7-2 持つべきものは身近なライバルと、いろんな意味で太い客
ブルセラは1990年代中盤から後半にかけてがブームでした。
2000年代に入ると急速に廃れていきます。
東京都では「青少年の健全な育成に関する条例」が改正され、店舗が女子高生からの買取が難しくなりました。
この条例の施行が、物語の舞台となっている2001年。
『ピンクシャドウ』の社長がコスプレて失敗した…….というのも、このあたりの世相を反映しての設定です。
新しい店『ピンクシャドウ』で働き始めた。
お店の仕事は基本的には『SEXY CLUB ZUNDA』と変わらない。わりとスンナリ馴染めたと思う。
私も美由ちゃんも週6でバリバリ出勤している。
バリバリ働いて、借金返さなきゃ!
「アオイさん6番テーブル、3名様ご指名です」
「は~い」
少しずつ指名も入るようになってきた。今のところ順調だね。
「あ~っ、バキさ~ん!」
「アオイ殿、来ましたぞ……セーラー服でござるか?」
「ふっ、ふっ、ふっ……この店はコスプレありなのりゃぁ~」
そうそう、今日の私の衣装はセーラー服!
コスプレ用のやすっちいのじゃなくて、どこかの高校の中古らしい。
ブルセラ? ブルセラってやつ、これ?
「なかなか似合っておりますぞ、アオイ殿」
かなり気を使ってほめてくれたバキさん。
今日は部下を二人連れてきてくれている。若い社員だ。
バキさんは『ZUNDA』でも部下を連れて来ていたけど、二人とも初めて見る顔。バキさんの部下、何人いるんだろう?
「それにしても、元気そうで安堵いたした」
「ちょっと高い店になっちゃって、申し訳ないなぁ~なんて、エヘっ」
「いやいや……落ち着いていて接待にも使えそうな店ではござらんか。アオイ殿は良い店に移ってくださった」
「そう言ってくださるとホッとします。ありがとうございます」
私がバキさんと話している間も、ヘルプに入った舞さんと杏奈さんがお酒を作ってくれていた。
舞さんは爆乳Fカップ。杏奈さんも爆乳だ。二人ともドレスからおっぱいがこぼれそうになっている。
若い社員たちは落ち着きなくキョロキョロしていた。こういう店に慣れていないみたい。
まあ、目が行くよね、おっぱいに。
「そうそう、バキさん。この店って、いつでもおさわりOKなんですよ。さわります?」
「拙者はよいでござるが、うちの若い衆には楽しませあげませんとな」
「「社長……!」」
だよねー、だよねー。ウチの爆乳戦隊をモミモミしたくなってるよね、若手くん。
「とはいえ、さすがに指名もせぬのは忍びない。アオイ殿、店員さんを呼んでくだされ」
「りょうかいで~す!」
「えっ、指名をもらっちゃっていいんですか?」
「そのかわり……でもござらんが、若い者にサービスをお願いしますぞ」
「「ありがとうございます」」
爆乳戦隊の二人が恐縮していた。
いや、むしろ私のぶんまでモミモミされるので、こちらが恐縮してしまう。
バキさんは舞さんと杏奈さんに場内指名を入れて、若い社員に付けてくれた。これで遠慮せずにモミモミできちゃうね!
あ、ついでにピザも頼んでくれた。もう〜大好き、バキさん。
若手クンたちが元気に爆乳をもみしだいている横で、私とバキさんはピザを食べている。意外にも冷凍ピザじゃなかった。けっこうおいしい。侮れないぞ。
「ほほぉ〜。アオイ殿は引っ越されたのでござるか」
「うん、お店の寮……もぐもぐ」
「寮でござるか?」
「あ、寮っていっても、普通のワンルームマンションだよ。ミユちゃんと相部屋」
「相部屋でござるか。そこは甘くないですな」
「でも、ミユちゃんが料理得意だから、食生活は改善したかな?」
美由ちゃんは栄養バランスも考えてくれている。嫁を通り越してママって感じ。本物ママの唯依よりもママっぽいよ。
「しかしワンルームにベッド二台は手狭でござろう?」
「あ、ベッドは一台で寝てます。曹操と関羽みたいな感じで」
「曹操と関羽だと結末が不幸になりそうですぞ」
「じゃあ、アレクサンドロスとヘファイスティオンにしときます」
「アオイ殿は、やおい女子でござるな」
「いえいえ、ただのBL好きな腐女子にございますよ……」
「BL好きな婦女子……うん、なるほど」
なんか一部、かみ合っていなかった気がしないでもない。
バキさんもオタクだとは思うけど、BLはカバーしてなさそうな感じだった。
う~ん、とりあえず「やおい」って「BL」の旧称でOK? あと「腐女子」って、この時代でも通じるの? 教えて! エロい人〜。
バキさんたちは日付が変わるまでいてくれた。エレベーターまで見送りだ。
ちょうど美由ちゃんも見送りで来ていた。
「ありがとう、今日は楽しかったわぁ……」
そう言って美由ちゃんは、お客さんにハグした。見事な営業スマイルだ。
心なんて1ミクロンもこもっていないけど、まず間違いなく男はダマされちゃうね。
うゎあ……こういうところなのよ、美由ちゃんが強いのは。
よし、私もやってみるよ!
「バキさん、今日は楽しかったお〜」
バウ〜ン……。
バキさんは太すぎる。ハグというより、ぶつかり稽古だよ〜。
バキさんって横幅だけじゃなくて、身長も180㎝くらいあるからね。
あれ、ひょっとして痩せたらイケメン?
「まあまあ、アオイ殿……。また来るでござるよ」
「おやすみなさい」
バキさんたち、お客さんを乗せたエレベーターのドアが閉まった。
「お疲れ、葵ちゃん」
「美由ちゃんも、お疲れちゃ~ん」
「今日も稼いだね」
「うん、そっちもね」
私たち二人は、24時間ほとんど同じ空間で過ごしている。まさに、一心同体、少女時代……なんか違うか?
とにかく、いつでもいっしょなのよ。
私は美由ちゃんが好き。でも、負けたくない。
負けたくない。勝てなくても負けたくない。
いつもそばにいる大好きな人だから、隣に並び立てる存在でいたいと思う。
たとえ、それが夜の歌舞伎町であっても。
まあ、ベッドの上では私が勝ってるんだけどね!
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