26ー3 ダメ人間たちのゴールデンウイーク~後編~
「なんだ、アオイっちは『猪木』かぁ……札が『?』。こっちはアンコウ、エビ、サメなんだから、こっちに座ればいいじゃん」
「それはわかるんだけど、なんか、この台を打てと言われている気がするのよ」
「そんなもんすかねぇ〜。私はこっちを打つよ」
隣の台に沙希っぽが座った。
「沙希も、この台を打つんだ」
「一応、準新台だし、設定入っているっしょ。翔太は打たんの?」
「あっちのジャグのシマが4以上だから、1台くらいは6があると思う」
「じゃあ、ここは別れて打とっか」
「そうだね」
翔太くんは、別のシマに歩いて行った。
「翔太くんと別々でいいの?」
「パチスロの時くらい別々に打ちたいじゃん。それに、久しぶりに並んで打ちたかったからね……アオイっちと」
「本当かねぇ〜」
沙希っぽと並んで打ったのは……もう2年近くも前だ。いろいろ教えてもらったから、師匠みたいなものかな? 沙希っぽが師匠というのも、ムカつくけどね。
「これ、打ち方は?」
「通常時は順押し。中段にBARねらいで、小役回収」
「ほーい」
黙々とリールを回していく。3000円分回したところで、隣の沙希っぽが当たった。
「お~し、BIGじゃん」
「いいなぁ、沙希っぽ……」
「日頃の行ないが良いからね~」
いや、沙希っぽよりは私のほうが、素行は良いと思うぞ。
♪ファイ……ファイ!
熱い魂を震わせる曲が流れてきた。テンションが上がるよ。
「よっしゃー、420枚~!」
「連チャンするの?」
「BIGのあと50ゲームは高確状態で、ここでATに当選させるのよ」
「じゃあ、ボーナス引かないと始まらないのか……」
う〜ん。私の台は低設定だったのかな? なんか、当たる気配がしないや。
6枚目の1000円札が消えていった。なかなか来ないなぁ……。
「うん?」
「どうしたのよ、アオイっち?」
「急にリールの照明が暗くなった。フリーズ……!?」
リールが反応しない。液晶画面もブラックアウトした。
「あれ、あれれ……?」
「あっ、文字が流れてきた!」
液晶画面の黒い背景に白い文字がスクロールしてくる。
『道 この道を行けば どうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし……』
「こ、これは……っ!?」
「うわぁ、いきなりヤバいの引いてるじゃん、これだからアオイっちは……」
30秒くらいの超ロングフリーズだった。リールが動き出す。
リールをそろえたけど、BIGではなくてレギュラーボーナスだった。
「レギュラーだったよ……」
「いや、この場合はレギュラーのほうが熱いのよ。JACゲームのラスト3回で、押し順を正解するとATチャンス、2回正解すると確定。3回正解すると平均10連だったかな……?」
「なるほど……」
そのラスト3ゲームがやってきた。液晶にアノ方が現れる。「勝負だ!!」と言われた。よ〜し……もちろん、勝負するってばさ!
「こういう時はアレコレ考えるよりも、素直にいこう。左・中・右……っと」
「正解じゃん! やっぱり、アオイっちは強いわぁ……」
次は闘魂注入で押し順ナビが出た。これでAT突入は確定。3回目も押し順ナビが出た。液晶には「闘魂」の文字。やったね、AT突入だ!
◆◇◆
「アオイさん、沙希、そろそろ引き上げよう。夕方だよ」
「お腹でも空いちゃったか、翔太?」
「お腹も空くよ。お昼も食べずにさぁ……」
翔太くんが呼びに来た。言われてみれば私も、お腹が空いた。ずっと連チャンしていて、食事休憩するヒマもなかったのよ。
「キリのいいところで、上がろうよ、沙希っぽ」
「そうだね……ぼちぼちキリ上げるとするかね。よし、翔太、ドル箱を運んでちょ」
「仕方ないなぁ……」
「よっ、翔太、力持ち! たくまし~」
「まとわりつかない! こぼしちゃうでしょ!!」
沙希っぽと翔太くん。メダルが詰まったドル箱を、いちゃいちゃ戯れあいながら運んでいく。仲いいなぁ、この二人。こういう関係、ちょっと憧れる。
私もドル箱を運ぼう……って、5箱あるのよ。どうしようかと考えていたら、店員さんが運んでくれた。ありがとう、店員さん。
ガシャガシャガシャガシャ……。
店員さんが、メダルの計測器にドル箱を流していく。1万を超えた。店員さんからレシートをもらう。1万1122枚だ。やったね!
「アオイっち、こっち~」
階段を上った先、1階の景品カウンターに沙希っぽと翔太くんが並んでいた。
「万枚超えた?」
「うん、超えた」
「こっちは6300枚ってところだね」
沙希っぽと、レシートを見せあった。
「翔太くんは?」
「僕は4000枚ちょっとです」
「じゃあ、二人合わせて万枚超えだね」
「「……」」
沙希っぽと翔太くんは、顔を見合わせた。なによ、その間は。
「そうじゃん!」
「そうですね」
「二人で万枚、おめでとう」
カウンターでレシートを交換。謎の板が37枚。さすがに持ち切れないので、レジ袋に入れてもらう。余りメダルが22枚。ペットボトルのお茶3本をもらった。
「ほい、沙希っぽ、翔太くん」
二人に一本ずつ渡した。
「あざーす」
「すみません、いただきます」
「私たちの勝利! 新生DQNの大勝利だぁーっ!」
「「ゼ・ク・ウ! 是空だよ!!」」
外に出たら、日が暮れかけていた。
特殊景品の入ったポリ袋をぶらさげ、TUCの交換所へ。暗黙の了解、三点方式だね。18万5000円になった。6000円使ったから17万9000円の勝ちだね。沙希っぽと翔太くんも、二人合わせて17万円。たぶん15万円以上は勝っている。
「んじゃ、アオイっち、バ~イ!」
「失礼しま~す」
「二人とも、お疲れ」
並んで歩く二人を見送る。今日も、少し離れてから手をつないだ。なんだろうねぇ……。
さて、私も帰ろう。明日も仕事だ。今は仕事が私の恋人……かもね。
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