4-1 借金取りの田中さんからの依頼。新店に移籍せよ!
2000年代前半、実際に仙台の人気店が新宿・歌舞伎町に出店してきました。
当時の歌舞伎町にはなかった過激なサービス。雰囲気やノリが違う店で、驚いた記憶があります。
10月に入った。夜の街で働き始めて3カ月。かなり仕事にも慣れました。時給も4000円。今月は60万円以上稼いだよ! がんばったよ、私。がんばったね!
でもね……がっつり借金の返済なのよ。
「……45万円の返済。がんばったね、佐藤さん」
中野のボロアパート。月に1回やってくる借金取りの田中さんだ。
「そうだ……佐藤さん、ちょっといいかい」
えっ、ヤバい話? 全裸土下座必要? とりあえず脱ぐか?
田中さんが書類を広げた。あやうく脱ぎかけた手を止めて、ちゃぶ台の書類を見る。お店のチラシ? パンフレットみたいだった。
「セクシークラブ……ZUNDA?」
「仙台の店が、新しく歌舞伎町に進出することになった。オープンは10月中旬。仙台から女の子も何人かは連れてくるんだが、東京の女の子の採用が遅れているらしい。あんたも仙台っ子だから、ちょうどいいと思ってね」
あ、そうか……私っていうか、葵は仙台出身だった。仙台のなまりなんて、おらっちゃわがんねえんだけど、大丈夫だべか……?
「ほえ~、移籍っすか?」
「ああ。もちろん、ただの移籍じゃない。経験者で即戦力だから時給は5000円。指名や延長のバックも色をつけさせる。今の店より稼げるはずだ」
「時給、ご、ごせんえん……!」
ごせんえん……5000円、5000円ですよ! 1時間で梅子1枚、あっ、この時代は名前が読めないオッちゃんだ。時給だけで1日3万円。チャンス到来! このビッグウェーブに乗るしかない。
「やるのだ! ボクは、ずんだ餅の気持ちになってがんばる、なのだ!」
「そうか……。まあ、やる気があるのはわかった。頼む。正式な店名は『SEXY CLUB ZUNDA』だ。詳しくは店長に連絡させる」
こうして私の新しい戦場が決まった。
田中さんが仙台に帰った翌日。『ZUNDA』の店長から電話があった。仁義の問題? よくわからないけど『ハッスルガール』と話がついたらしい。とりあえず『ZUNDA』の店長と会ってみよう。
歌舞伎町のセントラル通り、令和のゴジラ通りの中ほど。雑居ビルの4階が『ZUNDA』になるらしい。エレベーターを降りると、まだ内装工事中だった。広さとしては『ハッスルガール』より、ちょっと大きいくらいかな?
「あ、佐藤さん……佐藤葵さんですね。店長の一柳です。田中さんから聞きました。即戦力として期待していますよ!」
「アオイです。よろしくお願いします」
軽い面接? ボックスシートに座って店長と話した。
話している間も工事の音が途切れない。突貫工事でやってるみたい。間に合うの? 心配になってきた。
「じゃあ、システム的には今の店と変わらないんですね?」
「ほぼ一緒だと思う。基本はキャバクラ接客、ダウンタイム……あ、佐藤さんが今いる店だと『ハッスルタイム』かな、30分に1回。キスなし、下半身NG。ただ、ダウンタイムの雰囲気は違うかもしれないな」
「どう違うんですか?」
「女の子が積極的に男性に仕掛ける感じかな。あと、決まった形がないからキャストの個性が出るかな?」
「決まった形がないのは気になりますが、責めるのは得意です!」
「おお、それは頼もしい。さすが田中さんの紹介だ。じゃあ、20日オープンからで……名前はどうします?」
「じゃあ、カタカナの『アオイ」で、よろしくお願いします」
あとはもろもろ。細かい条件なんか話して、店を出た。新店移籍は決まったけれど『ハッスルガール』は休まない。稼がないと借金返済できないもん。
「聞いたわよ〜アオイちゃん。引き抜かれたんですってね~」
バックヤードでチェリーさんに声をかけられた。情報が早い。店長同士で話をつけたって聞いたけど……あっ、そういうことね、チェリーさん。近くにいたのね、本命さん。
「……なんか、すみません」
「いいのよ、気にしなくて。女の子なんて、みんな渡り鳥なんだから。いい条件があるなら遠慮しちゃだめよ」
「はい……。短い間ですか、お世話になりました」
「やだわ、気が早い。あと何日かは出るんでしょう? がんばってハッスルしなきゃ!」
「そうですね、ハッスル!ハッスル!」
チェリーさんが吹き出した。おっと、この時代にまだハッスルポーズはなかった。
ハードゲイな人も「フォー!」も、まだよね? あぶない、あぶない、気を付けよう〜。
筆者からの、お願い
みなさんのご意見、ご感想、いいね、評価、ブックマークなどが力になります。
続きを書くためにも、どうか評価をよろしくお願いします。




