで見送りに来た女性陣は、もう従順な子羊になっていた。
イケメンたちは最後の一押し。お姉さま方にハグ攻撃だ。
「わたし……会いにいくわ」
「アタイのこと好きにして……」
「ペロペロしたい」
もう、完堕ちしてるじゃん。
普段、自分たちがやっていることなのに、逆にやられるとコロっとくるんだね〜。
私はキヨミヤたちとエレベーターに同乗。ビルの前まで見送りをする。
「いや〜姐さん、マジで神っす! 助かりました」
「姐さんの顔立てるためにも、あとは俺らに任せてくださいよ」
「あざっす」
「あざっす!」
若手たちに直立不動であいさつされた。
う~ん、この雰囲気。既視感があるなぁ……。
「なっ、オレの女はスゲーだろ?」
キヨミヤが私にキスをした。
おいキヨミヤ、ここはビルの出入口。道路は人も通っているのよ。
そこでキスとか、さすがに恥ずかしいじゃん?
「うひょーキヨミヤさん、姐さん、ハンパないっす」
キヨミヤはずっと、私の腰に手をまわしている。
なんか私、キヨミヤの女ってことにされているんだけど?
まあ、いいか。
この世界は、持ちつ持たれつ。
ぐるぐる回る、夜のマネーロンダリングだね。
今度また、キヨミヤから分捕ったろ〜。
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