6-6 コスプレと「おさわり」。夢の合体。楽しいよね?
今はキャバクラなど夜の店でもゲームのアニメのキャラクターコスプレは珍しくありません。
でも、まだ2001年ごろだと夜の店では一般的ではなかったんです。
コスプレというと、ミニスカ婦人警官やセーラー服、ナース服といった職業系(?)が中心。
もうコスプレ衣装の専門店はありましたし、ド〇キでもセーラ〇〇ーンっぽい服は売っていたんですが、夜の店に入ってくるのは、もう少し時代が後になります。
完全にネタ枠だと思っていた和風セクシーパブ『イクっのほそみち』が、かなり好印象だった。
「店長さんも奥さんも、いい人だったし、お客さんの質もよかった。お店の雰囲気も、衣装も好き」
「でも、稼げるかどうかは、少し不安があるかしら?」
「たしかに、場所がわかりにくいもんね~」
有力候補ではあるんだけど、問題点も見えている。
ただ、体験入店した店の中では『VELUTINA』を抜いてナンバーワン候補。
ほかの二つが無理すぎたから、もう少し候補を増やしておきたい。
例のHPからピックアップした店は、まだまだ残っている。順に当たっていこう。
◆◇◆
というわけで、今日も私と美由ちゃんは体験入店だ。新宿区役所の前に来ている。
あ、もちろん新宿区役所に体験入店するワケじゃないよ。向かうのは通りの反対側。
地上10階地下1階、ほぼキャバクラやスナックが入居するビル。その3階『ピンクシャドウ』が、今回の目的地だ。
エレベーターで3階へ。『PINK SHADOW』の看板があった。
おお、看板がかっこいい!
ピンク色のチョークを上手に躍らせて、何十本もすり減らし、汗も拭かずに塗りつぶしたようだ。
「あ、電話をくれた体験入店の子?」
「「はい」」
入口の前でボーイさんが待っていてくれた。私たちより少し上くらいの若い人だ。
ドアを開けて中に入ると、内装もカッコいい。
黒とピンクで内装が統一されている。ピンクが下品じゃなくてクールなのよ。めっちゃセンスいいの!
「店長、体験入店の二人を案内しました」
「ご苦労、中野くん。仕事にもどって」
ボーイの中野くんは入口方面に戻っていった。
「まあ、座って」
「「失礼します」」
店長は30代後半くらいだろうか。少し強面だけど、落ち着いた雰囲気のイケオジだ。
『ピンクシャドウ』は高級キャバクラを改装した店舗。私たちが腰かけたラウンジチェアもアンティーク調で、センスがいい。
「大変でしたね『ZUNDA』の件」
「はあ……」
いや、ホント、どこに行っても、その話になるなぁ……。
「ウチも気を使っていまして、通常のフロアの接客は過激ならないようにしています」
「……ですよね~」
店長の話をまとめると、おさわりは常時OKだけど、下半身へのタッチはなし。キスはキャストの裁量で、軽いキスくらいならOKらしい。
かなり配慮した内容だ。
軽いキスと軽くないキスの基準は謎だけどね。
「ただし、VIPルームの利用は特別。どんなサービスをするかはキャストが、お客さんと話し合って決められる」
「VIPルーム……ぅ??」
「あ、そうか、葵ちゃんはVIPルームは入ったことないんだ」
「ちょうどいい、じゃあVIPルームを見に行きましょう」
店長に案内されVIPルームを見せてもらった。
初めて見たよ、VIPルーム! めちゃくちゃ豪華なカラオケルームって感じ。
「だいたい14〜15人は入れます。反対側にも一部屋あります」
「でも、高いんでしょ?」
「そこまで高くはありません。人数で割ったら一人数千円です」
「VIP料金はバックの対象になるのかしら?」
「もちろんです。積極的にVIPルームへ誘ってください」
「それで『特別サービス』はあるのかしら?」
店長の言葉が止まった。
さすが美由ちゃん、VIPルームの「ナニか」を知っている様子。
いろいろな「接待」とかで使われそうだもんね。
「VIPルームだからといって過激なサービスは必要ありません」
「本当かしら?」
「というのは建て前です。VIPルームで何をするかはキャストとお客様、それぞれの合意で決めてください」
「特別サービスは拒否しても問題ないのかしら?」
「問題ありません。合意を尊重します」
なんかシビアなやり取りで、入っていけない。あとで美由ちゃんに聞こう。
「葵ちゃん、何か質問あるかしら?」
「えっと、衣装ってどうなりますか? 私、ドレス持っていないんです」
「それでしたら、衣装部屋を見てもらいましょう。こっちです」
バックヤードの衣裳部屋に案内された。
なんか見覚えのあるデザインの制服。第3新東京市の中学だよ。とすると、この全身タイツは……プラグスーツ?
「……エ〇ァ?」
「はい。うちの社長が昔コスプレショップで儲けようとして失敗しまして、その売れ残りです」
「着ましょう! いえ、着させてください」
「いや、その全身タイツはちょっと……」
美由ちゃんが露骨にイヤな顔をした。いいじゃん、全身タイツも。ねー?
「ナース服やセーラー服、レースクイーン、チアガール。とにかく種類だけは多いので、好きなのを選んでください。もちろん普通のドレスもありますよ」
なんか店長が察したみたい。
衣装部屋を物色してみたけど、アニメ系はエ〇ァくらいだった。ただ、もう種類だけはいっぱいある。あり過ぎて悩む……。
「葵ちゃん、どれがいいかしら?」
「美由ちゃんは、脚が長いからレースクイーンとか、ビールのキャンペーンガールが似合うと思うよ」
「う〜ん、じゃあレースクイーンにするね。葵ちゃんは?」
「私は体操服にする。ブルマって着てみたかったしね」
「葵ちゃんの学校、ブルマじゃなかったの?」
あ……そうか、今の私・葵ちゃんの年齢だと平成初期は小学生だ。体育はブルマが当たり前だったのかもしれない。
どうしよう? なんか言い訳を……あっ、これだ!
「ほら私、仙台じゃん? 寒いからトレパンか体育ズボンよ~」
「仙台のほうって、そんな感じなんだね。じゃあ葵ちゃん、体操着に決まりだね」
衣装に着替えた美由ちゃんがカッコいい!
コスプレじゃなくて本職のレースクイーンに見える。
私は……マジでガキンチョに見えるから、本職でOK? いや、それ職業じゃないから!
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