1-1 旅立ちは突然に~令和の女子大生・碧唯はナイスバディに憧れる~
旧、ep.1とep.2を1エピソードにまとめました。
以降のep.が1ずつズレましたので、ご注意ください。
おっぱい、でっかい、ボインボイン~♪
いつか育つぞFカップぅ~♪
よし、朝の体操おわり!
AIのおすすめ、全裸体操第1。胸が大きくなるらしい。ホントだよね? 信じているよ、チャッ〇ー!
鏡を見る。
スラッとしたモデル並みのスタイル(自称)に、ショートのウルフカット、くっきりとした目鼻立ち。
われながら男前だと思う。
いや、男前でどうするのよ? 私、女よ。
おっぱい小さいペッタンコじゃなくて、ボインボインになりたいんじゃー!
おっと、そろそろ学校に行かなきゃ。
私は、これでも女子大生。
大工原碧唯、令和の時代を駆け抜けるピチピチの18歳だお☆
こら、そこ笑うな!
大急ぎで服を着る。
ダブっとした太めのデニムに、シンプルな黒のカットソーと白いTシャツを重ね着。
飾りっ気もなけりゃ、化粧もしていない。男前というか、男みたいなのは認めるよ。
なんか知らんけど、女の子にモテるからね。一度くらい、男の子からモテてみたいもんだよ。
埼玉県川口市の住宅街、ちょっと縦に細長い3階建ての一軒家。ここが私の家。
テテテっと階段を降りていく。
あ、川口といっても鳩ケ谷のほうね。治安いいから!
「おはよ……」
ダイニングキッチンのドアを開けた。
「おはよう、碧唯。今日も一段とイケメンだな」
食卓でコーヒーを飲んでいたパパ・真治が微笑んだ。私と違って本物のイケメンだ。身長170㎝の私と並んでも頭半分くらい高いから、185㎝くらいあると思う。もう40代も後半なのに筋肉質のナイスバディ。
私が男なら「やらないか?」って誘っちゃうね。
パパは私が通っている大学を25年くらい前に卒業した大先輩。今はIT系企業を経営してるよ、えっへん!
まあ……社員3人しかいない零細企業だから、ウチはけっこうビンボーなのよ。お年玉少なかったしね……。グッすん。
「おはよー、パパ、真依は?」
「あそこに転がってるよ」
パパがコーヒーカップで示した先、ソファの上で妹の真依がスマホをいじっている。
私と違って可愛い系で、乳がデカい。高校1年で巨乳って、世の中不公平だよ!
まあ、近所の高校の微妙にダサい制服が似合っているので許そう。
「ねーちゃんはパパに似ていて、いいよねー」
「フフフ……うらやましいか!」
「うらやましかねーよ、真依だってママに似てるよ!」
「似てる? おっぱいのデカさだけじゃん」
「あによー、洗濯板の貧乳ねーちゃんよりマシよ!」
チーン。
トースターや電子レンジの音じゃない。
ダイニングの隅、ひっそりと佇む小さな仏壇の前で、ママ・唯依が静かに手を合わせ、おリンを鳴らした音だった。
パパがカップを置いてママに語りかける。
「そうか……。今日は、君の親友の命日だったね」
「ええ。西暦2000年の6月。もう四半世紀も昔。時の流れは早いものね」
ママの「親友」。仏壇に飾られている写真の少女。
パパがママと知り合う前に亡くなった人、パパも詳しいことは知らないらしい。でも、何かあるとママはお仏壇に手を合わせている。ママにとって本当に大事な人だったんだと思う。
私も手を合わせておこう。
南無阿弥陀仏……。
「さあ、朝ごはんにしましょ」
ママの目は二重でキリっとしている。年相応にフケてはいるけど、けっこうな美人だ。
それになんといっても、おっぱい! アンデスメロンを二つ並べたみたいな大きさなのよ。
なんで私に遺伝しなかったのだろうか? メンデルの法則間違っているじゃん! やっぱり世の中不公平だよ……。
「あ、ママ。私、今日は友達と学校帰りに新宿に寄って買い物してくるね。ご飯も食べて帰るから、夕飯いらないよ」
「ねーちゃん、新宿行くのー? ルミネでコスメ買ってきて」
「私、化粧品わからないから」
「メイクくらいしなよ、ねーちゃん。彼氏できないよー」
「妹よ……私はノーメイクでもモテモテなのだっ!」
「オタサーの姫なだけじゃん」
「え、彼氏がいるのか、碧唯?」
「いないよ、パパが一番好き」
「ねーちゃんのファザコン、キモいわー」
いつもの大工原家の朝だった。
「じゃあ、行ってくるね~」
「碧唯、気をつけてね、新宿は危ないから」
カバンを肩にかけ、玄関へ向かう私にママが声をかけた。
ママは今どき希少種の専業主婦。あまり出歩かない人だから、新宿を魔界都市か何かだと思っているのだろう。心配しなくても、エスパーもサイボーグも出ないって。まあ、ゴジラは鎮座しているけどね。
「うん、大丈夫だよ。いってきまーす」
◆◇◆
都の西北われらが母校。文系キャンパスの14号館。学生ラウンジの喧騒の中で、私は友人の「キバちゃん」を待っていた。
「ダイちゃーん! 」
ぽっちゃり……というかドスコイ寄りのメガネ女子が、学生ラウンジを慌てて駆けてきた。
わが友・オタク仲間のキバちゃんこと木場弘美だ。お互いに「キバちゃん」「ダイちゃん」と呼び合うマブ。いつでもクランバトルに参戦できちゃうね。愛称で呼ぶにしても名前じゃなく苗字なのが、オタクらしくてナイスでしょ?
