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0-2 許すまじ電動キックボード無謀運転!

 都の西北われらが母校。文系キャンパスの14号館。学生ラウンジの喧騒の中で、私は友人の「キバちゃん」を待っていた。


「ダイちゃーん! 」


 ぽっちゃり……というかドスコイ寄りのメガネ女子が学生ラウンジを慌てて駆けてきた。わが友・オタク仲間のキバちゃんこと木場弘美だ。

 お互いに「キバちゃん」「ダイちゃん」と呼び合うマブ。いつでもクランバトルに参戦できちゃうね。愛称で呼ぶにしても名前じゃなく苗字なのが、オタクらしくてナイスでしょ?


「遅いよキバちゃん」

「申し訳ござらん。講義の終わりが遅れ申した」


 あ、キバちゃんは帰国子女で、時代劇とアニメで日本語を覚えたから口調が変なだけだから、念のため。これでもシンガポールの実家は大金持ちで、マジでセレブなお嬢様だったりするらしいよ。お嬢様感ゼロだけど。


「ちょっと遅くなったから、時短ルートでバス使おう! 早稲田駅前のバス停から西新宿行きの都営バスに乗れば靖国通りまで一本だよ」

「おっ、早77系統でござるか。よきですな」

 

 打てば響くぞ、お主と拙者。同志の誓いを感じつつ、連れだってバス停に向かう。背が高い私、ずんぐりしたキバちゃん。並んで歩くと女性漫才コンビにしか見えない。どっちがボケというか、Wボケ? どっちもアホっぽいし!


 モビルスーツの後付け設定について話しているうちに、バスは明治通りを抜け靖国通りへと入っていく。車窓から見える景色が繁華街っぽくなってきた。進行方向には新宿駅、奥には高層ビル群が控えている。


 私とキバちゃんは靖国通りのバス停で降りた。 

 バスを降り、賑わう歩道を二人で歩いていく。人が多い。というか外国人観光客が多い。まっすぐ歩くのも大変だ。

 道路を渡れば、向こう側に広がるのは歌舞伎町。東洋一の繫華街だったこともある、欲望の街だ。

 まあ、今の私たちには「あのゲームの舞台」というイメージだったりするけどね。たぶん外国人が多いのも、ゲームの影響が大きいと思う。


 その時だった。


「ワッチアウッ! 」


 キバちゃんが叫んだ。英語の「Watch out!」つまり、「危ない!」って気づくのに時間がかかった。キバちゃんは日本語が苦手だから、こういう時困るよね……って、そんな呑気に考えている場合じゃなかった!

 視線を向けた瞬間、私の目に飛び込んできたのは、凄まじいスピードで歩道を暴走する緑色の電動キックボード(名称自粛)。スマホ片手に脇見運転!? あっ、これダメなパターンでしょ!


「なっ……!」


 暴走する電動キックボード(名称自粛)が、私の身体に猛烈な勢いで迫る。

 なんとか避けようと体を捻った。けっこう運動は得意なのよ。

 なんとか直撃は防げたかもしれない。やったか……!?

 

 グッッ!!!

 

 電動キックボード(名称自粛)のハンドルにカバンのベルトが引っ掛かってしまった。

 そのまま後ろに引き倒されていく……。


(自分でフラグ立てたか……、ああ、受け身を習っておけばよかった)

 後悔むなしく、私の身体はアスファルトに激突した。

 

 ゴツン!


 後頭部を強打した。

 もう痛いのか痛くないのかわからない。星が飛び散るとか、そんなこともなく、視界が急速に狭まっていく。


(えっ、私、死ぬの? 死んじゃうの?)  


 痛みの感覚すら消えていく暗闇の向こうで、キバちゃんの叫びが、遠く遠く、歪んで聞こえた。


「ダイちゃーーーんっ!!!!」


 令和の新宿。私・大工原碧唯の意識はゆっくり消えていった。


筆者からの、お願い


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