4-8 聖なる夜に口づけを(それ以上でも可)
2000年ごろのカラオケルームは、とても「自由」な空間でした。ラブホ代わりに使うカップルも珍しくなかったんです。
12月も半ば。世間はクリスマスムード一色である。
女子大生って、どんなクリスマスをするの? 女子会? 合コン? パーティとかしちゃうの?
私っていうか、碧唯は受験生だったからクリスマスも何もなかったんだよね? 女子枠、なにそれ? 私、一般受験よ。倍率高かったんだから〜。
ピロピロリ~ン♪
パパ(真治)からのメールだ。「クリスマスの予定は?」。
ふむふむ……クリスマスにデートをしたい?
無理だ。むりだ。ムリムリ、パパとのデート。
今の私は夜の蝶。クリスマスは稼ぎ時なの。ゴメンなさい。
「メリークリスマス、アオイ! 今日は朝まで離さないよ……」
いきなり美少年。まっくんだった。
「あ、そのリップ使ってくれているんだね」
おお、しまった、この間もらったリップグロスをしてきてしまった〜っ!
なんか勘違いさせたか、私? まっくんは重いからな、感情が。
ピ・ポ・パ・ポ……。
ダウンタイムになった。まっくんだとダウンタイムはハグになる。私としては踊ったほうが気楽なんだけど、まっくんは抱いていたいみたい。
なんというか、まっくん、美少年じゃなかったら事案だよ!
「アオイさん、1番テーブルお願いします」
ボーイさんに呼ばれた。指名のお客さんが来たみたい。
まっくんは不満顔だけど仕方ない。私的には助かった。
「メリークリスマス、アオイ殿。今日は部下を連れて来ましたぞ」
「メリークリスマス!」「メリークリスマス」「メリークリスマス」
「はじめまして、アオイです。みなさんバキさんの会社の社員さんなんですね~」
バキさんが若い社員たちを連れてきてくれた。うれしい!
本指名の「親」はバキさん一人なんだけど、バキさんが連れてきてくれた「枝」のお客さんも私の売り上げになるの。指名のポイントも加算されるんだ。
バキさん。素敵なクリスマスプレゼントをもらったよ。ありがとう~。
私はバキさんの隣、斜め45度に座る。サポートにはメグとナオ、ほのか。それぞれ若手社員の横に座る。新人だった3人も、さすがに接客に慣れてきたね。
「さて、アオイ殿も来られたし、クリスマスケーキを食べましょうかな」
「は、社長」
若手社員さんがテーブルにケーキの箱を並べ、開けていく。
「え~っ、ピエール・エ〇メ・〇リぃ!?」
ヘルプの女子3人がザワつきだした。
え、池袋とか新宿のデパ地下でマカロン売ってる店やん。ケーキ買ったことないけど、高いの? 驚いてあげたほうがいいの、私?
空気が読めない、どうしよう。とりあえず、無難にごまかそう、無難に。
「買ってきてくださったんですか、わぁ~(ハート)」
「いやあ、さすがに仕事があり申して、彼らに買いにいかせたでござる。だから今日は彼らもつれてき申した」
へぇ……。自分の手柄にしないで、部下を立てている。ウチのパパみたいだなぁ。あ、こっちの時代に来る前のパパね!
なんか……IT系の社長さんって、みんな部下を大事にするのかな?
「じゃあ、部下のみなさんにも楽しんでもらわなきゃ!」
ピ・ポ・パ・ポ……。
ダウンタイムの始まりだ〜。景気よく脱いじゃえ、おっぱいポロリン!
見よ、私のスーパーデラックスBカップ! 若手社員さんたちを悩殺しちゃう……って、ちょっと何それ、哀れなモノを見る目は!? バキさん、社員教育が足りないよ!
◆◇◆
クリスマスイベントはにぎやかに過ぎた。
私も美由ちゃんも指名が途切れず、閉店まで慌ただしく立ち回った。
「葵ちゃん、疲れたね~」
「だねー。美由ちゃんも、お疲れ~」
「ケーキもらった、残りがあるよ」
「私もマカロンが残っている」
「じゃあ、カラオケルームでも行って食べる?」
「さんせー」
着替え終わった私たちは、深夜の歌舞伎町に出た。
靖国通りはクリスマスのイルミネーション。イエローゴールドやホワイトの電飾が光っている。ギラギラとしたネオンサインと混ざって、不思議な美しさだった。
「キレイだね、葵ちゃん」
「うん」
私は美由ちゃんと手をつないだ。ユニ〇ロ上下の私。ちょっと背が低いけど男の子みたい。美由ちゃんと並んで歩けば、大学生のカップルくらいには見えるかな?
「わあ、ここも満員で入れないってぇ。さすがクリスマス、どこも空いてないね」
「ねえ葵ちゃん、そこの店が空室あるみたいよ」
私と美由ちゃんは、普段は入らないお店に入った。
ドアを開けたら、全面クッションフロア。 ちょっとテーブルを寄せたら、大人ふたりが完全に寝そべれちゃう。
「葵ちゃん、この部屋、カラオケルームというより……」
「ラブホテル的な部屋?」
ああ〜っ、ドキドキしてきた。
美少女と美少女がラブホのような部屋にふたりきり。
えっ、私も美少女でいいでしょ? たしかに碧唯は疑問符が付くけど、葵は美少女でいいよね?
性格が私だから問題あるって? 顔はかわいいから!
「座ろうっか、美由ちゃん」
「うん……」
並んで座った私と美由ちゃん。ダメだ私。理性が限界点。
美由ちゃんと目が合う。大きな瞳に吸い込まれる。
もうムリ、モームリ、ドキドキ代行モームリですっ!
「大好き……美由が欲しい! 友達じゃなくて、恋人になろう」
「いいよ、葵ちゃんなら」
いいんですかーっ!?
(んむ……っ!?)
美由ちゃんから唇を押し付けてきた!
唇が震えている。鼓動が伝わってきた。ドキドキ……心臓が激しく脈打っている。
おもいきって、そのまま押し倒す。
「ん、んん……っ」と押し潰されたような甘い喘ぎ声が漏れた。
背中に回した手に圧をかけていく。ゆっくり、しっかりと抱きしめていった。
キス、キス、キス、キス……とにかくキス! 激しく、優しく、唇を貪り続ける。
1年前は知らないどうし。ひと月前は友達どうし。
そして明日は……?
嫁? 嫁でいいですか、先生!? 美由たんはワシの嫁で、オナシャス。
筆者からの、お願い
みなさんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどが力になります。続きを書くためにも、どうか評価をよろしくお願いします。




