6-1 路線変更で稼げなくなったので他の店を探します
仙台から歌舞伎町に来た店が路線変更。
当時、実際にあった話だったりします。
『SEXY CLUB ZUNDA』の営業は1月5日からだった。
マイハニーの美由ちゃんに会うのも1週間ぶりだ。
「美由ちゃん、おみやげだよ~ん」
仙台みやげといえば、これ「喜〇福」。某アニメでも話題になっていた生クリーム大福だ。仙台駅で見つけて、ソッコーで買っちゃったね!
「ありがとう、葵ちゃん。仙台どうだった?」
「うん、用事は済んだ。これで私も東京都民になれたよ」
新年最初の出勤。美由ちゃんと積もる話が止まらない。着替えながらも、なんとなくダラダラとしてしまった。
「お~い、ちょっと、みんな集まってくれ!」
私と美由ちゃんがまったりしていたら、店長の呼び出しがあった。なんか話があるらしい。
「大事な話がある。この店の営業スタイルを変更しなくちゃいけない。ある方面から注意が入った……というか、圧力かな? うちのサービスは公序良俗に反する。そういうことでね」
いまいちピンとこない。公序良俗に反する?
ひょっとして私、なんかやっちゃいました?
「ということで、これからは通常のキャバクラ営業でやっていく!」
ざわざわ……。
急展開すぎる。そりゃ、みんなざわつくよ。
「ちょっといいですか?」
美由ちゃんが口を開いた。みんなの視線が集中する。
「それはつまり、これまでのようには稼げなくなる……と考えていいですか?」
「うん……、そうなるだろうなぁ」
「そうですか……他店に移ってもいいでしょうか? この店に入るときにお話した通り、私は借金を抱えています。稼げないと困るんです」
「ミユさんの事情は知っている。だから引き止めない。ほかにも辞めたい、移籍したい人がいれば、申し出てほしいと思う」
私だって稼げなくなるなら移籍したい。でも、ここは借金取りの田中さんに紹介された店だ。勝手にやめるワケにもいかないよね?
よし、電話だ。
ピ、ピ、ピ……トゥルルルル……。
「あ、田中さん、葵です。あけおめっ」
『おお、佐藤さん、あけおめ。で、なんだ?』
「それが……」
私は田中さんに事情を説明した。
『おう、わかった。店長いるか? いたら代わってくれ』
「店長〜。田中さんから電話なんですが、お願いできますかー」
携帯を店長に押し付けた。
「はい……、ええ、まあ、そういうことに……、はい。はい……」
2〜3分話しただろうか。店長が携帯を返しにきた。
「話がついた。『もっと稼げる店に移れ』だそうだ。アオイちゃん、世話になったね。いい店が見つかることを祈っているよ」
店長が軽く頭を下げた。
私も頭を下げる。短い間だったけど楽しかった。学ぶことも多かったしね。
「あ、とりあえず次の店が決まるまではウチで働いて『しっかり借金を返済するように』とも言ってたから」
あららっ……。まあ、そうですよね〜。
辞めるといっても今すぐではない。借金返済もだけど、代わりの女の子が補充されるまで、しばらくは『ZUNDA』のキャバクラ営業に付き合う必要がある。
逆に言えば、その間に移籍先を見つけたいところ。決まらなくても候補くらいは、絞っておきたい。
それにしても、大変だ。
2001年スタート早々、私は店を辞めることになってしまった。
「ねえ、葵ちゃん、一緒にお店探そう!」
「そうだね、一人より二人のほうが心強いもんね!」
三人寄れば文殊の知恵。二人寄れば、ただの相談。
そいつはいけない。
こういう時にはネットの力。やほーで検索だ!
営業終わりに私と美由ちゃんは、ネットカフェに足を運んだ。
歌舞伎町の西武新宿駅の近くの大型店。
ネットカフェというか、PCが置いてある漫画喫茶という雰囲気だ。「カップルシート」があったので即決! 仲良くならんでネットサーフィンなのだ。
「……なんか、インターネットってすごいね。セクシーパブ情報のHPがある!」
「WIWI……えっ、これ個人サイト!?」
驚いた。夜遊び情報のポータルなど、いくつかの情報サイトをチェックしたけど、そのどれよりも情報密度が濃くて実用的。これが個人HPって、どういうこと?
令和に例えると、個人が趣味でやっているユー〇ューブチャンネルが企業や有名ユー〇ューバーのチャンネルよりデキがよかった……みたいな感じ?
この時代の個人HP、熱量が恐ろしいなぁ。
「この忖度なしの自腹レポートを読むと、だいたいの事情がわかるね」
「ねえ、葵ちゃん、このへんとか、このへんどうかしら?」
「そうだね、メモメモ……」
スマホの写真でメモ代わりから、紙と鉛筆でメモをとる暮らしにも慣れたよ。
さあて、どこから攻めますか……?
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