「遅いよキバちゃん」
「申し訳ござらん。講義の終わりが遅れ申した」
あ、キバちゃんは帰国子女。時代劇とアニメで日本語を覚えたから口調が変なだけだから、念のため。変な子じゃないよ~。これでもシンガポールの実家は大金持ち。マジでセレブなお嬢様だったりするらしい。お嬢様感ゼロだけど。
「ちょっと遅くなったから、時短ルートでバス使おう! 早稲田駅前のバス停から西新宿行きの都営バスに乗れば靖国通りまで一本だよ」
「おっ、早77系統でござるか。よきですな」
打てば響くぞ、お主と拙者。同志の誓いを感じつつ、連れだってバス停に向かう。
背が高い私、ずんぐりしたキバちゃん。並んで歩くと女性漫才コンビにしか見えない。どっちがボケというか、Wボケ? どっちもアホっぽいし!
モビルスーツの後付け設定について話しているうちに、バスは明治通りを抜け靖国通りへと入っていく。車窓から見える景色が繁華街っぽくなってきた。進行方向には新宿駅、奥には高層ビル群が控えている。
私とキバちゃんは靖国通りのバス停で降りた。
バスを降り、賑わう歩道を二人で歩いていく。人が多い。というか外国人観光客が多い。まっすぐ歩くのも大変だ。
道路を渡れば、向こう側に広がるのは歌舞伎町。東洋一の繫華街だったこともある、欲望の街だ。
まあ、今の私たちには「あのゲームの舞台」というイメージだったりするけどね。たぶん外国人が多いのも、ゲームの影響が大きいと思う。
その時だった。
「ワッチアウッ! 」
キバちゃんが叫んだ。
英語の「Watch out!」つまり、「危ない!」って気づくのに時間がかかった。
キバちゃんは日本語が苦手だから、こういう時困るよね……って、そんな呑気に考えている場合じゃなかった!
視線を向けた瞬間、私の目に飛び込んできたのは、凄まじいスピードで歩道を暴走する緑色の電動キックボード。固有名詞は自粛するけど、アレだ! スマホ片手に脇見運転!?
あっ、これ、ダメなパターンでしょ!
「なっ……!」
暴走キックボード(名称自粛)が、私の身体に猛烈な勢いで迫る。なんとか避けようと体を捻った。けっこう運動は得意なのよ。なんとか直撃は防げたかもしれない。
「やったか……!?」
グッッ!!!
電動キックボード(名称自粛)のハンドルにカバンのベルトが引っ掛かってしまった。そのまま後ろに引き倒されていく……。
(自分でフラグ立てたか……、ああ、受け身を習っておけばよかった)
後悔むなしく、私の身体はアスファルトに激突した。
ゴツン!
後頭部を強打した。
もう痛いのか痛くないのかわからない。星が飛び散るとか、そんなこともなく、視界が急速に狭まっていく。
(えっ、私、死ぬの? 死んじゃうの?)
痛みの感覚すら消えていく。
暗闇の向こうでキバちゃんの叫びが、遠く遠く聞こえるような、聞こえないような……。
「ダイちゃん! ダイちゃ~んっ!」
令和の新宿。私・大工原碧唯の意識はゆっくり消えていった。
初めて書いた連載です。
いろいろ至らない部分もありますが、暖かい目で見てくださると助かります。
筆者からの、お願い
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