6-7 貧乳キャラの私でも映えるコスプレがあるんですか?
葵は小柄ではありません。
身長162~163㎝はあります。
小柄なのはバストサイズだけです。
さーて、準備もできたし、いよいよ体験入店スタートだ。
バックヤードの待機所で出番を待つ。
お姉さま方を見ていると、普通のキャバドレスが半分。あとは思い思いのコスプレだ。
人気はセーラー服とチャイナドレス。アニメ系のコスプレは見当たらない。
誰かプラグスーツを着てあげてよ。
「絵里奈さん、舞さん、それと体験入店のアオイちゃん。4番テーブル。フリー3人。お願いね」
「はい、よろしくお願いします」
さっそく出動命令だ。先輩お姉さんにくっついて行く。
4番テーブルは、ネクタイ姿のサラリーマン二人とセーターを着たメガネおじさんが一人。
たぶん、接待だ。
「絵里奈です、よろしくお願いします」
「舞です」
「アオイでーす」
接待される側のメガネセーターに絵里奈さん、上司に舞さんが付く。
私の相手は責任がなさそうな若手社員となった。まあ体験入店だから、こんなものだろう。
「いかがでしょう、先生? この店では、こんなこともできましてね……」
サラリーマン上司が舞さんを抱き寄せた。見せつけるように、大げさに身体をまさぐってみせる。
そして同時に絵里奈さんと私に目で合図を送る。
「いかがですか、先生も……?」
絵里奈さんが肩ひもを落とすと、ドレスの胸元が大きくはだけた。
わぉお、巨乳! Fカップ? Gカップ? 爆乳戦隊に入れそう。
「あっちは、大きいですね……」
私の横で若手社員が私の胸を見ながら、ため息をつく。
たしかに葵ちゃんボディーはAカップ寄りのBカップだけど、ウルトラスーパーデラックスなんだからっ!
フフンッと胸を張ってみせたら、憐れな子を見る目をされた。なによ〜!
私と若手社員の悲惨な戦いをセーター先生が眺めていた。
人は偉くなるほどスーツもネクタイも不要になる。この法則にしたがえば、この「先生」も偉い人だ。知らんけど。
「ボク、そっちのブルマの子がいいなぁ」
「お言葉ですが先生、かなり胸が寂しい子ですよ」
「わかっていないね、キミ〜。ブルマの子……アオイくんだったかな? こっちにおいで」
なんか先生に呼ばれちゃったよ。というわけで先生の隣に移動〜。
「アオイです。よろしくお願いします」
「うん、かわいいね、キミ」
席につくなり先生に抱き寄せられた。Aカップ寄りのBカップを愛おしそうにナデナデしている。
この人は……本物だ!
ナニかはわからないけど、本物のオーラを感じる。
「いい胸だ」
「ありがとうございます」
「ロリというには少し背が高いけど、純朴な田舎の少女のように愛らしい。ブルマも体操服も似合っている」
おおおっ、なんかベタほめじゃん、私!
まあ……純朴な田舎少女じゃなくてヤンキー娘だったけどね。
「恐縮です……」
「アオイくん、キミは自分の魅力に無自覚すぎる。キミは大人の魅力じゃなくて少女っぽさが魅力なんだよ。胸が小さいと嘆くより、その小ささを前向きに活かすべきだ」
ドカァァン!
雷に打たれたような衝撃を感じた。
(そうだ、そうだ、そうだ、そうなんだぁぁぁ!)
「少女らしい愛らしさと清純さが引きたつ衣装がいいと思う。セーラー服でもいいし、アニメでもゲームでもいいし、そのへんは勉強だね」
「ありがとうございます、先生。参考になりました!」
「うん、その意気込み。いいね、キミ! 指名してあげよう」
「ありがとうございます」
なんか場内指名までもらっちゃったよ! うれしいね〜。
でも、ほんと、この先生の言うとおり。コスプレって私の魅力を引き出す武器じゃん。
これで勝つる!
いや、フラグ立てちゃだめだってばよ!!
先生は2時間近く私をナデナデして帰っていった。
いろいろオーダーしてくれたんで、けっこうな売り上げだ。
拝んでおこう。ありがたや、ありがたや……。
あっ、結局、誰なのか聞かなかったよ。
先生って誰だったんだろう? サインもらっておけばよかったぁ〜!
◆◇◆
そんなわけで、私にとって収穫の多い体験入店は終わった。
「どうだった、美由ちゃん?」
「稼げる気はするわね。でも、できればVIPルームを体験しておきたかったかしら?」
「私もVIPルームは入ってない」
「そこは不安要素かしらねぇ……」
私と美由ちゃん。靖国通りを並んで歩く。
「ねえ、美由ちゃん。私はこの店、いいと思う」
「迷っているのよ。『イクっのほそみち』も良かったから……」
「じゃあ、もう少し考えて決めよう」
「うん、ほかの店も調べてみたいしね……」
深夜になっても人通りは絶えない。
ほんと、眠らない街、歌舞伎町だ。
私たちの落ち着く先は、どこになるのかなぁ~。
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